恋愛パーソナリティ!

睦月

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1.春は出会いの季節

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 中学校までの日常は散々だった。

 地方都市の公立中学校というのは、様々な人種のサラダボウルなのかもしれない。

 所謂不良と呼ばれるような人間が確認されるようになるのは中学校からだと思う。

 元々人見知りで大人しかった僕は決してスクールカーストの上位にいたわけではなかった。

 ずば抜けて勉強が出来るわけではないが、真面目に授業を受けているとテストでは満点近くとれた。

 環境というのは怖いもので、お利口さんだった同級生たちの半数以上は、荒れた中学校というフィールドで野生化していく。

 そんなサバンナから卒業して少し離れた町の高校に進学した。離れてはいるけれど、電車で15分だ。

 ビルに囲まれて車が絶え間なく走っている地元と違い、山と川とそれなりの駅前の商業施設が心地よい。といっても、入試の時に来ただけなんだけど。


 高校に入学してから一週間。

「コウ、今日もゲーセン行く?」

 学校に着いてすぐ後ろの席から声を掛けられた。

「タケルよ、おはようの挨拶すら言うのが惜しいかい」

 と新しい環境で出来た友人に返事をする。

 入学初日の朝、早起きし過ぎて学校近くのコンビニで時間をつぶそうと雑誌コーナーに向かうと、同じ制服を着たタケルが居た。僕らの高校は学年でネクタイの色が違うので、同じ一年生だと判った。
 その場で声を掛け意気投合して学校に向かったというわけだ。

「行きたいけどあんまりお金ないかも」

 バイトをこれからしなきゃな、と思いつつ返事をする。
 後ろの席の男子は片岡タケル。天然パーマの髪の毛に、決して高い方ではない背丈の普通の男子高校生。趣味はゲームとアニメだ。

「じゃあゲーム屋見に行こう! おはよう!」

 仲良くなってわかったこと、タケルはせっかちである。

「行こ行こ。ゲーム見たいわ。タケルRPGやる?」

「めっちゃやってた。敵から逃げまくって低レベクリアが基本だけど。」

「真逆で装備とか整えるのに敵と戦い過ぎるタイプだ」

「難易度下がるとつまらん」

 プレイスタイルは正反対なのに仲良くなれるって、これが青春か。

 タケルはどっちかというと地味なタイプに見える。だけれども友達になって一週間、わかったことが幾つかあった。
 失礼な言い方だけど意外と友達が多いこと。

「タケちゃん、同じ学校だったんだ! またよろしくね!」

 同じ中学校だったであろう女子が何人か帰り際に声をかけていった。友達が多くないだろうな、と勝手に思っていたので裏切られたような気分になり自己嫌悪した。

 もう一つはアクティブかつ勇猛なところ。

 カツアゲ中のクラスメイトに、鬼気迫る勢いで怒鳴りこみに行った話は、また機会があればということで。

 ゲーム屋までの道中、新たな学生生活の感想を言い合ったり、商店街で遊べそうな店をチェックして楽しく過ごした。

「電車通学って大変だよな。乗ってる時間短いけど、朝のラッシュで座れないし」

 僕の家の最寄り駅はかなり都会なのである。

「そうなの? うちの駅、田舎だから座ってゲームするか本読んでるよ」

「えっ?! 座れるの? いいなぁ、タケルの家の方はのどかだし平和そう」

「まぁ平和だよ。同じ高校の制服着てるヤツもチラチラ見かけるし安心する。そういえばゲーム屋に俺の友達来てるかも。行くって言っておいたんだ」

「おぉ、そうなんだ」

 困ったことに人見知りの僕は、気の利いた返事もできないでいた。

 間もなくゲーム屋に到着すると、短髪の少年がゲームのPVを眺めていた。

「おーい、マサル」

「おータケル、来たかぁ」

 マサルと呼ばれたその少年は、ニコニコした顔で近寄ってきた。
少しタレ目で笑っているように見えるが、いつもこうらしい。
とりあえず優しそうな見た目でほっとする。

「はじめまして~。同じ高校やんな?」

「はじめまして。コウです。タケルと同じクラスなんだ」

「じゃあ隣りのクラスやな。タケル、たまには一緒に昼飯食おうぜ~」

 見た目通りの和やかな会話にほっとしながら、どんなゲームを持ってるとかこれが欲しいとか楽しい時間が過ぎていった。

「そろそろ帰るか~」

 タケルは満面の笑みである。本当にゲームが好きなんだな。

「まぁ明日も学校やしな。時々お昼休み邪魔するわ!」

「わかった。また学校でね。マサルも連絡先教えて」

 自分からこういう事はあまり言わないのだが。人生初のグループみたいなのが出来て嬉しい。
 駅は3人一緒で、僕だけが違うホームだった。
電車の時間を確認すると、2人の電車が先に来るのでお見送りする事にした。

「こっちのホームは人がそんなに多くないね」

 正直羨ましい。夕方なのにほとんど並んでいない。

「何でやろな。いつもはもっといるんやけど」

「コウ、よかったら土日に泊まりに来なよ。ゲーム大会するぞ」

 片岡家に招待された。

「いいね、マサルと一緒に行こうかな」

 休日の予定もサクサク決まり、発車待ちの電車を横目にホームを歩いていると、人だかりが出来ていることに気づいた。

「なんやろあれ~」

「帰りの電車の時間は…」

 帰りの発車時刻を確認するタケル。基本的に面倒くさがりな性格なので、人だかりに興味が無いらしい。

「マサルと見てこようかな」

「行ってらっしゃーい」

 タケルを置いてマサルと人だかりの中心にある事件へと向かって行った。

「うわっ! なんか汚れてると思ったら、あの子、血まみれやん?!」

「あれうちの制服じゃない? マサル、行こうか!」

 僕とマサルは、血だらけの制服を着て俯いている女の子のもとへと走っていくのだった。
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