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王都
暗闇
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食べ歩きを終えて宿に戻り、お風呂がない宿のため、お互い温かいお湯で濡らしたタオルで拭く程度で済ませた。
お風呂がある宿は運悪く改装中で臨時休業していて取れななかったという。
申し訳なさそうにいうユリウスにマリは首を振った。
「ユリウスが謝ることじゃないよ。旅をしてるんだからお風呂に入れないときだってあるよー」
できれば毎日入りたいがどうしても疲れている時や体調が悪い時などは入っていなかったりする。
「体を拭けるだけまだいいよー」
ニコリと笑ったマリはぶるりと少し震え布団に入った。冬ではないが季節の移り変わりで夜間は少し冷えてきた。
お湯で洗った体も服越しに冷えてきて体を振るわせる回数が増えてきた。
「きちんと体を冷やさないようにしろよ」
宿の主人に今夜は冷えるからと毛布を2枚部屋の入り口横のチェストの上に置いていってくれており、その一枚をマリの頭から被せた。
「うわっ!」
「少し被ってろ、着替える」
勢いよく被せられ驚いた声を上げたマリは毛布を顔を外そうと手をかけたが抑えられた。
衣擦れ音が聞こえ、心臓がドッドッドッと緩やかに加速していくのがマリ自身の耳にも聞こえ壁側に体を向けギュッと目を瞑る。
少ししてトントンと肩を叩かれゆっくり毛布をずらす。
振り向くと、暗殺者としての仕事着である仕立て屋で作った体のラインに沿った全身真っ黒で蔦の首元に蔦の刺繍が入った裾が長めの上着にマントを羽織り軽くフードを被り布で口元を覆っていた。
腰の後ろに垂直になるように短剣が収められておりあとは体のあちこちに短剣が隠されている。
どこに隠されているかはマリ自身も知らないし、彼自身教えることはない。
体が密着したとしても分かりづらくはされているらしい
「……仕事?」
「いや、情報整理」
王都へ行くまでは仕事を請け負う事はないと聞いていた。寝るのために着替えるために毛布を被せたと思っていた。だから暗殺者としての仕事着を着るとは思わなかった。
彼の返答に首を傾げつつ見上げるとちらりと外を見た。マリも自然と追うように視線を向けると窓から見える木の向こう側が何かが月明かりに反射して輝いていた。
仲間とお話かなー
マリの仕事内容は知っていてもユリウスの仕事内容は闇の人間らしく間諜や暗殺が得意としか詳しく知らない。
なので、深く聞くこともなく、あれだけ寝たが瞼が重くなってきてウトウトし始める。
「気をつけて…」
半分以上夢の中に入りかけているマリの声はほぼ消えそうになっていて、薄く笑ったユリウスはおやすみと呟き、マリの目に手を置き窓から入る月明かりを隠して完全に夢の世界へと向かわせた。
くたりと体から力が抜け眠ってしまったマリを見ながらフードを深く被り窓枠へ手をかけ宿の目の前の木に飛び乗り風の魔法で扉と鍵を閉めた。
ヒョイヒョイと危なげなく木と屋根の上を音もなく簡単に見えるほどに軽い動作で飛び乗り走る。
街を巡回している騎士に気が付かれることなく目的の場所へと向かった。
「さて、何をつかんだ」
そう呟いたとき、月明かりでユリウスの目は怪しく光、マリの前では見せることのない冷たい目をしながら夜の街の闇へと消えた。
お風呂がある宿は運悪く改装中で臨時休業していて取れななかったという。
申し訳なさそうにいうユリウスにマリは首を振った。
「ユリウスが謝ることじゃないよ。旅をしてるんだからお風呂に入れないときだってあるよー」
できれば毎日入りたいがどうしても疲れている時や体調が悪い時などは入っていなかったりする。
「体を拭けるだけまだいいよー」
ニコリと笑ったマリはぶるりと少し震え布団に入った。冬ではないが季節の移り変わりで夜間は少し冷えてきた。
お湯で洗った体も服越しに冷えてきて体を振るわせる回数が増えてきた。
「きちんと体を冷やさないようにしろよ」
宿の主人に今夜は冷えるからと毛布を2枚部屋の入り口横のチェストの上に置いていってくれており、その一枚をマリの頭から被せた。
「うわっ!」
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勢いよく被せられ驚いた声を上げたマリは毛布を顔を外そうと手をかけたが抑えられた。
衣擦れ音が聞こえ、心臓がドッドッドッと緩やかに加速していくのがマリ自身の耳にも聞こえ壁側に体を向けギュッと目を瞑る。
少ししてトントンと肩を叩かれゆっくり毛布をずらす。
振り向くと、暗殺者としての仕事着である仕立て屋で作った体のラインに沿った全身真っ黒で蔦の首元に蔦の刺繍が入った裾が長めの上着にマントを羽織り軽くフードを被り布で口元を覆っていた。
腰の後ろに垂直になるように短剣が収められておりあとは体のあちこちに短剣が隠されている。
どこに隠されているかはマリ自身も知らないし、彼自身教えることはない。
体が密着したとしても分かりづらくはされているらしい
「……仕事?」
「いや、情報整理」
王都へ行くまでは仕事を請け負う事はないと聞いていた。寝るのために着替えるために毛布を被せたと思っていた。だから暗殺者としての仕事着を着るとは思わなかった。
彼の返答に首を傾げつつ見上げるとちらりと外を見た。マリも自然と追うように視線を向けると窓から見える木の向こう側が何かが月明かりに反射して輝いていた。
仲間とお話かなー
マリの仕事内容は知っていてもユリウスの仕事内容は闇の人間らしく間諜や暗殺が得意としか詳しく知らない。
なので、深く聞くこともなく、あれだけ寝たが瞼が重くなってきてウトウトし始める。
「気をつけて…」
半分以上夢の中に入りかけているマリの声はほぼ消えそうになっていて、薄く笑ったユリウスはおやすみと呟き、マリの目に手を置き窓から入る月明かりを隠して完全に夢の世界へと向かわせた。
くたりと体から力が抜け眠ってしまったマリを見ながらフードを深く被り窓枠へ手をかけ宿の目の前の木に飛び乗り風の魔法で扉と鍵を閉めた。
ヒョイヒョイと危なげなく木と屋根の上を音もなく簡単に見えるほどに軽い動作で飛び乗り走る。
街を巡回している騎士に気が付かれることなく目的の場所へと向かった。
「さて、何をつかんだ」
そう呟いたとき、月明かりでユリウスの目は怪しく光、マリの前では見せることのない冷たい目をしながら夜の街の闇へと消えた。
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