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金曜日
しおりを挟む朝と夕方は野田弁護士の動向を探る。
夜になると大久保さん家のお庭に潜む。
その合間に作戦を立てたり、GPSの命中率を上げる練習をした。
迷惑バイクを何回か繰り返して観察するうちに、そんなに沢山の数がいない事が判明した。
毎回顔ぶれは変わるけど同じコースを走って騒ぐのは合計10台もいない、そのうちで"必ずこいつだけは毎回いる"って奴を狙う事にした。
そのバイクはサイレンサーを交換した黒のビッグスクーター、上手い事にリアが四角くて平面がある、その車種はヤンキー御用達だと聞いた。
チョコチョコと施された羽のような装飾パーツがそれっぽい。
必ず一番後ろを走っているのも、そのバイクをターゲットにする決め手になった。
決行は金曜日の夜と決めた。
週末になると野田弁護士の追跡は休みになるって事と週末の夜は迷惑バイクが必ず現れるからだ。
つまり、あいつらは学生…もしくはそれなりに働いていると推測される。
まあ……「借金のカタに腎臓を抵当にしながら変な事務所で働かされているお前よりマシだろう」と言われそうだが、3日と開けず深夜を徘徊するあたり真っ当な職とは思えない。多分。
ガニ股で段ボールを引きずってブンブン言ってようが高速腰振りを白い目で見られようが人に迷惑は掛けてないのだ。……これも多分だけど。
準備と言っても何もする事は無い。
何度も練習を重ねたせいで粘着力が落ちていたネバネバパッドは洗ったらまたネバネバになった。
今はゴミや埃が付かないようにビニール袋に入れてある。何だか落ち着かないけど長い夜を覚悟しないといけないのだ。早目のお昼を食べた後昼寝でもしようかって結論になったけど、健二は用があると言って出かけてしまった。
そしたら突然暇。
健二がいれば煩いけど、つまんない事で喧嘩したり議論に発展したりして話が尽きないのだ。
因みにその日の朝からずっと続いていた議題はUFOは本物かどうか。
健二は当然本物派だから必然的に否定派に回ったけど物凄くどうでもいい。
掃除と洗濯は終わったし、仕事の問い合わせどころかダイレクトコールさえない。
「やっぱり寝よう」
大久保さんの家は近いし、どうせ10時ぐらいまで待機なのだ。明るいうちに誰にも邪魔されずに眠るなんて幸せだな……なんて思っているとあんまり聞きたく無い爆音に邪魔された。
これは確かに殺意が湧く。
うつらうつらしだした最高に気持ちいい頃合だったから真面目に散弾銃が欲しいと思った。
何だ、誰だ、死ねって思いながら外を覗いてみると、健二がヘルメット脱いだ所だった。
どこから調達して来たのか、止まってるのにうるっせえネイキッドバイクに跨ってる。
エンジンが停止すると周りから音が消えたのかと勘違いした程だ。
この事務所がある場所は住宅街では無いが、それでも行き交う人が迷惑そうな顔をしている。
「おう、葵!」って手を振るな。
知り合いだと思われる。
思わず窓を締めて知らん顔をした。
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