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王都
眠り姫
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ゆさゆさと体が揺れる。丸い何かが力強くマリの体を押している。
「んんー、もうちょっと……」
イヤイヤと頭を振り体を揺らす丸い物を退けようと手で押すと突かれた。
「ホォ!」
丸い物体、ネェージュが起きなさいとマリの髪をくいくいと嘴で引っ張るが起きる気配がない。
仕方がないというように首を振るとトテトテとテントの中から出ていくと背を向けている黒い服を着たユリウスの方の飛び乗った。
「お前の主人は起きそうか?」
「ホホォー…」
起きませんと首を振りため息をついた。
「仕方がない強制的に移動するか」
座っていた丸太から立ち上がりマリのテントへ向かう前に自身のアイテムカバンから布を数枚取り出して地面にひくとやれやれとテントの中に入った。
「移動するぞ。昼間になるだろ」
ユリウスは体内時計はそろそろ二回目の鐘が鳴る時間帯で昼前には街に着いていたい。数日寝なくても仕事柄平気だが寝れる時は寝たいし、王都へ行く関係上仕事をとっていないのでユリウス自身ものんびりしたい。
ペチペチと頬を軽く叩いてみてもぐずるだけで起きる気配がない。
「はぉ…」
初めての野営でここまで熟睡できるのは感心するが警戒心というのは持ってほしいと思った。
「移動するからな。ほら首に掴まれ…」
マリの手を首に持っていくと反射的に一応ユリウスの声に反応してから応じてくれるが意識はない。
人は寝ている時でも無意識に返事をする場合もあるらしい。今まさにそれだ。
「よっと…」
「んん…」
体の揺れにマリが唸るが背に回した手でトントンと軽くあやすようにすると気持ちよさそうに寝息を立てた。
「あー…最初こんな予定じゃなかったのにな」
マリに全て知っていると伝えてからは警戒心もなく心を許している感じの雰囲気が出てきた。これまでもう一人だという心の中で張り詰めていたのか、一気に安心したのかは分からないが、人の気配に敏感のはずが全くもって機能していない。
とはいえ、マリの性質が変わるわけでもないのでお互いいい距離でいるのは変わりないはずだ。
今はただそれまでの反動ということにしようと、テントを出てひいてある布にマリを寝かせ、冷えないように予備のマントを包めるようにしてからテントの解体をし、火を消し結界石を回収した。
それからここに居たという痕跡を消すとタイミングを見計らうように巨大化したネェージュにマリを抱えて寝に乗る。
「すまないが、街の近くの人気のないところまで頼むな」
「ホォ」
ひと鳴きするとドテドテと助走をつけてから飛ぶ。見る見るうちに先程までいた場所遠くなるのをみながらマリを落とさないように再度抱え直した。
「この状態でうまく入れるといいが……」
あの場所にはもう一人域を潜めていた人物がいた。マリを調査し監視していたウィルズだ。
こっちは空を飛んでいるが、左に先回りして伝達と工作することは出来るだろう。
本人は嫌だろうがやってもらうしかないと思いながらため息を一つこぼした。
「んんー、もうちょっと……」
イヤイヤと頭を振り体を揺らす丸い物を退けようと手で押すと突かれた。
「ホォ!」
丸い物体、ネェージュが起きなさいとマリの髪をくいくいと嘴で引っ張るが起きる気配がない。
仕方がないというように首を振るとトテトテとテントの中から出ていくと背を向けている黒い服を着たユリウスの方の飛び乗った。
「お前の主人は起きそうか?」
「ホホォー…」
起きませんと首を振りため息をついた。
「仕方がない強制的に移動するか」
座っていた丸太から立ち上がりマリのテントへ向かう前に自身のアイテムカバンから布を数枚取り出して地面にひくとやれやれとテントの中に入った。
「移動するぞ。昼間になるだろ」
ユリウスは体内時計はそろそろ二回目の鐘が鳴る時間帯で昼前には街に着いていたい。数日寝なくても仕事柄平気だが寝れる時は寝たいし、王都へ行く関係上仕事をとっていないのでユリウス自身ものんびりしたい。
ペチペチと頬を軽く叩いてみてもぐずるだけで起きる気配がない。
「はぉ…」
初めての野営でここまで熟睡できるのは感心するが警戒心というのは持ってほしいと思った。
「移動するからな。ほら首に掴まれ…」
マリの手を首に持っていくと反射的に一応ユリウスの声に反応してから応じてくれるが意識はない。
人は寝ている時でも無意識に返事をする場合もあるらしい。今まさにそれだ。
「よっと…」
「んん…」
体の揺れにマリが唸るが背に回した手でトントンと軽くあやすようにすると気持ちよさそうに寝息を立てた。
「あー…最初こんな予定じゃなかったのにな」
マリに全て知っていると伝えてからは警戒心もなく心を許している感じの雰囲気が出てきた。これまでもう一人だという心の中で張り詰めていたのか、一気に安心したのかは分からないが、人の気配に敏感のはずが全くもって機能していない。
とはいえ、マリの性質が変わるわけでもないのでお互いいい距離でいるのは変わりないはずだ。
今はただそれまでの反動ということにしようと、テントを出てひいてある布にマリを寝かせ、冷えないように予備のマントを包めるようにしてからテントの解体をし、火を消し結界石を回収した。
それからここに居たという痕跡を消すとタイミングを見計らうように巨大化したネェージュにマリを抱えて寝に乗る。
「すまないが、街の近くの人気のないところまで頼むな」
「ホォ」
ひと鳴きするとドテドテと助走をつけてから飛ぶ。見る見るうちに先程までいた場所遠くなるのをみながらマリを落とさないように再度抱え直した。
「この状態でうまく入れるといいが……」
あの場所にはもう一人域を潜めていた人物がいた。マリを調査し監視していたウィルズだ。
こっちは空を飛んでいるが、左に先回りして伝達と工作することは出来るだろう。
本人は嫌だろうがやってもらうしかないと思いながらため息を一つこぼした。
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