サモナーって不遇職らしいね

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ギルドへ

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「ちょっとちょっと、そこのお兄さん、そのままここから出すわけには行かないよ」

「え、俺の事ですか?」

公園から出て、いざギルドへと思ったら革鎧を着て剣も腰に着けているいかにもなおじさん兵士さんに声をかけられた。

中世ファンタジー世界だが警官からの職務質問されてるみたいな状況である。

「いくら光属性とはいえ、魔物を3匹も連れられちゃあね。それ、あんたが召喚したんだろう? 街を歩くなら送還してもらわないといけないだろう」

俺が引き連れていた3匹のホーリーラビットを指差してそう兵士さんは言った。

超次元から来た異界の生物な訳だから流石に街中で連れ歩けないのか……見た目は白いウサギで癒し系なのだが。

そもそもこの子達はどうやって帰してあげるのか。

「そうなんですか……ところで送還ってどうやるんですかね」

「あんた……召喚属性2の本も読まずに召喚したのか。それにそもそも怪しい身なりだな……どうみてもこの公園に入れる人間じゃねぇな。何者だよ」

なんかめちゃくちゃ警戒されてしまったが、そうと聞かれれば答えない訳にはいかない。
さっきの親子には緊張してあまりロールプレイ出来なかったからな、ここは堂々とロールプレイを楽しもう。

「私は堕天使ネクアム……異世界の天界を追放され、この世界に勇者候補として舞い降りた者……。ここがクスデイという都市であるのは先程出会った親子から聞きました。それ以外に関する事は、異界より降り立ったばかりの故に無知なのです!」

手を広げてそう宣う。
気分は大勢の目の前で演説をする男……ちょっと気合を入れすぎたな。

「お、おう。やけに堂々とした男だな。さらに怪しい事この上ないぞ!」

むむ……。

「だがまぁ勇者候補というなら仕方ないのか? いやまて、一体このクスデイに何の用だ!」

剣に手をかけてそう訪ねてくる。

怖っ。

「あ、いや、えっと、冒険者ギルドで登録したいんだけなんです……どこにありますか」

「お、おう。素直だな。それなら教えてやろう」

俺は兵士さんのドン引きに傷つきながらもギルドの場所を教えてもらうのだった。

それと急いで魔法を覚えるとしよう。

「忠実なる僕達よ。我は満たされた『リコール』」

ホーリーラビット三匹がピクリと動いて力なく倒れたと思えば紫の霞となって消え去った。

ー『リコール』の魔法を習得しました。ー

兵士さんには冒険者ギルドの場所はすんなり教えてもらえたし、召喚したものを超次元へ送り返すリコールの魔法も覚える事が出来た。

「これでここを通っても良い。冒険者ギルドでしっかりと働けば、いずれは連れ歩くことも出来るようになるだろう。ちゃんと登録するんだぞ」

「はい。ありがとうございました」

結局、普通に会話して、普通に兵士さんと別れた。
俺のコミュ障には勝てなかったよ。

ちなみにこの公園はちゃんとした肩書きを持った人じゃないと入れない場所らしい。
俺みたいな低レベルで冒険者になってもいない者は入れない場所だったようだ。

「……いきなり降り立ったのがこの場所だったのだ。力も失ってる故、申し訳ない事をした」

兵士さんにも謝っておこう。

「わかってもらえたならいいんだよ。お兄さん、その見た目と言い、堕天使だっけ? なんだか変わってるね……まぁ、色々気をつけて一端の冒険者になってね」

そうなぜか肩を叩かれ応援してもらった。
キャラロールが足りなかったか……。
まぁ応援してもらえることは嬉しいからいいか。

RPGゲームな訳だし、このネクアムのキャラ立ちを目指して行きたいな。
冒険者ギルドでは頑張るぞ~。

さて、行くべきところである冒険者ギルドの場所は兵士さんに聞いたのでそこに向かう。
幸いにも武装したNPC達の人の流れを追っていけばすぐわかるところだった。

辿り着いたそこは大きな赤い煉瓦製の建物、冒険者ギルドだった。 
入り口近くには依頼が貼ってあると思われるボードが何個も立っていた。

「ようこそー。初めまして、依頼ですか登録ですか」

綺麗なお姉さんにそう声をかけられる。

「ここが……冒険者ギルドか」

堕天使ネクアムはようやく冒険者ギルドに辿り着いた……失意の中辿り着いたそこは新たな冒険の門出にふさわしい場所だった。

なんてな。

内部は入ってすぐのところに受付と思われる場所とさらに奥にはバーカウンターとまさに冒険者ギルドである。
目の前の受付には綺麗なお姉さんがいて、バーカウンターの方にはお酒飲んでる冒険者みたいなガチムチなお兄さんがいる。

「あの~非登録の方ですよね。冒険者ギルドには登録ですか、依頼ですか」

目の前のお姉さんにそう問われたので返事をする。

「登録をお願いする」

「そうですか。ではこちらに記入をお願いします。代筆も可能です。ここに書かれた内容は女神様に誓って冒険者ギルド内部のみの情報になるので安心してくださいね」 

ざっとみて、アンケート用紙である。
ただ渡されたのは羽ペンだった。
インクをつけすぎて書くのに苦労したが次第に慣れて書き終えた。

「勇者候補の方でしたか。あとは問題なさそうですね。ではギルドについて簡単に説明しますね」

内容はクエストをこなすと功績値が溜まっていって段々と便利な機能の解放や報酬がもらえたりするらしい。
あとクエストには期間限定のものといつでも受けられるものがあるらしい。
受けられる数に限りはないが失敗すると様々なペナルティが発生するようだ。

「クエスト斡旋機能や街中転移サービスなどは非常に便利なのでこれ目当てに功績値を稼ぐ方は多いですよ」

「ふむ、転移というのは魔法ですか?」

「はい。魔法です」

それならいずれ、自力で覚えられるのだろうか……。

「はい。登録が終わりました。これがあなたのカードです。それがあればこの都市でいろいろなサービスを受けることができますので無くさないようにしてください。再発行は一万ゼニーかかりますよ」

そう言われて渡されたのは鉄らしき物で出来たカードだった。
ネクアムと名前が書かれている。

「ありがとうございます。初心者でも大丈夫そうな常設の依頼を受けておきます。あとどこか宿屋を教えてもらいませんか?」

ギルドを出て入り口のボードからこの都市の外で薬草採取や魔物討伐のクエストをいくつか受ける。
受けた依頼はシステムメニューでいつでも確認できるようになる。

そして教えてもらった宿屋に向かう。

道中もNPC達の生活感を感じられて楽しいものだ。

歩いて着いたのはギルドほど大きくはない二階建ての宿屋。

「一晩200ゼニーだ。飯はどうする。もちろん別料金だぞ」

中に入って出迎えたのは、明日は別の宿屋にしようと思わせるような愛想の悪いおっさんだ。

「わかった。食事はいらない」

なるべくキリッと俺は答えた。
食事はバフ要素と味覚を楽しませる娯楽も兼ねているが今はお金もないし、いいだろう。

「あんたの部屋は二階だ」

おっさんにお金を支払い、二階に登る。

流石に馬小屋でもなく藁布団でもなく、ベッドがあるし、テーブルや椅子もある。
少し狭いかもしれないが悪くはない。

「最初の1日にしても、結構人と話したな。NPCといえど疲れたなぁ~」

RPGゲームといえばマップを隅々まで歩き回りたくさんの人と話すゲームだし沢山話すのは当然だ。

このままコミュ障故の今日の会話の一人反省会をしかねなかったが、なんとか堪えて、闇属性1の本を開く事にした。
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