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第5章 要塞へと
ひばり
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雨は強風と共に廃病院の窓を叩き、跡を残して消えていく。
最上階には熱と湿気がこもり、いまだに息苦しいような熱気に包まれている。
4人は手術室の前にシートを広げ、中央には懐中電灯が立てられ、その周囲にはお菓子が撒かれて、それを四方から取り囲むように、思い思いの姿勢で座り込んでいる。
それはまるで、若者達が勢いで廃病院に集い、呪いの儀式でも始めたかのように。
亜紀は片足はあぐら、もう片足は投げ出すようにして座り込み、上半身はスポーツブラ一枚、下半身は擦り切れたダメージジーンズを身につけて、いかにもダルそうな表情をしている。
亜紀が隣に目を向けると、蛍は緊張した面持ちで固まっていた。
蛍はジーンズジャケットと白シャツを着て素足を晒し、股の間をシャツで押さえて、懐中電灯を直視しないように視線を泳がせながらじっと正座をしている。
そんな動かない蛍に向けて、亜紀が語りかける。
「蛍、ずっと正座でしんどくねぇの? 足、崩せよ」
「でっ……できるわけないよ! 下には何も履いてないんだよ」
「別にいいじゃん。誰も見てねえよ、気にすんな」
「ここは外だよ? 無茶言わないでよ。いくら亜紀の話でも、それはちょっと」
「命令だったらどうなんだよ」
「そ、それはぁ、そのぉ……」
蛍は顔を赤くして俯き、猫背になり小さくなってしまう。
蛍のさらに隣――亜紀の正面に座っている、黒いワンピースを身につけて正座を少しだけ崩し、表情ひとつ変えていない凜霞が2人の会話に割り込んでいく。
「亜紀さん。その件はともかく、昔話の方はどうなったのでしょうか」
「あ、そうそう。じゃ、始めるかね」
「よろしくお願いします」
「で、あたいと蛍が幼馴染みだっていう話はしたっけ? 幼稚園の頃からで、一緒に遊んだよな」
「そうだね。夜の公園に忍び込んだり、裏山のフェンスを乗り越えてみたら、崖から落ちそうになったりとか。よく覚えてる」
凜霞のさらに隣、短めのセーラー服を身につけ、両足をMの字に崩して座っていたみづきが、亜紀に流し目を送りながら話に割り込んでいく。
「それ、亜紀さんが引っ張り回してるだけですよね?」
「そんなことないよぉ! 僕、楽しかったから。本当だよ?」
「そーそー。おもろかっただろ? まぁ親にはぶん殴られたが、な!」
亜紀のよく通る笑い声で話が途切れ、そのあとは窓の外の雨音と、雨漏りのような雫の音だけが廊下に反響する。
そして表情は一転して浮かない表情に変わり、いつの間にか天井に映る懐中電灯の光の模様だけ見上げている。
「で、話は高校1年生のときに飛ぶんだが……な」
「いいの? その話。僕は……いいけど……よくはないけど」
「どっちなんだよ。ていうか、この状況以上に話せる場所って、他にあると思うか?」
「それはそうだね……わかった。ごめん、続けて」
亜紀と蛍は申し合わせたかのように互いの表情を覗き込み、無言で頷き、そして話を再開する。
「高校に入学した時に、1人の女に出会ったわけよ」
「その人が『亜紀さんよりも破天荒な人』ですか」
「そう、それ。鳴瀬川ひばり」
「なるせがわ……もしかして、この病院の――」
「院長の娘で、元気で頭がよくて、自分で始めたことはどんな無茶をしてもやり遂げる奴だった。あたいみたいないいかげんな女じゃなくて、な」
「春の文化祭のときに、ひばりと委員長が、クラスの出し物で4時間も揉めてたよねぇ。あと、亜紀のファンクラブを作ろうって言い出したのもひばりなんだよね」
「は⁉ あたいのファンクラブ? 何それ」
「あ? ……あ! あぁ、そのぉ。じ、実はね、亜紀の『お悩み相談室』に人が並びすぎて迷惑そうにしていたから。それを見たひばりがね、『ルールを決めましょう。あれでは亜紀さんにあまりに失礼よ。わかる?』って」
「はー。高校に入ってから人が減ったのって、それか。なんか納得だわ」
「そしてひばりがルール作って皆に徹底させた後で『ところで亜紀さんってどんな人なの? 不良? 一匹狼? 少し、興味があるの』って、対談を申し込みに行ったんだよ」
「で、あいつがやって来たわけか」
「うん。学校で一二を争う有名人が直接対決するっていう噂になって、影ではみんな注目していたよ。放課後の音楽室で、ひばりが亜紀に『貴方、不良なの?』って詰め寄って、亜紀が『は? んだこら舐めてんのか?』って言い返したときはそのまま殴り合いになるのかとヒヤヒヤしたよぉ」
「お前、やけに詳しいのな」
「実は、こっそりと部屋に隠れて聞いていたから……ぼ、僕だけじゃないよ! 僕も含めて、5人。部屋のあちこちに別れて、潜伏してた」
「はー、シケたことしやがって。まぁ……いいわ。で、何をとち狂ったのか、ひばりが『私達、お友達になりましょう? 貴方、面白そうだから』って強引に締めくくってきやがって、何だこいつヤベぇ、頭マジでイカレてるんかって思ったのを覚えてるわ」
「自分で相談室を取り仕切って、皆を遠ざけて、亜紀に一番近い場所をいきなり独占しちゃうんだもんなぁ。影ではみんな、すっごい怒ってたよ」
凜霞は対面の亜紀を怪訝な表情で見上げて、再び話に割り込んでいく。
「すみません。亜紀さんは何でそんな人を友人に選んだのでしょうか」
「それな。押し切られたのもあるが、芯が通っていたし裏表はない奴だったんよ。案外弱い、折れそうな所もあったけど、な」
「もしかして。凜霞ちゃん、みたいな?」
「全然似てはいないんだが……雰囲気が、ちょっとな」
「私、そんなに気が強くて押し通す様に見えているのですか」
「いや、それはどっちかというとみづきかなぁ。お前は、むしろ折れそうな所が気にかかる」
「ぇえ! 私、芯なんてないし、押し通してません……よ? ……押し通したいの、かな」
「私は折れそうなほど弱くは……今考えれば、思い詰めすぎていたのは確かですが……それでも」
みづきも凜霞も曖昧な表情を浮かべながら自問自答気味の返答をする。
それを見送りつつ、亜紀は蛍の方を向いて思い出話を再開する。
「その頃からかな、蛍があたいに近寄らなくなったのって。今、色々つながってきたぞ。そうか、そういうことだったのか」
「うん、そう……だよ。ひばりには勝てないし、何より僕は亜紀のファンだから、ルールは守らないと、って」
「お前はファンじゃなくて幼馴染みだろうが。てか勝つとか負けるとか関係なくね?」
「……わかってるよ。だけど、亜紀の隣にいるのは僕じゃなくて、綺麗で強いひばりのほうがずっと似合ってる。って、僕が勝手に思ったんだ。……実は、ひばりにもそれで怒られた事があるんだよ」
「は? あたいは知らねーぞ。何があったんだ?」
「『蛍。貴方、勝手に思い込んで勝手に身を引いて、それで満足なの? それでいいのなら私はもう知りません。私は亜紀と違って負け犬に手を伸ばしたりはしませんから』って言われた。……何も言い返せなかった。僕は、なにも」
「マジか」
「あ、でもそれで終わりじゃないんだよ。時々は会ってくれて、ご飯を食べに連れて行ってくれたり、亜紀の話を聞かせてもらったりはしていたから」
「じゃあ、あたい達の関係も聞かされていたんだな」
「うん、ひばりが教えてくれたよ。その時のひばりのうっとりとした笑顔、今でも覚えてる。でも、僕は何もできなくて。亜紀が幸せなら、それでいいかな、って」
「悪い。あたいは何も知らんかったわ」
「そんなことないよ。……いずれにしても、一番悪かったのは僕だったと思うんだ」
「どういうことだ?」
「僕はその話を聞きながら、僕だけが亜紀の全てを知っているって、むしろ喜んでさえいたんだよ。最低なんだよ、僕は。だから……僕にはもう、亜紀の幼馴染みに戻る権利なんて、ないんだ」
「そうだったのか……つまんねぇ話を散々聞かされて、本当に悪かったな」
「違うんだよ! 僕が! 僕が悪いんだよ。亜紀、本当にごめん……もしできるなら、僕のこと……嫌っていてもいいけれど……嫌いにならないで」
「馬鹿野郎。嫌いになんて、なんねぇよ。お前は幼馴染みだろうが。それは何があろうが、変わんねぇ」
「うん……ありがとう」
「蛍さんは何が嬉しかったんです?……凜霞ちゃん、わかる?」
突然訪れた沈黙の間。
みづきが凜霞に身を寄せて、耳元でささやく。
「もしみづき先輩がオトナになったなら、きっとわかります」
凜霞は少しだけ寂しげな表情でささやき返す。
「そう、なんですか。いいなぁ、凜霞ちゃんは大人だからわかっちゃうんだ」
「わからない方がいいと思います。だから、みづき先輩が羨ましいです」
「そう、なの? 大人になるのって悪いことなの? よく、わかんないなぁ」
「心配しないで下さい。先輩ならきっと良い大人になれます」
「んー……、凜霞ちゃんは、悪い大人なの?」
「申し訳ありませんが、少しだけ」
「そうかなぁ……全然そうは見えないよ」
みづきは凜霞の瞳を真剣に覗き込む。しかし、その蒼く透き通った瞳からは『悪い大人である』という根拠は何一つ見いだせない。
凜霞はみづきの頭を優しく撫でて穏やかな笑顔を見せ、そして沈黙を破るように亜紀へと問いかける。
「そこまで亜紀さんを好きなひばりさんが、なぜ」
「ひばりとは学校で一緒にいることが少なくなって、外で落ち合うことが増えていったんだよ。公園とか、山とか、海とか。人気の少ないところなら、どこでも、な」
「学校では別行動をしているから破局か倦怠期かみたいに言う人もいたけど、2人で欠席してることが多かったし色んな噂が飛び交ってた。……僕は知っていたけど」
「あいつは『学校の奴らに合わせて大人しくするのが面倒くさい』とか言ってたわ。授業をサボったり寝たりするようになって、悪いところが段々あたいに似てきて大丈夫なんかと思ってたけど、それでも成績はトップクラスなんだから訳わからんかったわ」
「ひばりには相当厳しい家庭教師の先生がついていて、夜中まで勉強させられてたみたいなんだよ。『もう嫌! 学校にも家にもいたくない!』って、よく僕のことを叩いたりつねったりしてた」
「は? あたいは聞いてねーぞ。てかお前の方がひばりに詳しいって、マジか」
「そうだね。その頃には、もしかしたら僕の方がひばりといる時間は長かったかもしれないね」
「ひばりはなんであたいに話さなかったんだ?」
「好きな人には自分のいいところしか見せたくない、って気持ち、わからない? その頃には両親が相当険悪になってたみたいで、僕は毎日のように呼び出されて話を聞いていたんだよ」
「お前はそれで良かったのか」
「僕のお母さんは家にいないことが多かったし、僕には友達もいないし。ひばりは美味しいご飯を奢ってくれるし、亜紀の話も聞かせてもらえたから。ちょっと嫌だったけど、そんなに嫌じゃなかったよ」
「何だよそれ。あたいだけ、置いてきぼりみてぇな」
「違うよ! ひばりは亜紀が大好きだったんだよ。学校のみんなも、ひばりを悪く言う人はいたけど亜紀が嫌いな人なんていなかった。それだけは、信じてほしいんだ」
「お前はどうなんだよ。あたいのことをどう思ってる?」
「ぼ、僕? 僕は、その……い、言えないよ」
「なんでだよ。嫌いだからか?」
「違う! それだけは、絶対に違う。嫌いになんてなれるわけがないよ。どんなことがあっても、僕は、僕は……」
蛍はそれ以上何も答えず、亜紀の視線を避けるように俯く。
その頬からはぽたり、ぽたりと雫が流れ落ちていた。
「な、なんで泣くんだよ? ほら、落ち着けって。訳わかんねーやつだな、ほんと。ほら、タオル使えよ」
「ごめん。ありが、とう」
そしてバツが悪そうな表情で頭をガリガリと引っ掻きながら、亜紀は凜霞へと視線を反らして話を続ける。
「それでな、あたいはいつものようにひばりと外で出会ったわけよ。浜辺の洞穴っぽくなっている場所でな。そうだ、お前たちが倒れていた場所のすぐ近くだ」
「倒れていた所……確か、近くには崖が見えていました」
「そう。遠目にはわからんが、あそこには窪みがあるんだ。中からは海しか見えねえし、人も近寄らねぇっていう絶好の隠れ家的スポットで、よく学校をサボってそこで落ち合ってた。で、ひばりが突然言い出したわけよ。『今から、どこか遠くに行かない? 日本でも、海外でも。亜紀となら、何処へでも。ね?』って。そんな金ねえよって言ったら、『そうだね……じゃ、さよなら。いつか、また会おうね』ってサラッと受け流されて、そしてあいつはあたいの元を去って行った」
「それがひばりさんに最後に会ったときの話ですか」
「そうだな。それから――」
「ひばりから僕に連絡が来たんだよ」
亜紀が驚いた表情で蛍を振り返り、食い入るように見る。
その強烈な視線を浴びて、蛍は両手で顔を隠す。
けれども、もう顔を伏せることも泣くこともなく、亜紀に向かって迷うように言葉を返していく。
「蛍! その先を知っているのか」
「うん。僕は、知ってる」
「…………教えてくれ」
「連絡が来たんだ。『今すぐに病院の中庭に来て』って。そして僕は、もらっていたタクシーチケットを使ってここに来たんだ。そうしたらなぜか報道の人や警察官が沢山いて、僕は警察官に腕を引っ張られて、中庭へと連れられて」
蛍は震えるような呼吸をして、顔を覆う手の奥から皆の様子を伺いながら、話を続ける。
「中庭に行くと、そこには警察官が何人もいて、拡声器で何かを叫んでた。突然、空から僕を呼ぶ声が聞こえて、僕は手をかざしながら上を見た。そうしたら、ひばりが立って、僕を見下ろしていたんだ……病院の屋上。フェンスの外側に、身を乗りだして」
「蛍、お前――」
亜紀の呆然としたつぶやきは聞き入れられず、蛍は両手で顔を覆いながら、独白を続ける。
「僕に何かを語りかけていた。『亜紀を、返してあげる』だったと思う。拡声器がうるさくて、良く聞き取れなかったけど。僕もひばりに何かを言ったはず……だけど、覚えていない。そしてひばりは初めて、僕に笑顔を見せてくれた。とても晴れやかな、誰にも見せたことのない、多分、そんな感じの、だった。そして――」
「おい、蛍。止めろ」
亜紀が身を寄せて、小刻みに震える蛍を抱き寄せる。
しかし蛍は顔を覆ったまま、うわごとのように話を続けている。
「消えたんだ……フェンスから手を離して。嫌な音が弾けて、振り向いたら地面に、広がった血が……よくわからない形になっていた。さっきまでの笑顔だったのに。そして……僕は誰かに急に腕をつかまれて、引っ張られて、連れ出されて。病院の外に追い出された。そうしたら、いっぱいの、フラッシュ。人が。光がまぶしくて……あ、あぅ……う……」
「蛍。ほ、た、る!」
「……あとは、良く覚えてない。気がついたら僕は部屋にいて、光を見るとおかしくなるようになった。沢山の人を見るだけで、言葉が上手く出てこなくなって。だから学校にも行けなくなったんだ」
蛍はぐったりと力が抜けて、亜紀の胸に顔を埋めるように話を終え、動かなくなる。
亜紀が蛍に声を掛けると、何も言わずにこくりと、頷いた。
それを確認して、亜紀は再び凜霞に顔を向けて話を続ける。
「多分同じ頃に、あたいの元へは『急に出かけることになったから、今すぐペットを預かってほしい』とメールがあって、病院で何が起きているのか全然知らないままに、自宅にそいつを連れて帰っていた。次の日、『院長が借金を苦に首を吊り、その長女が飛び降り』というニュースを見て全てを知った。そのとき連れ帰ったペットは今でもメシを食っていて、親父に太郎丸って名前を付けられて、デカくなってのんびり過ごしてる。もしかしたら、あいつがお前たちを探し出したのも偶然なんかじゃないのかもしんねぇな」
「私達を助けてくれた太郎丸さんが、ひばりさんの飼い犬だったのですね」
亜紀は凜霞を真剣な表情で見つめ、沈黙が闇を覆う。
「凜霞、自分のことで精一杯なのはわかる。だけど無理してでも立ち止まって、一旦周囲を見回してみろ。本当に大切なのは、来ねぇ親のことなのか? それとも隣で心配してくれている仲間なのか? 独りで突っ走ったその先は、そんなにいい場所ではないのかもしれんぞ?」
「……少し、取り乱していたのかもしれません。申し訳ありませんでした」
「私には、何かある?」
「お前はもっと、やりたいことをやれよ。ずっと周りを気遣って、いい子ぶってきたんだろ? それはもう十分だ。望み通り、この旅がお前が大人になる第一歩になれるといいな」
「ぼ、僕は、どう……?」
「蛍? お前は閉じこもってないで、あたいの所に遊びに来い。……さて、と。休憩もしたし、残りをちょいちょいと片付けるぜ。行くぞ!」
最上階には熱と湿気がこもり、いまだに息苦しいような熱気に包まれている。
4人は手術室の前にシートを広げ、中央には懐中電灯が立てられ、その周囲にはお菓子が撒かれて、それを四方から取り囲むように、思い思いの姿勢で座り込んでいる。
それはまるで、若者達が勢いで廃病院に集い、呪いの儀式でも始めたかのように。
亜紀は片足はあぐら、もう片足は投げ出すようにして座り込み、上半身はスポーツブラ一枚、下半身は擦り切れたダメージジーンズを身につけて、いかにもダルそうな表情をしている。
亜紀が隣に目を向けると、蛍は緊張した面持ちで固まっていた。
蛍はジーンズジャケットと白シャツを着て素足を晒し、股の間をシャツで押さえて、懐中電灯を直視しないように視線を泳がせながらじっと正座をしている。
そんな動かない蛍に向けて、亜紀が語りかける。
「蛍、ずっと正座でしんどくねぇの? 足、崩せよ」
「でっ……できるわけないよ! 下には何も履いてないんだよ」
「別にいいじゃん。誰も見てねえよ、気にすんな」
「ここは外だよ? 無茶言わないでよ。いくら亜紀の話でも、それはちょっと」
「命令だったらどうなんだよ」
「そ、それはぁ、そのぉ……」
蛍は顔を赤くして俯き、猫背になり小さくなってしまう。
蛍のさらに隣――亜紀の正面に座っている、黒いワンピースを身につけて正座を少しだけ崩し、表情ひとつ変えていない凜霞が2人の会話に割り込んでいく。
「亜紀さん。その件はともかく、昔話の方はどうなったのでしょうか」
「あ、そうそう。じゃ、始めるかね」
「よろしくお願いします」
「で、あたいと蛍が幼馴染みだっていう話はしたっけ? 幼稚園の頃からで、一緒に遊んだよな」
「そうだね。夜の公園に忍び込んだり、裏山のフェンスを乗り越えてみたら、崖から落ちそうになったりとか。よく覚えてる」
凜霞のさらに隣、短めのセーラー服を身につけ、両足をMの字に崩して座っていたみづきが、亜紀に流し目を送りながら話に割り込んでいく。
「それ、亜紀さんが引っ張り回してるだけですよね?」
「そんなことないよぉ! 僕、楽しかったから。本当だよ?」
「そーそー。おもろかっただろ? まぁ親にはぶん殴られたが、な!」
亜紀のよく通る笑い声で話が途切れ、そのあとは窓の外の雨音と、雨漏りのような雫の音だけが廊下に反響する。
そして表情は一転して浮かない表情に変わり、いつの間にか天井に映る懐中電灯の光の模様だけ見上げている。
「で、話は高校1年生のときに飛ぶんだが……な」
「いいの? その話。僕は……いいけど……よくはないけど」
「どっちなんだよ。ていうか、この状況以上に話せる場所って、他にあると思うか?」
「それはそうだね……わかった。ごめん、続けて」
亜紀と蛍は申し合わせたかのように互いの表情を覗き込み、無言で頷き、そして話を再開する。
「高校に入学した時に、1人の女に出会ったわけよ」
「その人が『亜紀さんよりも破天荒な人』ですか」
「そう、それ。鳴瀬川ひばり」
「なるせがわ……もしかして、この病院の――」
「院長の娘で、元気で頭がよくて、自分で始めたことはどんな無茶をしてもやり遂げる奴だった。あたいみたいないいかげんな女じゃなくて、な」
「春の文化祭のときに、ひばりと委員長が、クラスの出し物で4時間も揉めてたよねぇ。あと、亜紀のファンクラブを作ろうって言い出したのもひばりなんだよね」
「は⁉ あたいのファンクラブ? 何それ」
「あ? ……あ! あぁ、そのぉ。じ、実はね、亜紀の『お悩み相談室』に人が並びすぎて迷惑そうにしていたから。それを見たひばりがね、『ルールを決めましょう。あれでは亜紀さんにあまりに失礼よ。わかる?』って」
「はー。高校に入ってから人が減ったのって、それか。なんか納得だわ」
「そしてひばりがルール作って皆に徹底させた後で『ところで亜紀さんってどんな人なの? 不良? 一匹狼? 少し、興味があるの』って、対談を申し込みに行ったんだよ」
「で、あいつがやって来たわけか」
「うん。学校で一二を争う有名人が直接対決するっていう噂になって、影ではみんな注目していたよ。放課後の音楽室で、ひばりが亜紀に『貴方、不良なの?』って詰め寄って、亜紀が『は? んだこら舐めてんのか?』って言い返したときはそのまま殴り合いになるのかとヒヤヒヤしたよぉ」
「お前、やけに詳しいのな」
「実は、こっそりと部屋に隠れて聞いていたから……ぼ、僕だけじゃないよ! 僕も含めて、5人。部屋のあちこちに別れて、潜伏してた」
「はー、シケたことしやがって。まぁ……いいわ。で、何をとち狂ったのか、ひばりが『私達、お友達になりましょう? 貴方、面白そうだから』って強引に締めくくってきやがって、何だこいつヤベぇ、頭マジでイカレてるんかって思ったのを覚えてるわ」
「自分で相談室を取り仕切って、皆を遠ざけて、亜紀に一番近い場所をいきなり独占しちゃうんだもんなぁ。影ではみんな、すっごい怒ってたよ」
凜霞は対面の亜紀を怪訝な表情で見上げて、再び話に割り込んでいく。
「すみません。亜紀さんは何でそんな人を友人に選んだのでしょうか」
「それな。押し切られたのもあるが、芯が通っていたし裏表はない奴だったんよ。案外弱い、折れそうな所もあったけど、な」
「もしかして。凜霞ちゃん、みたいな?」
「全然似てはいないんだが……雰囲気が、ちょっとな」
「私、そんなに気が強くて押し通す様に見えているのですか」
「いや、それはどっちかというとみづきかなぁ。お前は、むしろ折れそうな所が気にかかる」
「ぇえ! 私、芯なんてないし、押し通してません……よ? ……押し通したいの、かな」
「私は折れそうなほど弱くは……今考えれば、思い詰めすぎていたのは確かですが……それでも」
みづきも凜霞も曖昧な表情を浮かべながら自問自答気味の返答をする。
それを見送りつつ、亜紀は蛍の方を向いて思い出話を再開する。
「その頃からかな、蛍があたいに近寄らなくなったのって。今、色々つながってきたぞ。そうか、そういうことだったのか」
「うん、そう……だよ。ひばりには勝てないし、何より僕は亜紀のファンだから、ルールは守らないと、って」
「お前はファンじゃなくて幼馴染みだろうが。てか勝つとか負けるとか関係なくね?」
「……わかってるよ。だけど、亜紀の隣にいるのは僕じゃなくて、綺麗で強いひばりのほうがずっと似合ってる。って、僕が勝手に思ったんだ。……実は、ひばりにもそれで怒られた事があるんだよ」
「は? あたいは知らねーぞ。何があったんだ?」
「『蛍。貴方、勝手に思い込んで勝手に身を引いて、それで満足なの? それでいいのなら私はもう知りません。私は亜紀と違って負け犬に手を伸ばしたりはしませんから』って言われた。……何も言い返せなかった。僕は、なにも」
「マジか」
「あ、でもそれで終わりじゃないんだよ。時々は会ってくれて、ご飯を食べに連れて行ってくれたり、亜紀の話を聞かせてもらったりはしていたから」
「じゃあ、あたい達の関係も聞かされていたんだな」
「うん、ひばりが教えてくれたよ。その時のひばりのうっとりとした笑顔、今でも覚えてる。でも、僕は何もできなくて。亜紀が幸せなら、それでいいかな、って」
「悪い。あたいは何も知らんかったわ」
「そんなことないよ。……いずれにしても、一番悪かったのは僕だったと思うんだ」
「どういうことだ?」
「僕はその話を聞きながら、僕だけが亜紀の全てを知っているって、むしろ喜んでさえいたんだよ。最低なんだよ、僕は。だから……僕にはもう、亜紀の幼馴染みに戻る権利なんて、ないんだ」
「そうだったのか……つまんねぇ話を散々聞かされて、本当に悪かったな」
「違うんだよ! 僕が! 僕が悪いんだよ。亜紀、本当にごめん……もしできるなら、僕のこと……嫌っていてもいいけれど……嫌いにならないで」
「馬鹿野郎。嫌いになんて、なんねぇよ。お前は幼馴染みだろうが。それは何があろうが、変わんねぇ」
「うん……ありがとう」
「蛍さんは何が嬉しかったんです?……凜霞ちゃん、わかる?」
突然訪れた沈黙の間。
みづきが凜霞に身を寄せて、耳元でささやく。
「もしみづき先輩がオトナになったなら、きっとわかります」
凜霞は少しだけ寂しげな表情でささやき返す。
「そう、なんですか。いいなぁ、凜霞ちゃんは大人だからわかっちゃうんだ」
「わからない方がいいと思います。だから、みづき先輩が羨ましいです」
「そう、なの? 大人になるのって悪いことなの? よく、わかんないなぁ」
「心配しないで下さい。先輩ならきっと良い大人になれます」
「んー……、凜霞ちゃんは、悪い大人なの?」
「申し訳ありませんが、少しだけ」
「そうかなぁ……全然そうは見えないよ」
みづきは凜霞の瞳を真剣に覗き込む。しかし、その蒼く透き通った瞳からは『悪い大人である』という根拠は何一つ見いだせない。
凜霞はみづきの頭を優しく撫でて穏やかな笑顔を見せ、そして沈黙を破るように亜紀へと問いかける。
「そこまで亜紀さんを好きなひばりさんが、なぜ」
「ひばりとは学校で一緒にいることが少なくなって、外で落ち合うことが増えていったんだよ。公園とか、山とか、海とか。人気の少ないところなら、どこでも、な」
「学校では別行動をしているから破局か倦怠期かみたいに言う人もいたけど、2人で欠席してることが多かったし色んな噂が飛び交ってた。……僕は知っていたけど」
「あいつは『学校の奴らに合わせて大人しくするのが面倒くさい』とか言ってたわ。授業をサボったり寝たりするようになって、悪いところが段々あたいに似てきて大丈夫なんかと思ってたけど、それでも成績はトップクラスなんだから訳わからんかったわ」
「ひばりには相当厳しい家庭教師の先生がついていて、夜中まで勉強させられてたみたいなんだよ。『もう嫌! 学校にも家にもいたくない!』って、よく僕のことを叩いたりつねったりしてた」
「は? あたいは聞いてねーぞ。てかお前の方がひばりに詳しいって、マジか」
「そうだね。その頃には、もしかしたら僕の方がひばりといる時間は長かったかもしれないね」
「ひばりはなんであたいに話さなかったんだ?」
「好きな人には自分のいいところしか見せたくない、って気持ち、わからない? その頃には両親が相当険悪になってたみたいで、僕は毎日のように呼び出されて話を聞いていたんだよ」
「お前はそれで良かったのか」
「僕のお母さんは家にいないことが多かったし、僕には友達もいないし。ひばりは美味しいご飯を奢ってくれるし、亜紀の話も聞かせてもらえたから。ちょっと嫌だったけど、そんなに嫌じゃなかったよ」
「何だよそれ。あたいだけ、置いてきぼりみてぇな」
「違うよ! ひばりは亜紀が大好きだったんだよ。学校のみんなも、ひばりを悪く言う人はいたけど亜紀が嫌いな人なんていなかった。それだけは、信じてほしいんだ」
「お前はどうなんだよ。あたいのことをどう思ってる?」
「ぼ、僕? 僕は、その……い、言えないよ」
「なんでだよ。嫌いだからか?」
「違う! それだけは、絶対に違う。嫌いになんてなれるわけがないよ。どんなことがあっても、僕は、僕は……」
蛍はそれ以上何も答えず、亜紀の視線を避けるように俯く。
その頬からはぽたり、ぽたりと雫が流れ落ちていた。
「な、なんで泣くんだよ? ほら、落ち着けって。訳わかんねーやつだな、ほんと。ほら、タオル使えよ」
「ごめん。ありが、とう」
そしてバツが悪そうな表情で頭をガリガリと引っ掻きながら、亜紀は凜霞へと視線を反らして話を続ける。
「それでな、あたいはいつものようにひばりと外で出会ったわけよ。浜辺の洞穴っぽくなっている場所でな。そうだ、お前たちが倒れていた場所のすぐ近くだ」
「倒れていた所……確か、近くには崖が見えていました」
「そう。遠目にはわからんが、あそこには窪みがあるんだ。中からは海しか見えねえし、人も近寄らねぇっていう絶好の隠れ家的スポットで、よく学校をサボってそこで落ち合ってた。で、ひばりが突然言い出したわけよ。『今から、どこか遠くに行かない? 日本でも、海外でも。亜紀となら、何処へでも。ね?』って。そんな金ねえよって言ったら、『そうだね……じゃ、さよなら。いつか、また会おうね』ってサラッと受け流されて、そしてあいつはあたいの元を去って行った」
「それがひばりさんに最後に会ったときの話ですか」
「そうだな。それから――」
「ひばりから僕に連絡が来たんだよ」
亜紀が驚いた表情で蛍を振り返り、食い入るように見る。
その強烈な視線を浴びて、蛍は両手で顔を隠す。
けれども、もう顔を伏せることも泣くこともなく、亜紀に向かって迷うように言葉を返していく。
「蛍! その先を知っているのか」
「うん。僕は、知ってる」
「…………教えてくれ」
「連絡が来たんだ。『今すぐに病院の中庭に来て』って。そして僕は、もらっていたタクシーチケットを使ってここに来たんだ。そうしたらなぜか報道の人や警察官が沢山いて、僕は警察官に腕を引っ張られて、中庭へと連れられて」
蛍は震えるような呼吸をして、顔を覆う手の奥から皆の様子を伺いながら、話を続ける。
「中庭に行くと、そこには警察官が何人もいて、拡声器で何かを叫んでた。突然、空から僕を呼ぶ声が聞こえて、僕は手をかざしながら上を見た。そうしたら、ひばりが立って、僕を見下ろしていたんだ……病院の屋上。フェンスの外側に、身を乗りだして」
「蛍、お前――」
亜紀の呆然としたつぶやきは聞き入れられず、蛍は両手で顔を覆いながら、独白を続ける。
「僕に何かを語りかけていた。『亜紀を、返してあげる』だったと思う。拡声器がうるさくて、良く聞き取れなかったけど。僕もひばりに何かを言ったはず……だけど、覚えていない。そしてひばりは初めて、僕に笑顔を見せてくれた。とても晴れやかな、誰にも見せたことのない、多分、そんな感じの、だった。そして――」
「おい、蛍。止めろ」
亜紀が身を寄せて、小刻みに震える蛍を抱き寄せる。
しかし蛍は顔を覆ったまま、うわごとのように話を続けている。
「消えたんだ……フェンスから手を離して。嫌な音が弾けて、振り向いたら地面に、広がった血が……よくわからない形になっていた。さっきまでの笑顔だったのに。そして……僕は誰かに急に腕をつかまれて、引っ張られて、連れ出されて。病院の外に追い出された。そうしたら、いっぱいの、フラッシュ。人が。光がまぶしくて……あ、あぅ……う……」
「蛍。ほ、た、る!」
「……あとは、良く覚えてない。気がついたら僕は部屋にいて、光を見るとおかしくなるようになった。沢山の人を見るだけで、言葉が上手く出てこなくなって。だから学校にも行けなくなったんだ」
蛍はぐったりと力が抜けて、亜紀の胸に顔を埋めるように話を終え、動かなくなる。
亜紀が蛍に声を掛けると、何も言わずにこくりと、頷いた。
それを確認して、亜紀は再び凜霞に顔を向けて話を続ける。
「多分同じ頃に、あたいの元へは『急に出かけることになったから、今すぐペットを預かってほしい』とメールがあって、病院で何が起きているのか全然知らないままに、自宅にそいつを連れて帰っていた。次の日、『院長が借金を苦に首を吊り、その長女が飛び降り』というニュースを見て全てを知った。そのとき連れ帰ったペットは今でもメシを食っていて、親父に太郎丸って名前を付けられて、デカくなってのんびり過ごしてる。もしかしたら、あいつがお前たちを探し出したのも偶然なんかじゃないのかもしんねぇな」
「私達を助けてくれた太郎丸さんが、ひばりさんの飼い犬だったのですね」
亜紀は凜霞を真剣な表情で見つめ、沈黙が闇を覆う。
「凜霞、自分のことで精一杯なのはわかる。だけど無理してでも立ち止まって、一旦周囲を見回してみろ。本当に大切なのは、来ねぇ親のことなのか? それとも隣で心配してくれている仲間なのか? 独りで突っ走ったその先は、そんなにいい場所ではないのかもしれんぞ?」
「……少し、取り乱していたのかもしれません。申し訳ありませんでした」
「私には、何かある?」
「お前はもっと、やりたいことをやれよ。ずっと周りを気遣って、いい子ぶってきたんだろ? それはもう十分だ。望み通り、この旅がお前が大人になる第一歩になれるといいな」
「ぼ、僕は、どう……?」
「蛍? お前は閉じこもってないで、あたいの所に遊びに来い。……さて、と。休憩もしたし、残りをちょいちょいと片付けるぜ。行くぞ!」
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