4 / 8
密かに支配を進める
しおりを挟む
土手の向こうは住宅街だ。
二階建ての一軒家が多く見える。
「素晴らしい。指示通り、それ以上に動いているな」
まだ夜明け前だが、流石にそろそろ気づいたのかベランダの窓を開けてこちらの様子を伺っている20代ぐらいの男性がいた。
そこに静かにパラサイトモスキートが接近し、その針を刺す。
首や耳の後ろ、こめかみ、手首の動脈なんかを刺しまくれば殺す事もできなくはないだろう。
しかし、そんなことはせず、殺さないよう目立たないようにその針を刺して血中にパラサイトの卵を植え付けた訳だ
魔物の簡易説明によれば卵が孵化するのには1d7日の日数がかかるらしい。
最短1日、最長7日という事だ。
洗脳する場合にはさらに7d3の日数が必要なようだ。
しかも失敗する可能性もあると。
卵を植え付けられた男はそのまま気づかないで呑気にダンジョンにスマホのレンズを向けている。
他にも外に出てきて撮影している人間たちに続々と卵を植え付けていく。
しばらくしてサイレンが聞こえてきた。
「警察が来たか。流石に1人で入って来るようなそんなアホはいなかったな」
残念ながら侵入者はいなかった。
魔物が1匹しかいないダンジョンだったから侵入者はいなくて良かったかもしれないが。
土手道に続々とパトカーや消防車、加えて救急車もやってきた。
「すぐに入ってくると思ったがなにやらすでに相当警戒されている? 少し離れた場所に救急車も置かれていると言うのは負傷者が出る可能性がわかっているという事だろう……まだ数時間しか経っていないのにこの反応というのは、他のダンジョンマスターがやらかしてそうだな」
ダンジョンにいつ人間が入って来るか、俺がジリジリとした緊張感を感じる中、誰もダンジョン内に入ってくる事はなく徐々に夜が明けだした。
入り口の橋や塔に陽の光が当たるのがはっきりとわかる。
それに飛行機の音がかなりの頻度で聞こえるようになった。
自衛隊機や米軍機と思われる輸送機や戦闘機が飛んでいるのが見えた。
こちらに爆撃されるんじゃないかとヒヤッとした。
まぁよくよく考えると入り口は破壊不可能だしダンジョン内部への攻撃はエネルギーとして吸収するだけなので是非してもらいたいぐらいだと気づいて冷静になれた。
入口への攻撃は吸収できないから、出来ればダンジョン内部で爆弾でも起爆してもらえるとありがたい。
「本当に誰も入ってこないのは予想外だな。偵察を出しておいて良かった」
夜明けまでの時間で回復したMPは24程だった。
俺が生まれた時間がわからないせいでどの程度の回復スピードかはわからないが、僅かなMPだ。
その僅かな20MPを使って10匹ほどパラサイトモスキートを生み出し、ダンジョンとの連絡要員と偵察要員として外に送った。
そのおかげで外部の様子を把握できるようになった。
両方の土手道でダンジョンへの道を封鎖するように作業をしている警察官や消防隊員、少し離れた場所に待機している救急隊員にもパラサイトモスキートは卵を植え付けた。
彼らは運んできた土嚢を熱心に叩き始めていた。
「しかし、これだけでは世界の状況がわからんな」
俺は転生してすぐだというのにテレビやスマホが恋しくなった。
ネットで検索したくなったのだ。
検索すれば地球の反対側の様子だって、事実かどうかは置いといて、一応知る事が出来たのが恋しい。
そう考えて、すぐにパラサイトモスキートを周囲の家に送ればテレビを観ている人間は複数いるのでテレビ覗き見れるだろう事に気づいた。
連絡用モスキートに指示を外にいるパラサイトモスキートに伝えてもらう。
パラサイトモスキートは周囲の住宅に侵入した。
テレビで流れていたのはナイスボートな映像だった。
年越し特番で生放送していた番組、主役の司会者は昔有名アイドルだったおばさん達だ。
それが今は普段の姿は見る影もなく半狂乱に叫んでいた。
怯えてない時点で強いおばさん達だな。
『信じられないことに世界各地に謎の構造物が発見されたそうです! その中からは化け物が出てきているそうです! 近づかないでください! 不審な構造物を発見した場合通報してください! 繰り返します。近づかず、直ちに通報してください。実は今テレビ局にも怪物が……! カメラさん映して! はい。ご覧ください!現実です。これは現実です! 皆さんも可能な範囲で武装してください! いま駆けつけて来た警察とスタッフ達が戦ってます』
『どこも化け物ばっかりレベルアップして成長ポイントとかいうのを分配した私たちも戦うしかないわよ!』
緑色の肌、赤い目、鋭い牙、子供のような背丈、いわゆるゴブリンが椅子やデスクで作った即席のバリケードの向こうで武装したテレビスタッフや警官と戦闘を行なっていた。
放送を打ち切る余裕もなかったのか、はたまた近頃全く聞かなかったジャーナリスト魂というやつなのか命を賭けたグロテスクな戦闘がお茶の間に届けられていた。
ゴブリンが死ねば光になって消えるが人間の方は残ったままだ。
血まみれだな。
本当によく放送してるな。
放送を止める事もできなくなっているのかもしれないが。
ダンジョンマスターになった影響か死体よりも地震の時に被っていそうな災害用ヘルメットを被ってバールのようなものを持った元アイドルだったおばさん達がいつもの様子をかなぐり捨てて半狂乱にカメラに向かって叫んでいるのが印象的だった。
メンタル激つよおばさん達と俺は心の中で名付けた。
レベルアップとか気になることも言ってたな。
それ以外の大抵の放送局は通常の放送を止めて緊急のニュースを伝えていた。
暴徒だのモンスターだの凶暴化した動物だの言い方は番組によってちがったが各地で謎の構造物が出現していてそこから危険な生物が出て来ていて危ないから家の戸締りを確認してそのまま家にいるように繰り返し繰り返しアナウンサーが注意を呼びかけていた。
まぁさっきのテレビ局襲撃以上の悲惨なことは映像としては放送されてなかったが、混乱の最中という事がわかった。
大抵のダンジョンマスターはまだ様子見というか俺みたいにダンジョン内部を整えているだろうに、あのテレビ局襲撃したダンジョンマスターはよほどマスコミにでも恨みがあったのかね……。
「こりゃ警官達の警戒も納得だ。このダンジョンには当分入ってこなさそうだな」
1人ぐらいダンジョン内部に招き入れて吸収してみたいのだがな。
無駄なヘイトを稼ぐ必要もないか……。
「こんな目立つ入り口にせずに川の中に入り口を移動させて川の水をダンジョンに引き込んで吸収していればよかったかもしれない」
後悔先に立たずというやつだな。
一方土手道では作業が一通り完了したのか周りには何箇所かにしっかり叩かれ積み上げられた土嚢の壁が出来ていた。
その土嚢を盾にして消防隊員があくびを噛み殺しながらホースをこちらに向けている。
拳銃を持った警官もそこからリボルバー銃をこちらに向けて警戒していた。
人数こそそれぞれ10人くらいと少ないが物々しい警戒体制が敷かれていた。
その向こうには何人か一般人がスマホのレンズをこちらに向けていた。
その全員に卵は植え付け済みだ。
双方にパラサイトモスキートを送っているからこの状況は把握できた。
土手道の警察官が無線で話し合おうとしていたのでパラサイトモスキートが接近し、その会話を盗み聞く。
「こちら北側警戒班、聞こえるか?」
「こちら南側警戒班、聞こえます」
「異常はないか?」
「不自然すぎる橋と塔と塔のてっぺんに見える不思議な穴以外はこちら南側警戒班に異常なしです」
わざわざ向かいの警官に向けて手を振って答えている。
南側の人は陽気な警官だな。
「慣れないながらも防衛陣地設営完了しました。先輩のおかげですよ。土嚢の壁って叩いて作るんですね。知らなかったですよ~。あ、今のうちにSNSのチェックは俺に任せてください。先輩はダンジョンの方の監視、よろしくお願いしますよ」
「勿論だ。スマホを使ってるのをあまり野次馬達に見られんようにな」
「わかってます」
「年明け早々どうなってるんだかな~あ、土嚢に関してはお前はどうあれ消防隊員は流石に知ってただろ。知らんのはお前だけだ。それとダンジョンというのは……あの未確認構造物の事か」
「どう考えてもモンスターが出てくる不思議な入り口がある建物なんてダンジョン以外呼びかたあります?」
「そうなのか? 俺はあまり先入観を持つのは良くないと思うがな」
北側の方はおっさん警官だった。
ファンタジーに疎いのかな。
先輩と後輩らしいな。
「本当にモンスターが現れてるらしい現状、先入観も何もないと思いますけど……というか先輩、我々こうして出張ってますけど、法律的にどうなんですか、これ」
「各地で人が死んでるんだ。治安を守るのが我々警察官の仕事だ。人手が足りないのどうにかしてこうして陣地作って備えてんだからよ」
「答えになってないですよ。まぁそれに文句はないですけど……いやですよ。後々裁かれたり保険が降りなかったりするの」
世知辛いね。
「冗談だ安心しろ。災害や騒乱としての緊急出動あたりで手を打つだろうさ。市民の通報もあるし、先程防衛出動が自衛隊に発令されたらしい、俺達もそう悪いことにはならんだろう。首相の英断ってやつだな」
「それは良かった。まぁ幸い、ここは未だモンスターぽいのが出てくるわけじゃないですし、平和なもんです」
「あぁ、このまま何もないと良いんだがな。早く自衛隊でもSATでも良いから来てほしいもんだ」
「そうですね……というか少し中入って調べません? 危ないのはわかりますけど……マジでモンスターが出てるんだったら調べないと行けないんじゃないんですか」
「いや、さっき本部と話したが中に何があるかわからんからな。絶対に誰も入れるなって上から指示が出てるそうだ。なんでも未知のウィルスやら宇宙人とのファーストコンタクトになるとかそんな可能性を考えてるらしい」
「ネットの陰謀論じゃあるまいし……というかウィルスだったらやばいですね。どうせどっかの不良がもう中に入ってたり……」
「絶対に入るなよ。誰も通すなよ? あと何でも良いから何か気づいたら報告しろ」
「了解です。あー、そういえば一つ気になった事がありますね」
「なんだ?」
「この寒い真冬にさっきから蚊が飛んでるんですよね」
「あー、こちらでも飛んでいるな。ここは川だからな。冬でもいてもおかしくはないだろうが……まぁその調子で頼むぞ」
「了解です。何か他にも気になる事があったらすぐ報告します」
「あぁ。警戒しすぎて損はないだろうからな。どうなってんだ本当に」
人類賢すぎだろ……危ねぇ。
もう既に周りを飛んでる蚊に違和感をもたれている。
たしかに冬に蚊が飛んでたら違和感を感じるか……。
完全にバレる前にと、俺はパラサイトモスキートに周囲への隠密寄生産卵をさらに指示した。
あと察しが良さそうなあの後輩警官のSNSチェックを盗み見るように指示を出すか。
二階建ての一軒家が多く見える。
「素晴らしい。指示通り、それ以上に動いているな」
まだ夜明け前だが、流石にそろそろ気づいたのかベランダの窓を開けてこちらの様子を伺っている20代ぐらいの男性がいた。
そこに静かにパラサイトモスキートが接近し、その針を刺す。
首や耳の後ろ、こめかみ、手首の動脈なんかを刺しまくれば殺す事もできなくはないだろう。
しかし、そんなことはせず、殺さないよう目立たないようにその針を刺して血中にパラサイトの卵を植え付けた訳だ
魔物の簡易説明によれば卵が孵化するのには1d7日の日数がかかるらしい。
最短1日、最長7日という事だ。
洗脳する場合にはさらに7d3の日数が必要なようだ。
しかも失敗する可能性もあると。
卵を植え付けられた男はそのまま気づかないで呑気にダンジョンにスマホのレンズを向けている。
他にも外に出てきて撮影している人間たちに続々と卵を植え付けていく。
しばらくしてサイレンが聞こえてきた。
「警察が来たか。流石に1人で入って来るようなそんなアホはいなかったな」
残念ながら侵入者はいなかった。
魔物が1匹しかいないダンジョンだったから侵入者はいなくて良かったかもしれないが。
土手道に続々とパトカーや消防車、加えて救急車もやってきた。
「すぐに入ってくると思ったがなにやらすでに相当警戒されている? 少し離れた場所に救急車も置かれていると言うのは負傷者が出る可能性がわかっているという事だろう……まだ数時間しか経っていないのにこの反応というのは、他のダンジョンマスターがやらかしてそうだな」
ダンジョンにいつ人間が入って来るか、俺がジリジリとした緊張感を感じる中、誰もダンジョン内に入ってくる事はなく徐々に夜が明けだした。
入り口の橋や塔に陽の光が当たるのがはっきりとわかる。
それに飛行機の音がかなりの頻度で聞こえるようになった。
自衛隊機や米軍機と思われる輸送機や戦闘機が飛んでいるのが見えた。
こちらに爆撃されるんじゃないかとヒヤッとした。
まぁよくよく考えると入り口は破壊不可能だしダンジョン内部への攻撃はエネルギーとして吸収するだけなので是非してもらいたいぐらいだと気づいて冷静になれた。
入口への攻撃は吸収できないから、出来ればダンジョン内部で爆弾でも起爆してもらえるとありがたい。
「本当に誰も入ってこないのは予想外だな。偵察を出しておいて良かった」
夜明けまでの時間で回復したMPは24程だった。
俺が生まれた時間がわからないせいでどの程度の回復スピードかはわからないが、僅かなMPだ。
その僅かな20MPを使って10匹ほどパラサイトモスキートを生み出し、ダンジョンとの連絡要員と偵察要員として外に送った。
そのおかげで外部の様子を把握できるようになった。
両方の土手道でダンジョンへの道を封鎖するように作業をしている警察官や消防隊員、少し離れた場所に待機している救急隊員にもパラサイトモスキートは卵を植え付けた。
彼らは運んできた土嚢を熱心に叩き始めていた。
「しかし、これだけでは世界の状況がわからんな」
俺は転生してすぐだというのにテレビやスマホが恋しくなった。
ネットで検索したくなったのだ。
検索すれば地球の反対側の様子だって、事実かどうかは置いといて、一応知る事が出来たのが恋しい。
そう考えて、すぐにパラサイトモスキートを周囲の家に送ればテレビを観ている人間は複数いるのでテレビ覗き見れるだろう事に気づいた。
連絡用モスキートに指示を外にいるパラサイトモスキートに伝えてもらう。
パラサイトモスキートは周囲の住宅に侵入した。
テレビで流れていたのはナイスボートな映像だった。
年越し特番で生放送していた番組、主役の司会者は昔有名アイドルだったおばさん達だ。
それが今は普段の姿は見る影もなく半狂乱に叫んでいた。
怯えてない時点で強いおばさん達だな。
『信じられないことに世界各地に謎の構造物が発見されたそうです! その中からは化け物が出てきているそうです! 近づかないでください! 不審な構造物を発見した場合通報してください! 繰り返します。近づかず、直ちに通報してください。実は今テレビ局にも怪物が……! カメラさん映して! はい。ご覧ください!現実です。これは現実です! 皆さんも可能な範囲で武装してください! いま駆けつけて来た警察とスタッフ達が戦ってます』
『どこも化け物ばっかりレベルアップして成長ポイントとかいうのを分配した私たちも戦うしかないわよ!』
緑色の肌、赤い目、鋭い牙、子供のような背丈、いわゆるゴブリンが椅子やデスクで作った即席のバリケードの向こうで武装したテレビスタッフや警官と戦闘を行なっていた。
放送を打ち切る余裕もなかったのか、はたまた近頃全く聞かなかったジャーナリスト魂というやつなのか命を賭けたグロテスクな戦闘がお茶の間に届けられていた。
ゴブリンが死ねば光になって消えるが人間の方は残ったままだ。
血まみれだな。
本当によく放送してるな。
放送を止める事もできなくなっているのかもしれないが。
ダンジョンマスターになった影響か死体よりも地震の時に被っていそうな災害用ヘルメットを被ってバールのようなものを持った元アイドルだったおばさん達がいつもの様子をかなぐり捨てて半狂乱にカメラに向かって叫んでいるのが印象的だった。
メンタル激つよおばさん達と俺は心の中で名付けた。
レベルアップとか気になることも言ってたな。
それ以外の大抵の放送局は通常の放送を止めて緊急のニュースを伝えていた。
暴徒だのモンスターだの凶暴化した動物だの言い方は番組によってちがったが各地で謎の構造物が出現していてそこから危険な生物が出て来ていて危ないから家の戸締りを確認してそのまま家にいるように繰り返し繰り返しアナウンサーが注意を呼びかけていた。
まぁさっきのテレビ局襲撃以上の悲惨なことは映像としては放送されてなかったが、混乱の最中という事がわかった。
大抵のダンジョンマスターはまだ様子見というか俺みたいにダンジョン内部を整えているだろうに、あのテレビ局襲撃したダンジョンマスターはよほどマスコミにでも恨みがあったのかね……。
「こりゃ警官達の警戒も納得だ。このダンジョンには当分入ってこなさそうだな」
1人ぐらいダンジョン内部に招き入れて吸収してみたいのだがな。
無駄なヘイトを稼ぐ必要もないか……。
「こんな目立つ入り口にせずに川の中に入り口を移動させて川の水をダンジョンに引き込んで吸収していればよかったかもしれない」
後悔先に立たずというやつだな。
一方土手道では作業が一通り完了したのか周りには何箇所かにしっかり叩かれ積み上げられた土嚢の壁が出来ていた。
その土嚢を盾にして消防隊員があくびを噛み殺しながらホースをこちらに向けている。
拳銃を持った警官もそこからリボルバー銃をこちらに向けて警戒していた。
人数こそそれぞれ10人くらいと少ないが物々しい警戒体制が敷かれていた。
その向こうには何人か一般人がスマホのレンズをこちらに向けていた。
その全員に卵は植え付け済みだ。
双方にパラサイトモスキートを送っているからこの状況は把握できた。
土手道の警察官が無線で話し合おうとしていたのでパラサイトモスキートが接近し、その会話を盗み聞く。
「こちら北側警戒班、聞こえるか?」
「こちら南側警戒班、聞こえます」
「異常はないか?」
「不自然すぎる橋と塔と塔のてっぺんに見える不思議な穴以外はこちら南側警戒班に異常なしです」
わざわざ向かいの警官に向けて手を振って答えている。
南側の人は陽気な警官だな。
「慣れないながらも防衛陣地設営完了しました。先輩のおかげですよ。土嚢の壁って叩いて作るんですね。知らなかったですよ~。あ、今のうちにSNSのチェックは俺に任せてください。先輩はダンジョンの方の監視、よろしくお願いしますよ」
「勿論だ。スマホを使ってるのをあまり野次馬達に見られんようにな」
「わかってます」
「年明け早々どうなってるんだかな~あ、土嚢に関してはお前はどうあれ消防隊員は流石に知ってただろ。知らんのはお前だけだ。それとダンジョンというのは……あの未確認構造物の事か」
「どう考えてもモンスターが出てくる不思議な入り口がある建物なんてダンジョン以外呼びかたあります?」
「そうなのか? 俺はあまり先入観を持つのは良くないと思うがな」
北側の方はおっさん警官だった。
ファンタジーに疎いのかな。
先輩と後輩らしいな。
「本当にモンスターが現れてるらしい現状、先入観も何もないと思いますけど……というか先輩、我々こうして出張ってますけど、法律的にどうなんですか、これ」
「各地で人が死んでるんだ。治安を守るのが我々警察官の仕事だ。人手が足りないのどうにかしてこうして陣地作って備えてんだからよ」
「答えになってないですよ。まぁそれに文句はないですけど……いやですよ。後々裁かれたり保険が降りなかったりするの」
世知辛いね。
「冗談だ安心しろ。災害や騒乱としての緊急出動あたりで手を打つだろうさ。市民の通報もあるし、先程防衛出動が自衛隊に発令されたらしい、俺達もそう悪いことにはならんだろう。首相の英断ってやつだな」
「それは良かった。まぁ幸い、ここは未だモンスターぽいのが出てくるわけじゃないですし、平和なもんです」
「あぁ、このまま何もないと良いんだがな。早く自衛隊でもSATでも良いから来てほしいもんだ」
「そうですね……というか少し中入って調べません? 危ないのはわかりますけど……マジでモンスターが出てるんだったら調べないと行けないんじゃないんですか」
「いや、さっき本部と話したが中に何があるかわからんからな。絶対に誰も入れるなって上から指示が出てるそうだ。なんでも未知のウィルスやら宇宙人とのファーストコンタクトになるとかそんな可能性を考えてるらしい」
「ネットの陰謀論じゃあるまいし……というかウィルスだったらやばいですね。どうせどっかの不良がもう中に入ってたり……」
「絶対に入るなよ。誰も通すなよ? あと何でも良いから何か気づいたら報告しろ」
「了解です。あー、そういえば一つ気になった事がありますね」
「なんだ?」
「この寒い真冬にさっきから蚊が飛んでるんですよね」
「あー、こちらでも飛んでいるな。ここは川だからな。冬でもいてもおかしくはないだろうが……まぁその調子で頼むぞ」
「了解です。何か他にも気になる事があったらすぐ報告します」
「あぁ。警戒しすぎて損はないだろうからな。どうなってんだ本当に」
人類賢すぎだろ……危ねぇ。
もう既に周りを飛んでる蚊に違和感をもたれている。
たしかに冬に蚊が飛んでたら違和感を感じるか……。
完全にバレる前にと、俺はパラサイトモスキートに周囲への隠密寄生産卵をさらに指示した。
あと察しが良さそうなあの後輩警官のSNSチェックを盗み見るように指示を出すか。
0
お気に入りに追加
14
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました
東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。
攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる!
そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。
最後に言い残した事は
白羽鳥(扇つくも)
ファンタジー
どうして、こんな事になったんだろう……
断頭台の上で、元王妃リテラシーは呆然と己を罵倒する民衆を見下ろしていた。世界中から尊敬を集めていた宰相である父の暗殺。全てが狂い出したのはそこから……いや、もっと前だったかもしれない。
本日、リテラシーは公開処刑される。家族ぐるみで悪魔崇拝を行っていたという謂れなき罪のために王妃の位を剥奪され、邪悪な魔女として。
「最後に、言い残した事はあるか?」
かつての夫だった若き国王の言葉に、リテラシーは父から教えられていた『呪文』を発する。
※ファンタジーです。ややグロ表現注意。
※「小説家になろう」にも掲載。
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
裏アカ男子
やまいし
ファンタジー
ここは男女の貞操観念が逆転、そして人類すべてが美形になった世界。
転生した主人公にとってこの世界の女性は誰でも美少女、そして女性は元の世界の男性のように性欲が強いと気付く。
そこで彼は都合の良い(体の)関係を求めて裏アカを使用することにした。
―—これはそんな彼祐樹が好き勝手に生きる物語。
天才女薬学者 聖徳晴子の異世界転生
西洋司
ファンタジー
妙齢の薬学者 聖徳晴子(せいとく・はるこ)は、絶世の美貌の持ち主だ。
彼女は思考の並列化作業を得意とする、いわゆる天才。
精力的にフィールドワークをこなし、ついにエリクサーの開発間際というところで、放火で殺されてしまった。
晴子は、権力者達から、その地位を脅かす存在、「敵」と見做されてしまったのだ。
死後、晴子は天界で女神様からこう提案された。
「あなたは生前7人分の活躍をしましたので、異世界行きのチケットが7枚もあるんですよ。もしよろしければ、一度に使い切ってみては如何ですか?」
晴子はその提案を受け容れ、異世界へと旅立った。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる