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蠢く影

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寝食を忘れ趣味に没頭して顔見知りに心配をかけた日から数日が経っていた。

マリは商業地区の商業ギルドに姿があった。ホワーフォオウルを連れていればその人物が誰か一目瞭然でヒソヒソと話し声が聞こえた。

「ほら、あれが今話題森に住んでいたという冒険者の」

「本当にホワーフォオウルを連れているのか」

「冒険者やめて商人か店でもやるつもりか?」

「噂によれば自由奔放で商人向きではないぞ?」

好き勝手言われているが興味がないのでそのまま何も言わずに被っていたフードを払い、不動産受付に足を運ぶ。

「こんにちは、こちらは土地の売り買い、賃貸のご契約などを取り扱っておりますが如何なさいますか?」

「土地を買って家を移築、増築したいのですが」

お金もゴブリン討伐でかなり貯まり、そろそろ宿を出て家街に移して暮らそうと考えていた。

今日はそのための土地と移築、手狭ではないが部屋があることに越したことがないので2部屋ほど増やすつもりだ。

「かしこまりました。それでしたらまずは土地からお決め致しましょう。何かご希望はありますか」

「できれば冒険者ギルドから近い場所があればお願いしたいです」

マリの言葉に受付の女性は、ファイリングされた書類の中から3枚取り出した。

「こちらがご希望にそう形の土地になります」

一つは冒険者ギルドの裏手にある空き地だ、

二つ目は冒険者ギルドから少し南に歩いたところにあるマリが来る前に火事があった場所だ。

最後の一つはマリが止まっている月下の宿の斜め向かいの古い空き家がある場所だった。

「この土地って今空き家がある場所ですよね?」

書類を指差しながら聞くと受付の女性は頷き、少し困った顔をした。

「そうですね。土地自体は売りに出されているのですが元の持ち主が取り壊しするか否かのご返答がないまま、息子さんの家へと引っ越しされまして、それから連絡がつかず、老朽化も進み危険なため近く取り壊しがされることになりました」

月下の宿の近くの土地を売ってくれるというならありがたい。マリはあそこで食べられる食堂の料理がお気に入りだ。料理はするがあまり得意ではないためできれば利用しやすいというのは好都合だ。

「土地を買っても取り壊しされますか?」

「はい、されます。訳ありだったため少し他よりは値段が安くなります」

「じゃあ、ここで」

「畏まりました。ではこちらにサインをお願いします」

マリが3枚の書類を見ているうちに用意されていた紙がカウンターの上を滑らすように差し出された。

購入者のサインと土地を買う上での規則などびっしり書かれたものだ。

それをざっと読み名前を書く。

女性に渡すと権利書が渡された。

「こちらをなくされますと土地の持ち主という権利が失効となり差押となる場合がございますのでお気をつけください」

権利書を受け取るとアイテムカバンの中でアイテムスペースを展開するとその中に権利書を入れた。
これでなくす心配はないだろう。

「では、移築よご契約に移りましょう。ご自宅の家自体をこちらに移すということでお待ち構いないでしょうか?」

「はい」

「……北の森にあるご自宅でしょうか?」

「そうですー」

受付の女性はマリのことは知っていたのでどこにあるかは聞くのは無粋と判断して家があるであろう場所をいい間違いないか確認をした。

「マジックアイテムを使った移動となりますのでご了承ください。基盤工事を執り行うため一度、担当の者が家の様子を伺います。増築の際もその時お話を進める形となります」

「わかりました」

「増築の工事費用は完成後のお支払いになります。土地、移築の支払いはこの場で行います。土地45金貨 移築金貨12枚と銀貨36枚になります」

用意していたお金をアイテムカバンから取り出して
言われた分をカウンターの上に置くと金額分きちんとあるか確認すると女性は奥にいた男性に渡した。

「移築の際は立ち会いとして騎士団の方と商業ギルド職員が立ち合います。マリ様ご自身もお立ち会いをお願いいたします」

その後もいろいろお話を聞き、一大会を見にくる日を決めて、取り壊しが終わり次第行うということだった。



「ではリビングの手前側にもう一部屋をアーチ型の入り口で扉なし、窓の取り付けそこにカウンター。奥に棚を作る」

「大丈夫です」

「もう一つは二階の階段上がって直ぐのところにお部屋を一つ」

少し曲がり角がある階段を上がって左側に部屋はあるものの右側にはなくスペースはあるのでそこに出すことにした、

マリの家の間取りは少し変わって見えるのか興味津々で見ていた。階段は家の真ん中付近にある構造で普通玄関付近にあるらしい

あまり興味がないので右から左へと流していた。

ざっとした金額の見積もりも貰い、北の森という魔の森の場所なので帰る時にひっつき虫のようにくっつかれてうっとしいと思いながら帰ったのがいい思い出なのかもしれない。
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