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転生 始まりの街

狩りよう

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残酷な表現があるのでご注意ください。





ご飯食べてゆっくりしてお茶してお風呂に入ってをしていたらもう外は真っ暗になっていたので、眠ることにした。

そして、お日様が登りきった頃、マリは起き出したというより飛び起きた。
色々あって疲れたのか、わからないが寝過ぎだ。

慌てて顔を洗ってキッチンに顔を出す。

「あ、そっか、異世界だった」

何も違和感もなく水道や家の中を歩いたけれど、ここには寝すぎだと小言を言う母親がいないことを思い出し、寂しさに顔を俯かせていると、髪を嘴でハムハムと噛んでいた。

「ネェージュ…ありがとう、貴女が唯一の家族。これからずっとよろしくねー」

最後におはようと声をかけ、椅子にネェージュを移動させ、アイテムスペースからたまご、ソーセージとパンを取り出して、簡単な朝兼お昼ご飯を作りさっさと食べて、寝る前にざっとアイテムスペースにどんな服装があるか確認した。

その結果、魔法威力向上と魔力回復の効果が全体が紫で青の蔓のような刺繍が縁取るようにされたお腹あたりからだんだん背中にかけて丈がお尻辺りまで隠れて可愛いものを選び、その中に着る物は鎖骨あたりでVにカットされた物とガウチョパンツような紫と白の二色の色が折り重なったパンツ。

そして、寒い時や暑い時は適温ですごせる温度調節ができる腕輪で、マジックアイテムらしく若干高価なものだそうだ。

マリは服装を決めている時にネェージュに認識阻害のスキルで効果を認識されないようにできることをすでに教わっている。ただ、形のないものには効果は発揮さらない。

あらかじめ用意していたものに着替えると、ネェージュが、魔法媒体を嘴で差し出してきて受け取り首にかけた。

「さて、短剣を選びますかねー」

短剣を全てテーブルの上に並べる。それぞれ刃渡りが違っていたり幅や厚みが違ったりといろんな種類があり、一度じっくりくる物を選ぶために一つ一つ試しに振ってみると幅が細めの刃渡りが、一番長いものに比べ少し短い物を選んだ。

革のベルトにホルダーがついたものに短剣を括り付けるがホルダーの幅が細く、もうちょっと幅が欲しいところだ。

鏡をみてくるりと回ると鏡越しにアメジストのような目がきらりと輝いて、服装も相まって異世界を実感させた。

「街に出て、買い物をするしかないねー」

不満そうにしながらも装備して外に出ると日差しを浴びて、深呼吸する。

「うん、いい天気……運動苦手なんだよなー」

体育の授業で、ボールを顔面受け止め、幅跳びも飛んだのかわからない程度のもので脚もそんなに速くはなかった。運動神経というものがないマリは不安しかなかった。スキルには見せられた時にはあった身体能力向上がなかった。

「とりあえず結界の外に出ないとだよね。ネェージュ」

「ホォー」

そうだねと言うようにするりとマリに羽が掠めた。スゥーと飛んでいってしまうネェージュを慌てて追いかける。

「あ、なんか早い気がする。しかも転ける心配ないかもー!」

学校の行事で登山をしたことがあったが見事に転けて転がるように木にぶつかったのはいい思い出だった。

今のマリは歩いてもこけた山を山道でもない足場の悪い山を駆け降りている。

次第にマリの顔に笑顔が溢れた。

「運動神経がいいって楽しい!!」

これなら魔法に頼らずに剣だけでもいけるかもしれないと思った。

「けど魔法重視にしよう」

いくら身体能力の向上といえど不安はあるし何よりマリの体でどこまで行けるかと言う疑問もある。

「ソルちゃんが、チートにしてるかもだけど。せっかく魔法あるしねー!」

女神というふうに呼ぶのをやめてーという言伝がお風呂から出たらテーブルに置かれていた。そのため最初のふた文字から取りソルちゃんとなった女神。

風を切るように走っているとやがて薄い膜が見えた。

ゆっくりとスピードを落とし止まると先を飛んでいたネェージュがマリが止まっていることに気づいて戻ってきた。

「こっから先、魔物いるんだよね?」

「ホォー」

不安そうなマリに頭魔を擦り付けてきたネェージュをひと撫でする。
結界で魔物や人間が認識できず入ることができていない。

「ねえ、だれかを連れてくる時に結界に入れる方法とかあるの?」

結界を張った人が設定すれば限定的に認識したり結界内に歯あることができるらしい。結界を張った後でも変更可能とのことだった。

「うーん何かあった時に困るしなぁー。そういう設定しとこうかなー」

なんとなく頭の中で張った結界にお願いをするように。方向がわからなくするためにクネクネとあちこち行く設定を追加した。

「今度からは初めっからそうしよう」

ネェージュの頭を撫で、ゆっくりと深呼吸をしてぐっと前を見て、右足を踏み出し結界の外に出る。
上から流れる水をくぐるような感覚。

「外に…出たけど。短剣の練習にいきなり魔物相手はきついかな」

「ホォー!ホォー!」

大丈夫、心配ないというようにネェージュは顔を笑顔にし飛んでいく。

「あ、そういえばネェージュってどんなことできるんだろう。スキルに鑑定あるしやってみよう…‥鑑定」

名前 ネェージュ 年齢6歳

種族 魔物ホワーフォオウル

体力  1500

魔力  2000

魔法属性 風魔法10 植物魔法10

スキル 認識阻害 巨大化 気配察知

その他 森の賢者 マリの従魔


「へぇ、巨大化って私乗せて飛べるのかな?」

マリの声に反応してか徐々に体が大きくなりグリフォンぐらいの大きさになった。

「大きい!家に戻った時に少し大きくなってもらって一緒に寝たい」

羽毛でもふもふふかふかの体は気持ちよさそうですぐにでもおふりたいが、元に体に戻ってしまった。

バッサバッサとネェージュはマリの周りを飛び嬉しそうにしていた。

マリも笑って腕を差し出すとその腕に留まったネェージュ。

そのすぐ後にぞわりと肌が寒い時のように震え上がった。体が咄嗟に腰に下げている短剣に伸び鞘から抜くと自然と構えることができた。

少し離れた先の木から青い毛に覆われた狼が現れグルルッとこちらを威嚇している。

恐怖で体が後ろに下がろうとするが、この世界でゆっくり生きるために冒険者になりたいそんな気持ちが湧き上がり、恐怖はあるが後退りする体制からきちんと構えることができた。

「ホォー!」

ネェージュが鳴きながらバサリと翼を羽ばたかせマリの頭上を飛んでいると地面から蔦が伸び青い狼の脚に絡みつき動きを止めた。

今だよというように目の前に留まり飛んでいるネェージュに瞬きをしたマリは大きく息を吸いグッと地面を踏み駆け出し青い狼に短剣を振り下ろし、首に赤い筋ができ痛みにうめくようにグルッと唸った。

「ごめん、でも、生きるためだから許してね」

そう、狼に届くかわからないが目をつぶって言葉をかけたマリはもう一度短剣を振り下ろし青い狼は弱々しい声と共に命を散らした。

初めて刃物で生き物を傷つけた。

初めて生き物を虫以外を殺した

横たわる青い狼を見ながら尻餅をついたマリは体育のグラウンド周回を終えた後のようにバクバクと心臓が忙しなく動き荒く息をしていた。

どくどくと流れる血。

残酷だけど、鉄の匂いが辺りに広がり、マリ自身も生き物を食べる。命を奪うとはそういうものだと実感した。

手を合わせ、その場に放置する訳にもいかずアイテムスペースに収納した。アイテムスペースの効果なのか吸収されるように自然と収納された。

「ネェージュありがとう。一人じゃきっと逃げて、食われてた」

まだ、不安げな顔をしているマリを励ますように頬を突き、柔らかい羽毛がそっとマリの頬を温めた。

「辛いけど慣れないとね。さて、もう1匹頑張るよー」

マリ特有の少しのんびりした柔らかい声が森に響いた。


2日に一回森に出て魔法や短剣で魔物を狩るという生活で、だいぶ短剣の扱いになれたと思ったら体が熱く気だるい感じで動けなくなり、次を覚ました時はあの、治療師の顔が目の絵にあったというのがこの一ヶ月の思い出だ。

深く息をはき、頭った体を石鹸で洗い。清潔な服に着替え、溶かした石鹸を湯船に入れ水魔法で水流を作り、来ていた服を投げ入れた。

「一ヶ月経つし、食料も残りわずか、街に行かないとね。魔物の解体は諦めてるし」

挑戦はしたが、うまくいかず、どうにもならなかった。

長いリボンで三つ編みにしてからお風呂を出て荷造りをゆっくりと始める。
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