君は所詮彩り

balsamico

文字の大きさ
上 下
16 / 33
3 至って至生

至って至生7

しおりを挟む

「もうやめたんですか? 男の道」

翌朝の普通の姿に笑顔の聖人に問われた。俺は今までふざけた事を多数やってきてしまったので、またそうだと思われている。


あいつには匂いでごまかしても無駄だってわかったし、ばれてる以上ごまかす必要もない。もう無駄な抵抗はやめたんだ。


あれから数日、俺はあの上級生のおもちゃにされている。
昼休みに一緒に弁当を食べて、それから休み時間が終わるまで一緒にいる。


べつに特に大した事はされていない。キスをされるくらいで、あの時間ではたいした事はできないからだ。


だんだん近づいてくるヒート。明日の金曜日あたりに来てしまいそうだ。


見送りの聖人から感じる微妙な匂い。それにぞわぞわと反応する俺の感覚がそう伝えてくる。抑制剤を飲んでいるのに。きっと聖人にも俺からもすこし甘い匂いとかしてるんだろうな。


昼休み屋上のテラスに弁当をもって向かう。階段をつらつら上りながら俺は何をやってんだろうって思う。


上級生は橋詰という3年生で、想像どおりαだった。
社会の中ではΩも珍しいけれど、αもそれなりに珍しい。特定の世界や階層では当たり前のようにいるけれど。


彼らは華やかで知的なポジションや権力に近い場所にいたりするので社会的に存在を知られていた。悪い面ばかりクローズアップされがちなΩと大違いだ。


昼休みに誰もいない屋上。二人だけで食べる弁当。これはきっとこの目の前にいる先輩が何かしたに違いない。


「この学校でΩの君と出会えるなんて運がいい。ヒートとか慣れてないでしょ。そんな感じがする」

勝手にしゃべっている先輩。俺は適当に相づちをうち、内心で突っ込む。


はい。慣れていません。ヒートが来るようになってしまったのは、つい、最近です。


キスをされても指先程度の弱い抵抗など意味が無かった。強い意志の前に丸め込まれ、俺は昔の悪い癖で黙り込んでしまう。


俺の無言を肯定にとったのか、今日の行為はエスカレートしていく。俺の耳元に顔を寄せてくる。

「匂いが強くなってる。明日にもヒートかな」

匂いに興奮したのか、俺の喉もとのボタンを外していく。口元から喉に這わされていく唇。


ズボンのベルトを緩められシャツの下から手が、俺の日に当たらない柔い肌から上半身に這い上がってくる。


先輩は俺に触ることに夢中だ。俺は胸や腹を触られる違和感で呆然となっていた。こんなシーン過去に何度もあった。


αだというこの先輩に俺は全然ときめかない。胸の動悸はしない。セックスがしたいなんて思わない。ヒート前なのに何で先輩はこんなに興奮してるんだろう。


俺は聖人の姿を思い浮かべた。真面目でストイックな聖人。その聖人が乱れた時があった。俺の初めてのヒートの時だ。顔が赤らんで目は潤んでいた。
きっと俺なんかも鼻の穴も毛穴も全開で、もっと凄い姿だっただろうけどさ。


聖人に触られてる。聖人に触れている。ふと、そんな気がしてしまった。俺は自分が今、誰に触られているのか忘れてしまった。

「君はいやらしい子だね。ヒート前なのにこんなにして」

いつの間にか俺の前はズボンを押し上げてしまっていた。先輩はにやけて嬉しそうに俺の前に触れてくる。俺は背中が冷えていくのを感じた。
背景にはまた授業開始のメロディが流れていた。




しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

恋した貴方はαなロミオ

須藤慎弥
BL
Ω性の凛太が恋したのは、ロミオに扮したα性の結城先輩でした。 Ω性に引け目を感じている凛太。 凛太を運命の番だと信じているα性の結城。 すれ違う二人を引き寄せたヒート。 ほんわか現代BLオメガバース♡ ※二人それぞれの視点が交互に展開します ※R 18要素はほとんどありませんが、表現と受け取り方に個人差があるものと判断しレーティングマークを付けさせていただきますm(*_ _)m ※fujossy様にて行われました「コスプレ」をテーマにした短編コンテスト出品作です

同僚に密室に連れ込まれてイケナイ状況です

暗黒神ゼブラ
BL
今日僕は同僚にごはんに誘われました

キサラギムツキ
BL
長い間アプローチし続け恋人同士になれたのはよかったが…………… 攻め視点から最後受け視点。 残酷な描写があります。気になる方はお気をつけください。

エリート上司に完全に落とされるまで

琴音
BL
大手食品会社営業の楠木 智也(26)はある日会社の上司一ノ瀬 和樹(34)に告白されて付き合うことになった。 彼は会社ではよくわかんない、掴みどころのない不思議な人だった。スペックは申し分なく有能。いつもニコニコしててチームの空気はいい。俺はそんな彼が分からなくて距離を置いていたんだ。まあ、俺は問題児と会社では思われてるから、変にみんなと仲良くなりたいとも思ってはいなかった。その事情は一ノ瀬は知っている。なのに告白してくるとはいい度胸だと思う。 そんな彼と俺は上手くやれるのか不安の中スタート。俺は彼との付き合いの中で苦悩し、愛されて溺れていったんだ。 社会人同士の年の差カップルのお話です。智也は優柔不断で行き当たりばったり。自分の心すらよくわかってない。そんな智也を和樹は溺愛する。自分の男の本能をくすぐる智也が愛しくて堪らなくて、自分を知って欲しいが先行し過ぎていた。結果智也が不安に思っていることを見落とし、智也去ってしまう結果に。この後和樹は智也を取り戻せるのか。

真柴さんちの野菜は美味い

晦リリ
BL
運命のつがいを探しながら、相手を渡り歩くような夜を繰り返している実業家、阿賀野(α)は野菜を食べない主義。 そんななか、彼が見つけた運命のつがいは人里離れた山奥でひっそりと野菜農家を営む真柴(Ω)だった。 オメガなのだからすぐにアルファに屈すると思うも、人嫌いで会話にすら応じてくれない真柴を落とすべく山奥に通い詰めるが、やがて阿賀野は彼が人嫌いになった理由を知るようになる。 ※一話目のみ、攻めと女性の関係をにおわせる描写があります。 ※2019年に前後編が完結した創作同人誌からの再録です。

消えない思い

樹木緑
BL
オメガバース:僕には忘れられない夏がある。彼が好きだった。ただ、ただ、彼が好きだった。 高校3年生 矢野浩二 α 高校3年生 佐々木裕也 α 高校1年生 赤城要 Ω 赤城要は運命の番である両親に憧れ、両親が出会った高校に入学します。 自分も両親の様に運命の番が欲しいと思っています。 そして高校の入学式で出会った矢野浩二に、淡い感情を抱き始めるようになります。 でもあるきっかけを基に、佐々木裕也と出会います。 彼こそが要の探し続けた運命の番だったのです。 そして3人の運命が絡み合って、それぞれが、それぞれの選択をしていくと言うお話です。

十七歳の心模様

須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない… ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん 柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、 葵は初めての恋に溺れていた。 付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。 告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、 その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。 ※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。

処理中です...