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反撃の艦隊
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その地球のように美しい青い星には六つの巨大な柱と太陽系の土星のようなリングがあった。
今、その星の人々に語りかけている者がいた。
「魔法暦1943年に宇宙より飛来した魔獣、その脅威から遂に人類は脱し、反抗を開始しました。それから80年……いま我らは宇宙に進出するのです。魔法暦2023年、いまここより人類の新たな歴史が始まるのです。私、ティナ・ローハイルは艦隊の司令官としてその責務を果たします」
中世のような石造りの都市や現代の高層ビル群、さらには鉄で出来た都市や森の中の都市の上空に大きく表示される顔、それはそれは美しい整った顔をしていて緑髪で耳が細長い女性だった。
20代後半ほどのその女性、ティナは緑色の軍装に身を包みその胸には金色や銀色に輝く勲章をつけていた。
「そしてこの反撃の艦隊の司令官として、ここに宇宙暦1年を宣言します。我らは国、種族、地位の壁を超えました。人類は進歩したのです。魔獣の住処と思われる惑星圏外小惑星帯を調査、撃滅し、この宇宙暦の門出を共に祝いたいと思います。我らが戦士たちに、武運長久を願ってください!」
ティナ・ローハイルの声を聞き、顔を見て、その星は歓声に包まれていた。
そしてその星の上空には30の光が輝くのだった。
「ふぅ……面倒な宣言をさせられた」
人類反撃艦隊司令である、ティナ・ローハイル司令である。
歳は司令として若すぎる25歳であった。
種族はエルフだ。
その重い責任によってちょっと老け顔であるが美人であることには変わりない。
「司令、小惑星帯への軌道遷移完了まであと5分23秒です。推進魔法陣、各艦異常なし、デブリが我が艦にあたりましたが損傷なしです。この魔導シールドとやらは問題なく機能しています。全艦異常なしです」
小柄なおじさん……つまりドワーフの男性であるウナ大佐がそうティナに報告してくる。
「わかった。小惑星帯までは遠い、慣性航行になったら各員には休息を、あと念のため入れられる補助艦をこっちで収容しておくように。魔獣の出現には備えたい」
大体一週間以上はかかる航海だった。
艦隊と言ってもその数は30隻ほどである。
内訳は大雑把に表すと以下の通り。
旗艦でもある全長2km級空母一隻、
1km級戦艦5隻、
500メートル級巡洋艦10隻
300m級駆逐艦10隻
補助艦4隻
艦隊のデザインに統一感はない。
多種族社会な為にデザインには各種族の特徴が反映される為だった。
旗艦である2km級空母は魚を思わせるような空母だった。
中央の膨らみ部分にはハンガーが左右二つ格納されており艦載機の緊急着艦や非戦闘時は展開され艦載機や補助艦、駆逐艦クラスを格納修理が可能だった。
この30隻という艦隊というには少ない艦艇数は通常は惑星圏外の小惑星帯より飛来するが未だに神出鬼没、稀に転移魔法まで使って訪れる魔獣に対する防衛に戦力が割かれているからだった。
魔獣の住処ともいえる小惑星帯への威力
偵察艦隊としては非常に心許なかった。
航海も道半ば……母星と小惑星帯の中間ほどまで来た頃のことだった。
「艦隊上空50km地点に魔獣出現反応! 転移魔術光を確認。まもなくゲート開かれます!」
それは突然のことだった。
小惑星帯へと慣性航行を続ける反撃の艦隊、その道半ばで魔獣はやってきたのだ。
「各員戦闘体制をとれ! 対空戦闘用意! シールドを展開、砲に弾を込めろ! 魔術師を叩き起こせ!」
ティナ・ローハイル司令は歯噛みをした。
魔獣は神出鬼没だ。
だが慣性航法中の、言い換えれば高速で移動する艦隊の上空に絶えず位置を変えずに転移魔術が使用されるのは一体どういうわけなのか。
よくよく考えれば惑星に出現している転移魔術も高速で移動している惑星を捕捉し続けているため同じものなのだが、初めての惑星圏外圏への移動の最中に起こった襲撃ということでティナ司令は若干冷静さを欠いていた。
艦隊上空に紫色の五芒星が展開されその中心から魔獣が出現する。
「エンジェル級がきます!」
紫色の五芒星から降り立つのは1kmサイズの天使のようにもみえる何かだった。
五芒星が光輪のように見えるが頭手足はなく、胴体から生えた赤黒い6枚羽根が転移魔術を維持するための膨大な魔力によって青い鱗粉のようなものを発生させながら発光していた。
「攻撃を開始せよ! 艦載機発艦を急がせ」
エンジェル級と呼ばれた魔獣に対して艦隊から攻撃が行われる。
艦隊の主兵装は魔導レールガンである。
ローレンツ力とやらではなく魔導でレール状を加速する砲弾を放つ代物だ。
その威力は21世紀の戦車の主砲程度しかない。
宇宙空間で弾薬を運搬するのは困難であり、弾薬生み出すのは魔術でしかなく、弾体の強度も、加速力も大したものではないからだ。
戦車の主砲程度の威力であっても生物である魔獣に対しては有効だ。
「エンジェル級に損傷を与えています!下側右翼が折れました!」
それによって狭まる五芒星。
艦橋には弛緩した空気が一瞬漂うも、司令であるティナはその表情を緩めなかった。
「くるぞ!」
エンジェル級の頭上に輝く五芒星から多数の魔獣が飛来する。
魔獣の見た目は様々だが一様に生物を思わせる肉塊のようなグロテスクな表皮している。
数メートルほどのサイズのオタマジャクシのような特攻して自爆するものや数十メートルほどの非常に大きな口を持ち、多数の手を持って船を掴みその口で船に齧り付くもの、 300mほどのカンガルーのような袋を持って内部に小型の生命体、つまりミサイルを積んだもの、500mほどのワニのような姿で口からビームや砲弾を放つもの、そして転移魔術を維持展開する1kmサイズの巨大な手足をもたない6枚羽が生えた天使のような姿のもの……魔獣は多種多様な見た目、能力を持っていた。
今、その星の人々に語りかけている者がいた。
「魔法暦1943年に宇宙より飛来した魔獣、その脅威から遂に人類は脱し、反抗を開始しました。それから80年……いま我らは宇宙に進出するのです。魔法暦2023年、いまここより人類の新たな歴史が始まるのです。私、ティナ・ローハイルは艦隊の司令官としてその責務を果たします」
中世のような石造りの都市や現代の高層ビル群、さらには鉄で出来た都市や森の中の都市の上空に大きく表示される顔、それはそれは美しい整った顔をしていて緑髪で耳が細長い女性だった。
20代後半ほどのその女性、ティナは緑色の軍装に身を包みその胸には金色や銀色に輝く勲章をつけていた。
「そしてこの反撃の艦隊の司令官として、ここに宇宙暦1年を宣言します。我らは国、種族、地位の壁を超えました。人類は進歩したのです。魔獣の住処と思われる惑星圏外小惑星帯を調査、撃滅し、この宇宙暦の門出を共に祝いたいと思います。我らが戦士たちに、武運長久を願ってください!」
ティナ・ローハイルの声を聞き、顔を見て、その星は歓声に包まれていた。
そしてその星の上空には30の光が輝くのだった。
「ふぅ……面倒な宣言をさせられた」
人類反撃艦隊司令である、ティナ・ローハイル司令である。
歳は司令として若すぎる25歳であった。
種族はエルフだ。
その重い責任によってちょっと老け顔であるが美人であることには変わりない。
「司令、小惑星帯への軌道遷移完了まであと5分23秒です。推進魔法陣、各艦異常なし、デブリが我が艦にあたりましたが損傷なしです。この魔導シールドとやらは問題なく機能しています。全艦異常なしです」
小柄なおじさん……つまりドワーフの男性であるウナ大佐がそうティナに報告してくる。
「わかった。小惑星帯までは遠い、慣性航行になったら各員には休息を、あと念のため入れられる補助艦をこっちで収容しておくように。魔獣の出現には備えたい」
大体一週間以上はかかる航海だった。
艦隊と言ってもその数は30隻ほどである。
内訳は大雑把に表すと以下の通り。
旗艦でもある全長2km級空母一隻、
1km級戦艦5隻、
500メートル級巡洋艦10隻
300m級駆逐艦10隻
補助艦4隻
艦隊のデザインに統一感はない。
多種族社会な為にデザインには各種族の特徴が反映される為だった。
旗艦である2km級空母は魚を思わせるような空母だった。
中央の膨らみ部分にはハンガーが左右二つ格納されており艦載機の緊急着艦や非戦闘時は展開され艦載機や補助艦、駆逐艦クラスを格納修理が可能だった。
この30隻という艦隊というには少ない艦艇数は通常は惑星圏外の小惑星帯より飛来するが未だに神出鬼没、稀に転移魔法まで使って訪れる魔獣に対する防衛に戦力が割かれているからだった。
魔獣の住処ともいえる小惑星帯への威力
偵察艦隊としては非常に心許なかった。
航海も道半ば……母星と小惑星帯の中間ほどまで来た頃のことだった。
「艦隊上空50km地点に魔獣出現反応! 転移魔術光を確認。まもなくゲート開かれます!」
それは突然のことだった。
小惑星帯へと慣性航行を続ける反撃の艦隊、その道半ばで魔獣はやってきたのだ。
「各員戦闘体制をとれ! 対空戦闘用意! シールドを展開、砲に弾を込めろ! 魔術師を叩き起こせ!」
ティナ・ローハイル司令は歯噛みをした。
魔獣は神出鬼没だ。
だが慣性航法中の、言い換えれば高速で移動する艦隊の上空に絶えず位置を変えずに転移魔術が使用されるのは一体どういうわけなのか。
よくよく考えれば惑星に出現している転移魔術も高速で移動している惑星を捕捉し続けているため同じものなのだが、初めての惑星圏外圏への移動の最中に起こった襲撃ということでティナ司令は若干冷静さを欠いていた。
艦隊上空に紫色の五芒星が展開されその中心から魔獣が出現する。
「エンジェル級がきます!」
紫色の五芒星から降り立つのは1kmサイズの天使のようにもみえる何かだった。
五芒星が光輪のように見えるが頭手足はなく、胴体から生えた赤黒い6枚羽根が転移魔術を維持するための膨大な魔力によって青い鱗粉のようなものを発生させながら発光していた。
「攻撃を開始せよ! 艦載機発艦を急がせ」
エンジェル級と呼ばれた魔獣に対して艦隊から攻撃が行われる。
艦隊の主兵装は魔導レールガンである。
ローレンツ力とやらではなく魔導でレール状を加速する砲弾を放つ代物だ。
その威力は21世紀の戦車の主砲程度しかない。
宇宙空間で弾薬を運搬するのは困難であり、弾薬生み出すのは魔術でしかなく、弾体の強度も、加速力も大したものではないからだ。
戦車の主砲程度の威力であっても生物である魔獣に対しては有効だ。
「エンジェル級に損傷を与えています!下側右翼が折れました!」
それによって狭まる五芒星。
艦橋には弛緩した空気が一瞬漂うも、司令であるティナはその表情を緩めなかった。
「くるぞ!」
エンジェル級の頭上に輝く五芒星から多数の魔獣が飛来する。
魔獣の見た目は様々だが一様に生物を思わせる肉塊のようなグロテスクな表皮している。
数メートルほどのサイズのオタマジャクシのような特攻して自爆するものや数十メートルほどの非常に大きな口を持ち、多数の手を持って船を掴みその口で船に齧り付くもの、 300mほどのカンガルーのような袋を持って内部に小型の生命体、つまりミサイルを積んだもの、500mほどのワニのような姿で口からビームや砲弾を放つもの、そして転移魔術を維持展開する1kmサイズの巨大な手足をもたない6枚羽が生えた天使のような姿のもの……魔獣は多種多様な見た目、能力を持っていた。
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