29 / 37
第四章
天罰再び
しおりを挟む
後日、「思いついたことがある」ということで、優莉に呼ばれた。
ミューと玲子さんも呼ばれたようだ。誠志郎は京都にいるため来られないらしい。
「この前、咲翔と誠志郎と3人で美術館に行った時に、こんなことがあったんだ」
そう言って優莉は、先日の怪盗ゆりかもめの活躍についてミューと玲子さんに説明していた。
「そこでなんだけど、あの泥棒館長を、果物泥棒と同じ方法で懲らしめてやれないかなと思ったんだ。どうかな?」
「なるほど。いいんじゃないか? 俺は賛成」
「大切な思い出の絵を盗むなんて許せない。わたしも賛成」
「私も賛成。井上さんという方のおばあちゃんがどれほど心を痛めていたことか。想像するだけで虫唾が走るわ」
ということで、あの泥棒館長を懲らしめてやることとなった。
まずは例の美術館へと足を運んだ。前回と展示内容は変わっていたが、【愛する人】(注:実際は井上さんが描いた偽物)はこの美術館の所蔵品であり、美術館の目玉ということで、目立つところに飾ってあった。
館長はすぐに見つかった。相変わらず意地の汚さが滲み出ている。
早速作戦を実行に移した。
まずは玲子さんが、テレパシーで警告する。
「――数年前、この【愛する人】が盗まれた際、運転手として実行犯の送り迎えをしていた者がいましたが、それは館長、あなたですね?――」
館長は驚き、周囲を見回していた。
「――それから数年が経過したあと、何も知らない振りをして実行犯から絵を受け取り、この絵が碧風清流のものではないかという噂を自ら流し、周りから勧められるようなかたちで鑑定してもらった。そして、この絵が碧風清流のものであると正式に認められてたことで、待ってましたと言わんばかりにこの美術館の目玉として大々的に宣伝した。おかげでこの美術館はかなり繁盛しているようですね――」
館長は頭がおかしくなったと思ったのか、近くにあった椅子に座り込んだ。
「――座っても無駄だぞ。座ったところでお前の罪は消えない――」
そこで優莉が時間を止め、ミューが館長を天井近くまで持ち上げた。
「うわあ、ああ、あー、あー!」
そして、床すれすれにまで急降下させた。
「ああああーーー!」
「――自首しないのであれば、お前を地面に叩きつけて頭蓋骨を木端微塵《こっぱみじん》に砕いてやるぞ――」
「ああ、ああ、」館長は相当動揺しているようだった。
「――実行犯とも色々と話したいことがあるだろう。そんな義理はないが、少しの間待ってやる。早めに話をつけて、自首することだ。さもなければ……わかってるな?――」
「はい。わかったます、わかりまてし、わかっとろますれ……」
とうとう何を言っているのかわからなくなった。相当混乱しているようだ。
「よし、こんなもんでいいだろう」優莉が時間停止を解除した。
物静かな美術館の中で、その男だけが不自然に動揺し、混乱している。
おそらくこれで大丈夫だろう。あとは自首するのを待つだけだ。
俺たち4人は何食わぬ顔で美術館をあとにし、それぞれの帰路についた。
――樹海へ行くその日まで、残り一週間を切っていた。
ミューと玲子さんも呼ばれたようだ。誠志郎は京都にいるため来られないらしい。
「この前、咲翔と誠志郎と3人で美術館に行った時に、こんなことがあったんだ」
そう言って優莉は、先日の怪盗ゆりかもめの活躍についてミューと玲子さんに説明していた。
「そこでなんだけど、あの泥棒館長を、果物泥棒と同じ方法で懲らしめてやれないかなと思ったんだ。どうかな?」
「なるほど。いいんじゃないか? 俺は賛成」
「大切な思い出の絵を盗むなんて許せない。わたしも賛成」
「私も賛成。井上さんという方のおばあちゃんがどれほど心を痛めていたことか。想像するだけで虫唾が走るわ」
ということで、あの泥棒館長を懲らしめてやることとなった。
まずは例の美術館へと足を運んだ。前回と展示内容は変わっていたが、【愛する人】(注:実際は井上さんが描いた偽物)はこの美術館の所蔵品であり、美術館の目玉ということで、目立つところに飾ってあった。
館長はすぐに見つかった。相変わらず意地の汚さが滲み出ている。
早速作戦を実行に移した。
まずは玲子さんが、テレパシーで警告する。
「――数年前、この【愛する人】が盗まれた際、運転手として実行犯の送り迎えをしていた者がいましたが、それは館長、あなたですね?――」
館長は驚き、周囲を見回していた。
「――それから数年が経過したあと、何も知らない振りをして実行犯から絵を受け取り、この絵が碧風清流のものではないかという噂を自ら流し、周りから勧められるようなかたちで鑑定してもらった。そして、この絵が碧風清流のものであると正式に認められてたことで、待ってましたと言わんばかりにこの美術館の目玉として大々的に宣伝した。おかげでこの美術館はかなり繁盛しているようですね――」
館長は頭がおかしくなったと思ったのか、近くにあった椅子に座り込んだ。
「――座っても無駄だぞ。座ったところでお前の罪は消えない――」
そこで優莉が時間を止め、ミューが館長を天井近くまで持ち上げた。
「うわあ、ああ、あー、あー!」
そして、床すれすれにまで急降下させた。
「ああああーーー!」
「――自首しないのであれば、お前を地面に叩きつけて頭蓋骨を木端微塵《こっぱみじん》に砕いてやるぞ――」
「ああ、ああ、」館長は相当動揺しているようだった。
「――実行犯とも色々と話したいことがあるだろう。そんな義理はないが、少しの間待ってやる。早めに話をつけて、自首することだ。さもなければ……わかってるな?――」
「はい。わかったます、わかりまてし、わかっとろますれ……」
とうとう何を言っているのかわからなくなった。相当混乱しているようだ。
「よし、こんなもんでいいだろう」優莉が時間停止を解除した。
物静かな美術館の中で、その男だけが不自然に動揺し、混乱している。
おそらくこれで大丈夫だろう。あとは自首するのを待つだけだ。
俺たち4人は何食わぬ顔で美術館をあとにし、それぞれの帰路についた。
――樹海へ行くその日まで、残り一週間を切っていた。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
NPCが俺の嫁~リアルに連れ帰る為に攻略す~
ゆる弥
SF
親友に誘われたVRMMOゲーム現天獄《げんてんごく》というゲームの中で俺は運命の人を見つける。
それは現地人(NPC)だった。
その子にいい所を見せるべく活躍し、そして最終目標はゲームクリアの報酬による願い事をなんでも一つ叶えてくれるというもの。
「人が作ったVR空間のNPCと結婚なんて出来るわけねーだろ!?」
「誰が不可能だと決めたんだ!? 俺はネムさんと結婚すると決めた!」
こんなヤバいやつの話。
深淵の星々
Semper Supra
SF
物語「深淵の星々」は、ケイロン-7という惑星を舞台にしたSFホラーの大作です。物語は2998年、銀河系全体に広がる人類文明が、ケイロン-7で謎の異常現象に遭遇するところから始まります。科学者リサ・グレイソンと異星生物学者ジョナサン・クインが、この異常現象の謎を解明しようとする中で、影のような未知の脅威に直面します。
物語は、リサとジョナサンが影の源を探し出し、それを消し去るために命を懸けた戦いを描きます。彼らの犠牲によって影の脅威は消滅しますが、物語はそれで終わりません。ケイロン-7に潜む真の謎が明らかになり、この惑星自体が知的存在であることが示唆されます。
ケイロン-7の守護者たちが姿を現し、彼らが人類との共存を求めて接触を試みる中で、エミリー・カーペンター博士がその対話に挑みます。エミリーは、守護者たちが脅威ではなく、共に生きるための調和を求めていることを知り、人類がこの惑星で新たな未来を築くための道を模索することを決意します。
物語は、恐怖と希望、未知の存在との共存というテーマを描きながら、登場人物たちが絶望を乗り越え、未知の未来に向かって歩む姿を追います。エミリーたちは、ケイロン-7の守護者たちとの共存のために調和を探り、新たな挑戦と希望に満ちた未来を築こうとするところで物語は展開していきます。
宇宙戦艦三笠
武者走走九郎or大橋むつお
SF
ブンケン(横須賀文化研究部)は廃部と決定され、部室を軽音に明け渡すことになった。
黎明の横須賀港には静かに記念艦三笠が鎮座している。
奇跡の三毛猫が現れ、ブンケンと三笠の物語が始まろうとしている。
錬金術師と銀髪の狂戦士
ろんど087
SF
連邦科学局を退所した若き天才科学者タイト。
「錬金術師」の異名をかれが、旅の護衛を依頼した傭兵は可愛らしい銀髪、ナイスバディの少女。
しかし彼女は「銀髪の狂戦士」の異名を持つ腕利きの傭兵……のはずなのだが……。
鉄錆の女王機兵
荻原数馬
SF
戦車と一体化した四肢無き女王と、荒野に生きる鉄騎士の物語。
荒廃した世界。
暴走したDNA、ミュータントの跳梁跋扈する荒野。
恐るべき異形の化け物の前に、命は無残に散る。
ミュータントに攫われた少女は
闇の中で、赤く光る無数の目に囲まれ
絶望の中で食われ死ぬ定めにあった。
奇跡か、あるいはさらなる絶望の罠か。
死に場所を求めた男によって助け出されたが
美しき四肢は無残に食いちぎられた後である。
慈悲無き世界で二人に迫る、甘美なる死の誘惑。
その先に求めた生、災厄の箱に残ったものは
戦車と一体化し、戦い続ける宿命。
愛だけが、か細い未来を照らし出す。
キンメッキ ~金色の感染病~
木岡(もくおか)
SF
ある年のある日を境に世界中で大流行した感染病があった。
突然に現れたその病は非常に強力で、医者や専門家たちが解決策を見つける間もなく広まり、世界中の人間達を死に至らしめていった。
加えてその病には年齢の高いものほど発症しやすいという特徴があり、二か月も経たないうちに世界から大人がいなくなってしまう。
そして残された子供たちは――脅威から逃れた後、広くなった地球でそれぞれの生活を始める――
13歳の少年、エイタは同じ地域で生き残った他の子供達と共同生活を送っていた。感染病の脅威が収まった後に大型の公民館で始まった生活の中、エイタはある悩みを抱えて過ごしていた……。
金色の感染病が再び動き出したときにエイタの運命が大きく動き出す。
エンシェントソルジャー ~古の守護者と無属性の少女~
ロクマルJ
SF
百万年の時を越え
地球最強のサイボーグ兵士が目覚めた時
人類の文明は衰退し
地上は、魔法と古代文明が入り混じる
ファンタジー世界へと変容していた。
新たなる世界で、兵士は 冒険者を目指す一人の少女と出会い
再び人類の守り手として歩き出す。
そして世界の真実が解き明かされる時
人類の運命の歯車は 再び大きく動き始める...
※書き物初挑戦となります、拙い文章でお見苦しい所も多々あるとは思いますが
もし気に入って頂ける方が良ければ幸しく思います
週1話のペースを目標に更新して参ります
よろしくお願いします
▼表紙絵、挿絵プロジェクト進行中▼
イラストレーター:東雲飛鶴様協力の元、表紙・挿絵を制作中です!
表紙の原案候補その1(2019/2/25)アップしました
後にまた完成版をアップ致します!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる