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第一章
第4話
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「へぇ~!そんなにすごかったんだ。西園寺さんって人のお宅。」
今日千尋は、大学の友人達とカフェでお茶をしていた。
いつもの仲良しメンバー四人である。
大きく愛らしい目をぱちくりさせて千尋の話を身を乗り出しながら聞いてきたのは、仙道春華(せんどう・はるか)。小柄で色白の美人だ。
背中まで伸びた長い黒髪は、ふんわりとウェーブがかかっている。
本人曰くパーマではなく、天然らしい。
春華はこの容姿なので当然大学内でも男子から人気があるが、本人は彼氏を作る気がないとのこと。
とは言っても、いい人がいたら別、とのことらしい。
「で、とんでもない美人なんだって?そこのお嬢さま二人は。」
身体を揺すりながらにやにやといやらしい笑みを浮かべているのは、藤沢大輔(ふじさわ・だいすけ)。
少し長めの茶髪に片耳にはピアス。
見た目も発言もこのようにチャラいが、悪いやつではない。
「また始まったよ、大輔の病気が。」
呆れたように隣の大輔を見るこの人は、日下部湊(くさかべ・みなと)。
短髪の黒髪で、少しだけ目尻が下がった目には人の良さが現れている。
大輔とは対照的な、いわゆる硬派男子だ。
でも決して固い感じではなく、湊はほどよくふざけたり冗談を言ったりもする人だった。
そして、湊は千尋の恋人でもあった。
この三人と出会ったのは、大学一年の時の講義でだった。
たまたま同じ講義を選択しており、その時千尋の前に座っていたのが湊、左が春華、右が大輔だった。
三人が仲良くなるのに時間はかからなかった。
それからは一緒に勉強をしたり、プライベートでもこうして週に一回はカフェに来て談笑するくらい仲良しだった。
湊と付き合い始めたのは、ちょうど出会って半年ほど過ぎた時からだった。
告白してきたのは、湊からだった。
それまで千尋は恋愛というものに縁が全くなかった。
それに春華みたいに美人なわけでもない、ごく普通の平凡な顔だった。
四人で一緒に行動をすることになって、当然湊も春華の方に惹かれているものだと思っていたのだ。
「千尋。君のことが好きです。ぼ、僕と付き合ってください。」
告白してきた時、湊は顔を真っ赤にさせていた。
いつもはしっかりしている湊の声は、こちらまで緊張が伝わってくるほど震えていた。
そんな湊を見て、千尋は思わず「はい」と答えていた。
今となれば一生懸命に気持ちを伝えてくれたことが嬉しかったのだと思う。
実際、付き合い始めてからも湊は千尋のことを大切にしてくれている。
この人を選んで正解だったな、としみじみ思う。
「いいじゃんかよぉ、俺だって目の保養したいっての。」
大輔は唇を尖らせながら、拗ねた子供のように言う。
これは千尋の勘でしかないが、おそらく大輔は春華のことが好きだ。
こんな風に見栄を張らないで、ちゃんと春華に気持ちをぶつければいいのに、と思うけれど余計なお世話かなとも思い、現在絶賛あたたかく見守り中だ。
「それにしても、ちぃちゃんいいなぁ。そんなところで家庭教師ができるなんて、なかなかないよぉ。」
春華は千尋のことをちぃちゃん、と呼ぶ。
彼女しか呼ばないそのあだ名が、千尋はとても気に入っていた。
「今度、機会があったら三人にも紹介するね。」
千尋はこの前会った果穂と瑞穂の容姿を思い出しながら、目の前にあるアイスレモンティーを飲みほした。
今日千尋は、大学の友人達とカフェでお茶をしていた。
いつもの仲良しメンバー四人である。
大きく愛らしい目をぱちくりさせて千尋の話を身を乗り出しながら聞いてきたのは、仙道春華(せんどう・はるか)。小柄で色白の美人だ。
背中まで伸びた長い黒髪は、ふんわりとウェーブがかかっている。
本人曰くパーマではなく、天然らしい。
春華はこの容姿なので当然大学内でも男子から人気があるが、本人は彼氏を作る気がないとのこと。
とは言っても、いい人がいたら別、とのことらしい。
「で、とんでもない美人なんだって?そこのお嬢さま二人は。」
身体を揺すりながらにやにやといやらしい笑みを浮かべているのは、藤沢大輔(ふじさわ・だいすけ)。
少し長めの茶髪に片耳にはピアス。
見た目も発言もこのようにチャラいが、悪いやつではない。
「また始まったよ、大輔の病気が。」
呆れたように隣の大輔を見るこの人は、日下部湊(くさかべ・みなと)。
短髪の黒髪で、少しだけ目尻が下がった目には人の良さが現れている。
大輔とは対照的な、いわゆる硬派男子だ。
でも決して固い感じではなく、湊はほどよくふざけたり冗談を言ったりもする人だった。
そして、湊は千尋の恋人でもあった。
この三人と出会ったのは、大学一年の時の講義でだった。
たまたま同じ講義を選択しており、その時千尋の前に座っていたのが湊、左が春華、右が大輔だった。
三人が仲良くなるのに時間はかからなかった。
それからは一緒に勉強をしたり、プライベートでもこうして週に一回はカフェに来て談笑するくらい仲良しだった。
湊と付き合い始めたのは、ちょうど出会って半年ほど過ぎた時からだった。
告白してきたのは、湊からだった。
それまで千尋は恋愛というものに縁が全くなかった。
それに春華みたいに美人なわけでもない、ごく普通の平凡な顔だった。
四人で一緒に行動をすることになって、当然湊も春華の方に惹かれているものだと思っていたのだ。
「千尋。君のことが好きです。ぼ、僕と付き合ってください。」
告白してきた時、湊は顔を真っ赤にさせていた。
いつもはしっかりしている湊の声は、こちらまで緊張が伝わってくるほど震えていた。
そんな湊を見て、千尋は思わず「はい」と答えていた。
今となれば一生懸命に気持ちを伝えてくれたことが嬉しかったのだと思う。
実際、付き合い始めてからも湊は千尋のことを大切にしてくれている。
この人を選んで正解だったな、としみじみ思う。
「いいじゃんかよぉ、俺だって目の保養したいっての。」
大輔は唇を尖らせながら、拗ねた子供のように言う。
これは千尋の勘でしかないが、おそらく大輔は春華のことが好きだ。
こんな風に見栄を張らないで、ちゃんと春華に気持ちをぶつければいいのに、と思うけれど余計なお世話かなとも思い、現在絶賛あたたかく見守り中だ。
「それにしても、ちぃちゃんいいなぁ。そんなところで家庭教師ができるなんて、なかなかないよぉ。」
春華は千尋のことをちぃちゃん、と呼ぶ。
彼女しか呼ばないそのあだ名が、千尋はとても気に入っていた。
「今度、機会があったら三人にも紹介するね。」
千尋はこの前会った果穂と瑞穂の容姿を思い出しながら、目の前にあるアイスレモンティーを飲みほした。
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