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TIME0:鳴海優人の事情
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笹川さんのことが気になって少し調べてみると、彼女は同級生で隣のクラス、俺の入ってるバスケ部のマネージャーと仲が良いということがわかった。そして……男子が苦手で普段は関わりを避けているらしい。話すのも必要最低限。それは小学生の時からずっとで、周りも先生も知っているそうだ。
それを知った俺は何故かショックを受けていた。……そうか。男子と話もしないのか。こないだ保健室で会ったよな、とかタオルどうもありがとうとか適当に声を掛けて、うまくいけば友達ぐらいにはなりたかったんだけど……マジか。男子苦手なのか。マジか。あー、どうりで俺を見て青ざめるわけだ。むしろ話しかけてくれたのって奇跡に近いんじゃね? たぶん、俺の怪我を気にして話しかけてくれたんだと思う。怖がってんのにタオル渡してくれるとか笹川さんって天使なのか? いや、女神? それに、ちょっとだけ見せてくれたあの笑顔。ぶっちゃけもっと見たかった。
うーん……どうすれば男子が苦手な笹川さんと仲良くなれるだろう。俺、ただでさえ初対面の人に怖がられるからなぁ。俺は机に頬杖をついて考える。
「にゃーお」
唸りながら悩んでいると、一匹のキジトラ猫が膝の上に乗ってきた。あの日、木の上から降りられなくなっていたあの猫だ。動物病院に行ったあと、猫は家で飼うことにしたのだ。名前は虎徹。やんちゃなオス猫だ。
「オイ虎徹。なんか良い方法ないか?」
話しかけるも、虎徹は無視して毛づくろいを始めた。……冷たいやつめ。まぁ、笹川さんと出会うきっかけになったコイツには感謝してるけど。痛い思いした甲斐があったわ、マジで。
いいアイデアが浮かばないまま時間だけが過ぎ、気付けば2年生に進級していた。あれから笹川さんとは関わる機会もなく、移動教室の廊下や全校集会の時にこっそりと彼女の姿を見つめる日々が続く。
笹川さんは本当に男子が苦手らしく、男子とすれ違う時は俯いて視線を合わせないようにしていた。不意打ちで話しかけられたりすると顔を真っ青にしてうろたえていて、見てるこっちが心配になるくらいだし。だけど女子の友達といる時は楽しそうで、明るい笑顔を見せている。…… 言っておくけどストーカーじゃない。ただ、どうやったら怖がらせないで話しかけられるか、タイミングを見計らってるだけだ。
そんな時、俺の様子を不審に思ったマネージャー……笹川さんの友人でもある中原皐月から呼び出しをくらった。
「ちょっと鳴海。アンタいっつも一花のこと見てるけど何なの? 面白半分で近付こうとしてるなら今すぐやめて。一花のこと傷付けたら許さないから!」
そう言って真正面から睨まれる。
「面白半分とか思ってねーよ! 俺はただ……その……」
「何よ」
更にキツく睨まれた俺は、仕方なく自分の気持ちを説明した。
「……笹川さんのことが気になってるっつーか」
「は?」
「ま、前に保健室で会って。男子苦手なのに優しくしてくれて。笹川さんのこともっと知りたくなったっつーか、まぁぶっちゃけ一目惚れ……的な」
「はぁ!?」
マネージャーは大声を上げた。
「一花が超絶可愛いのはわかるけど! アンタの言ってることはこれっぽっちも信じらんないわ! 顔を洗って出直して来なさい!!」
最初は疑われたが、「彼女を傷付けることはしない」「とりあえず仲良くしたい」「仲良くなれるよう協力してくれ」と何度も何度も訴えていくうちに信じてくれたのか、笹川さんの情報をちょこちょこくれるようになった。情報といっても、好きな食べ物とか犬か猫だったら猫派とか、そういう些細なものだけなんだけど。
それから約一年。ようやくマネージャーから笹川さんと話をしていいと許可が出た。しかも、笹川さんとの仲を取り持ってくれるという。一目惚れからずいぶん時間が経ったけど、やっと前に進める気がした。
笹川さんのことが気になって少し調べてみると、彼女は同級生で隣のクラス、俺の入ってるバスケ部のマネージャーと仲が良いということがわかった。そして……男子が苦手で普段は関わりを避けているらしい。話すのも必要最低限。それは小学生の時からずっとで、周りも先生も知っているそうだ。
それを知った俺は何故かショックを受けていた。……そうか。男子と話もしないのか。こないだ保健室で会ったよな、とかタオルどうもありがとうとか適当に声を掛けて、うまくいけば友達ぐらいにはなりたかったんだけど……マジか。男子苦手なのか。マジか。あー、どうりで俺を見て青ざめるわけだ。むしろ話しかけてくれたのって奇跡に近いんじゃね? たぶん、俺の怪我を気にして話しかけてくれたんだと思う。怖がってんのにタオル渡してくれるとか笹川さんって天使なのか? いや、女神? それに、ちょっとだけ見せてくれたあの笑顔。ぶっちゃけもっと見たかった。
うーん……どうすれば男子が苦手な笹川さんと仲良くなれるだろう。俺、ただでさえ初対面の人に怖がられるからなぁ。俺は机に頬杖をついて考える。
「にゃーお」
唸りながら悩んでいると、一匹のキジトラ猫が膝の上に乗ってきた。あの日、木の上から降りられなくなっていたあの猫だ。動物病院に行ったあと、猫は家で飼うことにしたのだ。名前は虎徹。やんちゃなオス猫だ。
「オイ虎徹。なんか良い方法ないか?」
話しかけるも、虎徹は無視して毛づくろいを始めた。……冷たいやつめ。まぁ、笹川さんと出会うきっかけになったコイツには感謝してるけど。痛い思いした甲斐があったわ、マジで。
いいアイデアが浮かばないまま時間だけが過ぎ、気付けば2年生に進級していた。あれから笹川さんとは関わる機会もなく、移動教室の廊下や全校集会の時にこっそりと彼女の姿を見つめる日々が続く。
笹川さんは本当に男子が苦手らしく、男子とすれ違う時は俯いて視線を合わせないようにしていた。不意打ちで話しかけられたりすると顔を真っ青にしてうろたえていて、見てるこっちが心配になるくらいだし。だけど女子の友達といる時は楽しそうで、明るい笑顔を見せている。…… 言っておくけどストーカーじゃない。ただ、どうやったら怖がらせないで話しかけられるか、タイミングを見計らってるだけだ。
そんな時、俺の様子を不審に思ったマネージャー……笹川さんの友人でもある中原皐月から呼び出しをくらった。
「ちょっと鳴海。アンタいっつも一花のこと見てるけど何なの? 面白半分で近付こうとしてるなら今すぐやめて。一花のこと傷付けたら許さないから!」
そう言って真正面から睨まれる。
「面白半分とか思ってねーよ! 俺はただ……その……」
「何よ」
更にキツく睨まれた俺は、仕方なく自分の気持ちを説明した。
「……笹川さんのことが気になってるっつーか」
「は?」
「ま、前に保健室で会って。男子苦手なのに優しくしてくれて。笹川さんのこともっと知りたくなったっつーか、まぁぶっちゃけ一目惚れ……的な」
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