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前夜祭が始まる
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大学特有のただ長いだけだった夏休みが昨年よりも短く感じた。
しかし、起きたら部屋の中にクリスがいたあの朝はずっと前の出来事のような気がしていた。
サブステージの準備は予想していたよりももっと細々とやらなければならない事があった。
実は日没までに終わるように調整していたスケジュールを大学側に伝えると、屋根の無い炎天下での開催なのに熱中症対策を何もしてい無いなら許可出来ないと言われてしまった。
しかし、対策と言われても乏しい予算に余裕は無く、もはや会場を変えるなんて出来る訳も無い。
折衷案として11時スタートから4時スタート9時終了に変更する事になった。
その上でミストシャワーを一台いれる事で許可を貰ったのだ。
毎日真夏と変わらないくらい暑いが10月初旬の日没は5時過ぎ、つまりステージを照らす照明を増やし、観客スペースの足元にライトが必要になったって事だ。
細々とした問題は他にもたくさんあったが、何とか収支を合わせる事が出来たのは新しく湧いて出た事情を鑑みて予算を少しだけ増やしてもらえた事と、ドラムセットとアンプの他にスピーカーなどを黒江が手配してくれたから予算が浮いた為だ。
そうなって来てはもうライブに出るしか道は残されていないのだが、真城のやる気に当てられたのか演ってもいいような気になっている。
それだけでも十分忙しかったのだが、「死ぬ程忙しい」と佐竹が言っていた通り、学祭を取り仕切る執行部の手伝いにも謀殺された。
その為、何故かセットにされていた真城とは随分と生活スタイルが違うにも関わらず夏休みはフルで真城と会っていた。
上手い返しが出来ないから黙ってしまう事も多い為に会話が弾んだりはしないが何とか仲良く出来たと思う。
そんな風に、満を持してとうとうやって来た前夜祭当日は目まぐるしく過ぎていったひと夏の集大成に思えた。
「何だかさ、この頃の蓮は柔らかいな」
「そう…かな……どの辺が?…」
「この辺が」と隣に寝転んでいた真城の指が頬を突いた。痛くは無かったが手を当ててみた。
10月に入っているというのに全く緩まない暑さの中で校舎の日陰で大の字になっていた。
「変…かな?…」
「前よりもよく笑うしいいんじゃ無い?」
「前は固かったって事?」
「さあ?知らない」
どっちなんだと思ったけどどっちでもいい。
暫く休んだ後はまだまだやらなければならない事がある。
朝一番に着いたトラックから運び出されたレンタルステージが業者さんの手によって組み上がって行く。
あちこちに散りばめたパーツが一同に会し、着々と積み上がっていく様子はそこここから湧き上がってくる高揚感が音になって聞こえて来るようだ。
休んでいた日陰で「やるか」と真城が言った。
「やろうか」と起き上がった。
もう温くなったペットボルトを煽り水分補給をしてから廃材を集めて修理した看板を青いペンキで染めていく。予算の都合で一色しか用意出来なかった為にミュージックフェスタと入れる文字はマスキングをして渇いた後に剥がしたら読めるようヌキにしたのだ。
真城と2人で黙々と塗って塗って、随分埋まって来たところでふと空を見上げると、全く同じ色が色が広がっている事に驚きを覚えた。
しかし、起きたら部屋の中にクリスがいたあの朝はずっと前の出来事のような気がしていた。
サブステージの準備は予想していたよりももっと細々とやらなければならない事があった。
実は日没までに終わるように調整していたスケジュールを大学側に伝えると、屋根の無い炎天下での開催なのに熱中症対策を何もしてい無いなら許可出来ないと言われてしまった。
しかし、対策と言われても乏しい予算に余裕は無く、もはや会場を変えるなんて出来る訳も無い。
折衷案として11時スタートから4時スタート9時終了に変更する事になった。
その上でミストシャワーを一台いれる事で許可を貰ったのだ。
毎日真夏と変わらないくらい暑いが10月初旬の日没は5時過ぎ、つまりステージを照らす照明を増やし、観客スペースの足元にライトが必要になったって事だ。
細々とした問題は他にもたくさんあったが、何とか収支を合わせる事が出来たのは新しく湧いて出た事情を鑑みて予算を少しだけ増やしてもらえた事と、ドラムセットとアンプの他にスピーカーなどを黒江が手配してくれたから予算が浮いた為だ。
そうなって来てはもうライブに出るしか道は残されていないのだが、真城のやる気に当てられたのか演ってもいいような気になっている。
それだけでも十分忙しかったのだが、「死ぬ程忙しい」と佐竹が言っていた通り、学祭を取り仕切る執行部の手伝いにも謀殺された。
その為、何故かセットにされていた真城とは随分と生活スタイルが違うにも関わらず夏休みはフルで真城と会っていた。
上手い返しが出来ないから黙ってしまう事も多い為に会話が弾んだりはしないが何とか仲良く出来たと思う。
そんな風に、満を持してとうとうやって来た前夜祭当日は目まぐるしく過ぎていったひと夏の集大成に思えた。
「何だかさ、この頃の蓮は柔らかいな」
「そう…かな……どの辺が?…」
「この辺が」と隣に寝転んでいた真城の指が頬を突いた。痛くは無かったが手を当ててみた。
10月に入っているというのに全く緩まない暑さの中で校舎の日陰で大の字になっていた。
「変…かな?…」
「前よりもよく笑うしいいんじゃ無い?」
「前は固かったって事?」
「さあ?知らない」
どっちなんだと思ったけどどっちでもいい。
暫く休んだ後はまだまだやらなければならない事がある。
朝一番に着いたトラックから運び出されたレンタルステージが業者さんの手によって組み上がって行く。
あちこちに散りばめたパーツが一同に会し、着々と積み上がっていく様子はそこここから湧き上がってくる高揚感が音になって聞こえて来るようだ。
休んでいた日陰で「やるか」と真城が言った。
「やろうか」と起き上がった。
もう温くなったペットボルトを煽り水分補給をしてから廃材を集めて修理した看板を青いペンキで染めていく。予算の都合で一色しか用意出来なかった為にミュージックフェスタと入れる文字はマスキングをして渇いた後に剥がしたら読めるようヌキにしたのだ。
真城と2人で黙々と塗って塗って、随分埋まって来たところでふと空を見上げると、全く同じ色が色が広がっている事に驚きを覚えた。
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