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メリーの焦燥

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 京都に来て数年、メリーは日本での教育に情熱を向けていたが、実のところ、若干の焦燥感を感じていた。

 当時、女学校の生徒の他に、本体である英学校に通う男子生徒にも教育を行っていたが、女学生の勤勉さに比べると男子学生は幾分怠惰に感じていた。
教育を受ける機会の有り難みを感じているかどうかの差かと思っていたが、女性の立場の低いこの国で女性教師から教えられること自体が、彼らにとって屈辱的だと考えていることは、メリーにとって衝撃的な事実であった。
この国の文化、慣習のせいで、女性教師として十分な働きができないのではないか……。そんな思いも抱くようになった。

 また同時に、自身の知識レベルについても彼女を悩ませた。
母国で小学校の校長職に就いていたといえ、キリスト教に関しては熱心に信仰している、というレベルであったので、学問として聖書の探究をする男子生徒たちの知識量に圧倒されることがあった。

そんな中、国内外の知人や団体に向け、女学校の発展のための寄付を依頼する活動は、彼女にやりがいを感じさせた。
というのも、潤沢な資金があり、学生数も多い英学校に対して、女学校ははっきり言って資金力も人気もなかったのだ。
彼女の熱意ある書簡を受け取った方々から集まった寄付は、教師たちの給金や設備投資に使われ、後に『同志社女学校の母』とまで言われる貢献をするのだが__。

 来日して約十年程のこの期間は、情熱こそ持ち合わせていたのだが、メリーは歯車がうまく噛み合っていないような気持ちで過ごしたのだ。
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