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第2章 海辺へ
凜霞の朝
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次の日の朝。
空はまだ薄暗く、太陽は山の合間から顔をのぞかせて、街を青く照らし出している。
2人が泊まっている部屋の窓には遮光カーテンが下がっていて、そのカーテンの隙間からは陽光が差し込み、カーペットに1本の輝く線を造り出している。
その光が照らし出す先には、少女達が身を寄せ合うようにしてベッドに横たわっている。
純白の毛布にくるまれて、静かな寝息をたてながら。
ピピピピ、ピピピ
デスクに据え付けられているデジタル時計が、かん高い声を上げる。
それに反応して毛布がぽふり、と小さく跳ね上がり、中から細い手指がちらりと姿を現した。
その指が何かを求めてベッドの上をさまよい――やがて力尽きたかのようにぱたり、と伏せて動かなくなる。
ついに、その手の主である凜霞が、夢の世界から戻りきっていない表情で上半身を起こす。
凜霞が薄く目を開けると、乱れた前髪の隙間から透き通った蒼い瞳が現れる。
その蒼い瞳はゆらめくように周囲を見渡し、自己主張の激しい騒音の主を捜し求めている。
そして目線が横に、1点へと集まる。
白い腕を伸ばし、騒音の主に指先でそっと触れ、その弱点――わざと押しにくく設計された四角いスイッチ、をカチリとスライドさせる。
するとその主は声を封印されて押し黙るしか術がなく、この1部屋だけの小さな世界は再び静寂の世界へと還っていった。
凜霞はゆっくり深呼吸をして、眠たげな目を擦ろうと頭を下げる。
すると、着衣の乱れ――自らの胸元と下腹部が露わになっていることに気づき、緊張した面持ちで慌てて着衣を整える。
改めて周囲を確認する……が、ここはホテルの一室である。
ベッドをとり囲む薄いカーテンの向こうには知らない人達がいて、忙しそうに行ったり来たりしている、なんていうことはありえない。
すぐそばで毛布の中に埋もれている、夢の世界に堕ちたままの小さな女の子を除けば、誰も。
安堵の表情、深いため息。
そして小さな声を上げながら、猫のようにしなやかに、大きな伸びをした。
空はまだ薄暗く、太陽は山の合間から顔をのぞかせて、街を青く照らし出している。
2人が泊まっている部屋の窓には遮光カーテンが下がっていて、そのカーテンの隙間からは陽光が差し込み、カーペットに1本の輝く線を造り出している。
その光が照らし出す先には、少女達が身を寄せ合うようにしてベッドに横たわっている。
純白の毛布にくるまれて、静かな寝息をたてながら。
ピピピピ、ピピピ
デスクに据え付けられているデジタル時計が、かん高い声を上げる。
それに反応して毛布がぽふり、と小さく跳ね上がり、中から細い手指がちらりと姿を現した。
その指が何かを求めてベッドの上をさまよい――やがて力尽きたかのようにぱたり、と伏せて動かなくなる。
ついに、その手の主である凜霞が、夢の世界から戻りきっていない表情で上半身を起こす。
凜霞が薄く目を開けると、乱れた前髪の隙間から透き通った蒼い瞳が現れる。
その蒼い瞳はゆらめくように周囲を見渡し、自己主張の激しい騒音の主を捜し求めている。
そして目線が横に、1点へと集まる。
白い腕を伸ばし、騒音の主に指先でそっと触れ、その弱点――わざと押しにくく設計された四角いスイッチ、をカチリとスライドさせる。
するとその主は声を封印されて押し黙るしか術がなく、この1部屋だけの小さな世界は再び静寂の世界へと還っていった。
凜霞はゆっくり深呼吸をして、眠たげな目を擦ろうと頭を下げる。
すると、着衣の乱れ――自らの胸元と下腹部が露わになっていることに気づき、緊張した面持ちで慌てて着衣を整える。
改めて周囲を確認する……が、ここはホテルの一室である。
ベッドをとり囲む薄いカーテンの向こうには知らない人達がいて、忙しそうに行ったり来たりしている、なんていうことはありえない。
すぐそばで毛布の中に埋もれている、夢の世界に堕ちたままの小さな女の子を除けば、誰も。
安堵の表情、深いため息。
そして小さな声を上げながら、猫のようにしなやかに、大きな伸びをした。
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