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八章 衝撃の過去
子殺し
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紗英は首を捻って尋ねた。
「なんでそいなこと言うっちゃ」
くるりとした目で見ると、恵子は辺りを見回しながら、紗英に近付く。
家には紗英と恵子だけだというのに、その警戒様といったら。辺りにはよほど知られたくない話らしい。紗英も恵子に近づいて耳を貸すと、恵子は口元に手を当ててこっそりと言った。
「今だから言うけっども母ちゃんさ、実はおばばのこと信じてねがったのよ」
「力をってこと?」
恵子は元々この集落の人間ではなく、嫁いだ先が海神様の化身の棲みかだったというだけのこと。海神様の力を信じられなくても無理はない。紗英はそう思う。
事実、紗英も一ヶ月前までは、懐疑的だったのだから。しかし、恵子は、ますます眉を寄せて、紗英の耳元に聞かせた。
「んでねくて、人間性の話だっちゃ」
わずかに面食らう。静香は紗英にとって、とても優しい曾祖母の顔を見せていたのだから。
「どういうこと」
紗英が聞けば「あんたが腹ん中さいたときから、あんたのこと殺そうとしてただもん」恵子は衝撃的なことをさらりと言ってのける。
「ちょ、え、オババが、私を」
にわかには信じられずに、疑いの目を向けると、恵子は気分を害したようだった。声を張り上げて、捲し立てるように言う。
「んだって。あんたが腹ん中さ居たとき、階段から突き落とされたんだよ。しかも一回、二回の話でねえべさ。出血だってしたし、あんた死にかけたんだ。救急車で山ひとつ越えたとこさある市立病院さ運ばれたこともあんだから。……無事だったからよかったけども」
吐き出したいだけ吐き出したのだろう。恵子ははっとして、
「本当はあんたがオババの部屋さ行くたんびに気が気でなかったっちゃ」小さくそう言い、紗英の手をきゅっと握った。
先程まで水仕事をしていた恵子の、冷たい温もりが胸に刺さった気がした。
「なんでそいなこと言うっちゃ」
くるりとした目で見ると、恵子は辺りを見回しながら、紗英に近付く。
家には紗英と恵子だけだというのに、その警戒様といったら。辺りにはよほど知られたくない話らしい。紗英も恵子に近づいて耳を貸すと、恵子は口元に手を当ててこっそりと言った。
「今だから言うけっども母ちゃんさ、実はおばばのこと信じてねがったのよ」
「力をってこと?」
恵子は元々この集落の人間ではなく、嫁いだ先が海神様の化身の棲みかだったというだけのこと。海神様の力を信じられなくても無理はない。紗英はそう思う。
事実、紗英も一ヶ月前までは、懐疑的だったのだから。しかし、恵子は、ますます眉を寄せて、紗英の耳元に聞かせた。
「んでねくて、人間性の話だっちゃ」
わずかに面食らう。静香は紗英にとって、とても優しい曾祖母の顔を見せていたのだから。
「どういうこと」
紗英が聞けば「あんたが腹ん中さいたときから、あんたのこと殺そうとしてただもん」恵子は衝撃的なことをさらりと言ってのける。
「ちょ、え、オババが、私を」
にわかには信じられずに、疑いの目を向けると、恵子は気分を害したようだった。声を張り上げて、捲し立てるように言う。
「んだって。あんたが腹ん中さ居たとき、階段から突き落とされたんだよ。しかも一回、二回の話でねえべさ。出血だってしたし、あんた死にかけたんだ。救急車で山ひとつ越えたとこさある市立病院さ運ばれたこともあんだから。……無事だったからよかったけども」
吐き出したいだけ吐き出したのだろう。恵子ははっとして、
「本当はあんたがオババの部屋さ行くたんびに気が気でなかったっちゃ」小さくそう言い、紗英の手をきゅっと握った。
先程まで水仕事をしていた恵子の、冷たい温もりが胸に刺さった気がした。
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