上 下
20 / 57
蠢く影

村へ

しおりを挟む
南の門に大急ぎで向かうと既に騎士2人がいた。

「お待たせしました。キースさん……と…」

ソニアの説明に加わっていた騎士の名前を知らないことに気が付き言葉に詰まらせたマリはタチクリと瞬いた。

「申し遅れました。ブルーノ・オルグレンと申します。こちらはキース・オルグレン,私とキースは兄と弟になります」

2人は目元が似ていて優しげな細アーモンドの透明感のあるブルーラベンダーの瞳。鼻と口が微妙に形が違う。髪の色もブルーノは金髪な襟足は長いが短く切られている。キースは銀髪で、マリのように左へ流すように結んでいた。

「どうそ、私たちのことはブルーノ、キースとお呼びください」

2人とも兄弟のため家名は同じな為、家名では呼びずらい。

「わかりました。よろしくお願いします」

2人にペコっと頭を下げると、キースは黄緑色の怪我や体力回復ポーションと青色をした魔力回復ポーションを6本ずつ渡して、アイテムカバンに入れるのを確認して背の高い彼は腰をかがめた。

「少々失礼致します」

マリの返事はないが断りを入れたキースは腰と膝裏に手を増しフワッと持ち上げるとマリを用意していた馬に乗せた。

「この子に跨って倉を掴んでいてください」

マリの手を誘導するように鞍に手を持っていくと掴んだのを確認しマリが掴んでいない鞍の部分を持つとぐっとマリの後ろに後ろに乗る。

「っ…びっくりしたー」

バクバクと慌ただしく動く心臓を落ち着かせながら周りを見るといつもみている風景とだいぶ高さが違い体がこわばった。

視界の淵でブルーノも馬に乗っていて静かにこちらに近づいてきた。

「すみません。かなりスピードが出ますが、キースがしっかり支えているので頑張ってください」

「怖かったら腕や鞍にすがって構いませんからね」

「あっはいー!」

「ホー!」

バサバサと聞こえる羽根の音が緊張と恐怖で遠のいていく。

強張った声を出したマリ。ぎゅっと鞍を掴んでいるとキースの片腕が腰に回ってきたのを感じた頃には視界が揺れぐんぐんと進んでいく。

「っう!」

ネェージュに乗って飛んでいる時もスピードがあったが揺れが少なく落とされるという恐怖があまりなかった。

そもそもマリはジェットコースターが苦手である。馬に乗っている感覚がそれに似ていて更に体が強張る。ネェージュに乗っている時も本来なら怖いはずだが女神が何かしたのか怖さがない。

あまりの速さにぎゅっと目を瞑り自然と手がキースの腕にすがるように掴んむとキースの腕に力が入れられた。

ネェージュもマリが怯えているのでいつもは高く飛んでいるが視界に入る高さで飛んでいた。

「マリさん大丈夫なので、目を開けましょう。そうすると、少しは怖くないですよ」

隣で並走するように走っていたブルーノがマリの耳に聞こえるように大きく話す。

「ううっ……」

キツく瞑った瞼の力を徐々に抜き目を開けるが、背中にゾワリとした言葉で言い表せないものが走ったが、堪え忍びぐっと流れる景色を見る。

「ゆっくり息を吐いて、体の力をきましょう」

頭の梅からブルーノの声とは違う低い落ち着いた声が降りてきた。

ふぅーと力を抜き指の力を和らげると血が堰き止められたのか血液が巡る感覚が伝わってきた。

「そう、上手です。このまま止まらずこの速さで、一気に村まで行きます」

そう告げられたマリはやっとの思いで頷き、馬のかけるスピードで砂埃が舞う。


ドッドっドッと道を走り抜けていく。

初めての乗馬はマリにとっては災厄とも言えるスピードでもうしばらく乗りたくないと思いながらも早く着かないかと前方に目を凝らした。、
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

憧れのテイマーになれたけど、何で神獣ばっかりなの⁉

陣ノ内猫子
ファンタジー
 神様の使い魔を助けて死んでしまった主人公。  お詫びにと、ずっとなりたいと思っていたテイマーとなって、憧れの異世界へ行けることに。  チートな力と装備を神様からもらって、助けた使い魔を連れ、いざ異世界へGO! ーーーーーーーーー  これはボクっ子女子が織りなす、チートな冒険物語です。  ご都合主義、あるかもしれません。  一話一話が短いです。  週一回を目標に投稿したと思います。  面白い、続きが読みたいと思って頂けたら幸いです。  誤字脱字があれば教えてください。すぐに修正します。  感想を頂けると嬉しいです。(返事ができないこともあるかもしれません)  

【完結】レスだった私が異世界で美形な夫達と甘い日々を過ごす事になるなんて思わなかった

むい
恋愛
魔法のある世界に転移した割に特に冒険も事件もバトルもない引きこもり型エロライフ。 ✳✳✳ 夫に愛されず女としても見てもらえず子供もなく、寂しい結婚生活を送っていた璃子は、ある日酷い目眩を覚え意識を失う。 目覚めた場所は小さな泉の辺り。 転移して若返った?!と思いきやなんだか微妙に違うような…。まるで自分に似せた入れ物に自分の意識が入ってるみたい。 何故ここにいるかも分からないまま初対面の男性に会って5分で求婚されあれよあれよと結婚する事に?! だいたいエロしかない異世界専業主婦ライフ。 本編完結済み。たまに番外編投稿します。

野生児少女の生存日記

花見酒
ファンタジー
とある村に住んでいた少女、とある鑑定式にて自身の適性が無属性だった事で危険な森に置き去りにされ、その森で生き延びた少女の物語

追放殿下は定住し、無自覚無双し始めました! 〜街暮らし冒険者の恩恵(ギフト)には、色んな使い方があってワクテカ〜

野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
 父王に裏切られて国を見限った元王太子の俺・アルドは、元の身分を隠したまま隣国へと脱出・移住を無事に果たした。  その後、約2か月弱。今の国でも暮らしにも慣れ、今は元気いっぱいなキツネ耳モフッ子少女・クイナと忙しくも楽しい日々を送っている。  しかし新生活には、小さなトラブルもつきもので。 「アアアッ、アルドォーッ! クイナたち、オーク肉さんにグルッて囲まれちゃってるのぉーっ!!」  ある日、昼寝から覚めてみれば、至近距離で俺達を取り囲んでいるオーク達の群れと目が合った。これには流石にビックリしたが、すっかり涙目パニックなクイナを見てすぐに正気を取り戻し、頭をポンと撫でて言う。  ――大丈夫。  俺ちょっと行ってくる、と。  基本的には、俺が昔王太子の地位が邪魔をして『やりたくてもできなかった事』にチャレンジしていくほのぼの暮らし。  2人一緒なら何でも楽しい!  ……んだけど、クイナがピンチになった時、俺の隠された恩恵(スキル)『破壊者』がついに火を噴くかもしれない!

のんきな兎は今日も外に出る【完】

おはぎ
BL
言われたことをすぐに忘れては、攫われそうになったり巻き込まれたりと危機感をどこかに落としてきた兎獣人のウルル。そんなウルルを放っておけない面倒見の良い虎獣人のロイ。今日もウルルはのんきに外に出ては、危ないことへ向かって行ってしまい、気が気でなくなったロイが無意識的に囲んでいくお話。 虎獣人ロイ×兎獣人ウルル

【番外編】異世界に来たからといってヒロインとは限らない

あろまりん
ファンタジー
※※※ 番外編の為、今後も不定期更新となります ※※※ こちらは『異世界に来たからといってヒロインとは限らない』本編に対するスピンオフストーリーになります。 本編では語られない話を置いてあります。 多少時系列が前後したりもしますが、ご容赦下さいませ。

人を愛した魔族達《完結》

トキ
BL
雛方暮羽(ひなかたくれは)は何時も広瀬愛輝(ひろせあいら)に連れ回され、彼を盲目的に慕う生徒会役員達から敵意を向けられていた。親友だと言っているにも関わらず、愛輝は身も心もボロボロになっている暮羽を助けようともしない。その日も何時ものように生徒会役員達から理不尽な理由で責め立てられて、暮羽は激怒した生徒会長に蹴り飛ばされ柵の外に放り出されてしまう。命を落としてしまうのかと思いきや、暮羽は愛輝と共に異世界へ迷い込んでしまった。異世界でも愛輝はみんなから愛され、暮羽は嫌われていた。牢屋に閉じ込められ、怪我も放置され、意識が朦朧とする中、黒猫が暮羽の前に現れた。この黒猫との出会いが、暮羽の人生を大きく変える事になる。 ※王道学園からの異世界転移もの。軽度ですが、いじめ、暴力、無理矢理等の描写があります。本番はありませんが、匂わせ程度の描写があるので念の為R18。複数CPあり。 この作品は自サイト、pixiv、『小説家になろう』のムーンライトノベルズ様にも掲載しています。

処理中です...