赤くヒカル夜光虫

ろくろくろく

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雪斗が会社に出社するようになってから佐鳥は時々マンションに帰ってこなかった

どこにいるのかはわかっている、連絡が無い事も多いが大人の男なのだから何をしようとそこまで口を出す気はなかった

………だからと言って気にならないわけじゃない

同棲(?)初日のようにイライラ待つ事はもう無いが、佐鳥の私生活に責任を持ってしまった様な気がして度が過ぎてくると放っておけない


その日は午後から営業会議が予定され、ただでも忙しくなるのに就業時間になっても来なかった
雪斗が出社しているのに佐鳥が来ないって事はどうやら放ったらかされたらしい


遅刻を誤魔化す為か、直で外回りに出たまま午後になっても戻ってこない佐鳥にそろそろ一言言っておいた方がいいな………と会議室に出来た空席を眺めていた

営業会議は互いの現状報告や連絡事項を交換したりするが緑川にはあまり関係ない

取引先は独自に開発した所が多く情報交換の必要は無かった


「社長、佐鳥と木下と井上が帰ってませんが会議を始めてもいいですか?ちょっと人数が少ないんですが松本から企画の提案を聞いてるんで時間が惜しい」

「野島部長が構わないならどうぞ始めてください、私はどうせ聞いてるだけです」

「はあ……聞いてるだけね……」

雪斗は必ずと言っていい程会議と名の付くものに顔を出す、いつも部署ごとの責任者に任せ殆ど口を挟まないが口出しするとややこしい

社会の機微がわかってない雪斗は一人で動いて一人で処理してしまい責任者は顔を潰される、野島も会議の度に戦々恐々としていた

特にこの日の会議は荒れた、松本が小型の浄水機を使ってイベントをやりたいと言い出したのだ



「うちは製薬会社だぞ、あまりにも畑が違いすぎてリスクが大きすぎる」

「でも!打ってでないと実績を積めません、誰も知らない辺境の国に売れても人の目に触れる事は皆無です」

誰の目にも触れないと松本は言ったが、実は最初の一件がまだ完成もしていないのに続けて三件の契約が取れている、その為深川の一週間だったはずの滞在予定が伸びて帰ってこれなくなっていた

さすがと言うかしぶといと言うか、売ったのは深川だった

メールに添付されていた写真の深川は馬鹿みたいに楽しそうで、真っ黒に日焼けした顔に現地の住民と同じ白い長衣を着込んだその姿は髭のせいもあるがもう日本人には見えなかった



「どんなイベントをやって誰に売る気だ、どれくらいの利益が見込める」

小型とは言っても浄水器は家庭用ではない
水の豊富な日本に都合のいい需要があるとは思えなかった

「それはわかりませんが多くの人に見てもらえばどんな使い道があるかわからないじゃないですか」

「松本、言いたい事はわかるがこういう自分なりの新提案をする時はある程度資料と調査が必要なんだ」

「だからそれを探す時間をくれと言ってるんです!営業補助の合間に出来ます!俺は急な使いっ走りを制限して欲しいだけなんです!電話を待って待機しているだけなんて会社の損失です」

「使いっ走りが無駄だと感じてる時点でまだ何もわかってないって事だろが!」


「松本………落ち着けよ、部長も……」

松本はわかるが野島部長もまだまだ熱い、会議の為に午後からの約束は入れていないが話が逸れて長くなるのはごめんだった

 
「緑川、お前が諭してやってくれ、お前ならどうする」

「俺なら需要を探してからスタートします、松本、聞くが資金はどうするんだ、野外イベントは天候に左右される、実績ゼロのうちにどこの銀行が融資してくれるんだ」

「資金は……計画が出来てから考えます」

「例えばイベントで食べ物を出すとしよう、開催されるかも不明で規模も日程も場所もまだ決まってませんが出店してくださいって頼めるのか?」

「場所は仮押さえ出来る場所もあります」

「だから資金はどこから出す、ただで仮押さえなんか出来ないぞ、いくら必要なんだ、無計画に喋るな」

「そうだよ、今でも深川が本業じゃない浄水に取られて営業は皆手一杯なんだよ、お前はフォローに専念すべきだろう」

保坂は意に沿わない担当を増やされて文句ばかり言っている、まだ40を数年過ぎたばかりなのに薄くなった前髪を撫でて息巻いた

「攻める気がないからいつまでたっても緑川さんが独走しているじゃないですか?保坂さんみたいに注文を聞いて来るだけなら誰でも出来るでしょう」

「何だと!」

いつも会議では退屈そうに終わるのを待っている保坂が顔を赤くして勢いよく立ち上がった




「松本さん……」

じっと黙って成り行きを見ていた雪斗が口を開くと、ワッと騒がしくなっていた会議室が一気に冷えた
まだ学生料金でどこにでも入れそうな顔をしている癖にムカつく事この上ない


「言い過ぎです」


「…………はい……すいません……」


「野島部長」

「何でしょう」

「資金は私が責任を持って用意します、その他の事は私には判断出来ないので任せますが、松本さんの提案を形が見えるまではやってもらってはどうですか?」

「しかし、そんな余裕がないのは保坂の言った通りです」

「松本さん、自分の仕事を滞りなくやりながら企画書を作れますか?勿論使いっ走りも松本さんの大事な役目です」

「はい!!」

「ではまず企画書を作って野島部長を納得させてください、話はそれからだ」

「株価は落ちたままでうちにそんな資金の余裕はないはずです」

売り上げは落ちてはいないが一旦下がった株価が上がってこない、株価が高止まりしていたのは雪斗が買い占めていたからだがそれをこの場で言う必要もない

「その心配は私がします、松本がエンジンなら野島部長はブレーキになって進めて下さい」


「はい!!」

「期限を切るぞ!寝ないでやれ!」

「………は…い」

野島部長の睨みと活にトーンダウンしたが松本は机の下でぐっと拳を握りしめた


「じゃあ会議を長引かす訳にもいかない、各自の報告をなるべく短く頼む」

野島がお互いの情報交換を即すとやっと通常の会議が始まった




「会議中に失礼します」

入浴剤の需要が落ち込み、芒硝の在庫が余り気味になっている事を受けて、新たな取り引き先を話し合っている途中に遠慮がちなノックをして渡辺が入ってきた

会議に出る予定をしていたが来客の為自分のオフィスに帰っていた渡辺は席にはつかず、雪斗の隣に行って耳打ちをした


「……………ました……」

「………今日?」

「……はい」


声が小さくて聞こえなかったが渡辺が何かを言うと雪斗は表情を変えて渡辺の方を見直し、考え込むように手で顎を支えた



「………見に……行ってもいいか?」

コクンと渡辺が頷くと会議も途中なのに雪斗は席を立った


「社長?出掛かけるんですか?」

雪斗は問いかけた野島部長にさえ何も言わずに、脱いでいた上着を持って早足で部屋を出ていってしまった


何かトラブルでもあったのか……と目線を送ると、渡辺は何かを思いついたように耳を寄せてきた

「緑川君……もし時間があるなら……悪いが社長を追いかけて車で送ってくれないか?」

「時間はありますけど渡辺さんは?他に用事でもあるんですか?」

「私は遠慮しとくよ、君も社長を送るだけでいい……着いたら社長を置いて帰って来てくれていいから」

「……わかりました、野島部長、俺も抜けていいですね?」

「ああ、いいけど後で議事録読んでおけよ、もうすぐ芒硝が溢れて製造が止まる、急に担当振ったりするぞ?」

「勿論です」

どうせ今の所会議の内容に関係がない、レクサスのキーを取って雪斗の後を追った



雪斗の行き先は佐鳥元社長の自宅だった、つまりは雪斗がTOWAと一緒に取り上げた佐鳥の実家だった家……

渡辺が会議に来なかったのは佐鳥前社長が引き上げの済んだ家の鍵を渡しに来たからだった

雪斗は何だかんだと馴染みつつ確実にTOWAを侵食していく


案内されなくても家の場所は知っている
酔っ払って部屋の鍵を無くした佐鳥を放り込む為に来た事があった


雪斗は助手席に座ってもいいかと前に乗り込み、珍しく落ち着きがない

冷静に……冷徹に会社乗っ取りをやり遂げた雪斗でも心に呵責を感じているのか、不安そうな表情を浮かべ、何かから意識を逸らせるように過ぎていく外の景色をキョロキョロと見回した

住んでいた家を追い出すというのは人の人生基盤に深く関わり、あまり気持ちのいいものでは無い事は分かる


車で30分ちょっと

佐鳥家の屋敷は相変わらずホラーハウスみたいだった、古い巨体が威圧するように佇んでいる

人気《ひとけ》がなくシンと沈んだ真っ暗な窓は昼間でも二の足を踏みたくなる程不気味だった

大きいばかりでガタが来た開けにくい門をキイキイ鳴らして車を敷地に進めると、育ち過ぎた楠の木が根を盛り上がらせガタンと揺れた


門を開ける為に止めた車から先に降りていた雪斗は、鍵の掛かった扉をガチャガチャ揺らし、締め出されを食らった子供のように暗い窓を覗き込んでウロウロしていた


「待ってくださいね、今開けます」

渡辺から預かった鍵は物語に出て来そうな古風な形をしていた

素人でも簡単にピッキング出来そうな丸い鍵穴に差し込むと木で出来た宝箱を開けたような定番の音がした


元の持ち主にとっては"家"だが雪斗にしてみたら数多くある不動産という名の戦利品の一つに過ぎない、待ってさえいれば自ずと手に入る金融商品なだけだ



経年を伺わせる真鍮の取っ手を引くと重い扉を支える蝶番がキイっと鳴いた

鍵を開ける間後ろから見ていた雪斗は、扉を開けてもすぐには入ろうとせず、玄関先のポーチから屋敷を見上げてポツリと呟いた


「デカいな……」

「そうですね……家と言うよりお屋敷ですね、ここに佐鳥社長一人で住んでいたなんて贅沢に思えるけど……俺なら怖いですよ」

「俺も………入るのは怖いな……」

「行きましょう、外は寒い」


家の前まで来た事はあるが入るのは初めてだった
材質を確かめるように扉にそっと手を置き、広いせいで昼間でも暗い室内を前に、戸惑うように足を止めた雪斗の背中を押した


部屋の中には何も無いと思っていたがトランクルームに入りきら無かったのか家具が残っている

埃から守るようにかけられた白い布が浮き立って見えた

「暗いですね……渡辺さんから電気と水道は通したって聞いてます、灯りを付けるから待ってくださいね」


……とは言ったものの、通常あるべき場所にスイッチが見当たらない
携帯のライトを頼りに探し回ると、どう見ても不便な低い位置にブレーカーのスイッチによく似たレバーを見つけた

指を掛けてバチンッと引き下ろすと、少し間を置いてアンティークなシャンデリアがポウッと黄色い光を灯した

全貌が見えると部屋は広い
家具の他にも壁に掛けられた古い絵画も残っている


雪斗は靴も脱がず絨毯に上り、家具に掛けられた布をゆっくりと捲った

布の下から顔を出した古い斜陽な椅子を愛おしい物を愛でるような手付きでそうっと撫でて天井を見上げた


昔は華やかだったのだろう

細部まで凝った豪華な室内はどこも古く、役目を終えて昔を懐かしむ老人のように寂しげだった


雪斗が何をしにこの屋敷に来たのかはわからないが、簡単に見て回ってすぐに帰るなら少しの間待って会社まで送っていける

これからどうするつもりなのか聞こうと振り返ると雪斗は玄関の左手にある階段の裏側にしゃがみこんで頭を落としていた


「社長?何をしているんですか?」

体の影でますます暗くなった雪斗の手元を覗き込むと壁の下にある真鍮の小さな蓋が見えた

黒く濁った金色のカバーには小さな爪がついていた、雪斗が指を引っ掛けて引くと、中には三つ穴のある古い電源がひとつだけある

「うわ……古いですね、今はもう使えないんじゃないですか?」

コンセントまでデコレーションされているなんて、見た目はいいが住みにくいと佐鳥がぼやいていた事を思い出した


しかし雪斗は話しかけた声が聞こえていないかのように振り向きもしない

「社長?」

何をしているかはわからなかったが雪斗がコンセントに手を入れてカチリ音を鳴らすと階段の裏側の壁がコトンと小さく隙間を見せた






「隠し扉?………」

何故雪斗がそんな事を知っているのかはわからない

口を開けた小さな扉は完全に隠され、開かなければ外からはその存在に気づけないだろう

雪斗は屈まなくては頭を打つ低い扉を行くか戻るか……迷うようにじっと見つめて暫く動かなかった



「社長……これは?」

屋敷に入ってからの雪斗は一言も喋らない、まるで心ここに非ず、一人っきりしかいないように閉じこもっている


意を決したように雪斗が扉に手を掛けるとキイッと見えない蝶番が軋み、奥に続く暗く狭い通路が姿を現した

屋敷の前で雪斗を下ろして帰ってこいと渡辺に言われていたが好奇心が勝ってしまっている

スイっと体を屈め中に入った雪斗の後を付いていった



通路と言っても2メートルくらい先は右側に折れ広くなっている、どこからか昼間の光を取り込みそこは明るかった


雪斗は小さな隠し部屋の手前でピタリと足を止めた


「秘密基地みたいですね」

もう答えは期待していない、独り言のつもりで話しかけていた


上を見上げると2階建ての天井まで吹き抜けになっている、随分高い所にある明かり取りの窓が日の光を取り込んでいた


4畳程はあるだろうか、思っていたより広い小部屋の中には背の低いアンティークな戸棚が壁際に据え付けられ、古い画用紙やお菓子の空き缶に入ったクレヨンが置いてある

折り畳み式のパレットには色が乗ったまま乾燥してパリパリと絵の具が捲れ上がっていた




タンッと何かを打ったような音が聞こえた

雨は降っていないがどこかに溜まった雨水が漏れているのかもしれない………と上を見上げた


窓から差し込む光は暗闇を照らすライトのような四角い線を描き、壁に当たって柔らかく散っていた

古い割に手入れの行き届いた家の中は蜘蛛の巣一つない

トンっと前に立つ雪斗の頭が肩口に触れた

呼ばれたのかと雪斗を見ると………


息を飲んだ



部屋を見つめたまま動かない瞳から大粒の涙が溢《あふ》れポロポロと溢れ落ちていた





タン

タンッと何度も続いて床を打つ涙

表情はない

ただ……ただ静かに佇み、涙袋から溢れる綺麗な涙が止めどなく溢れて幾筋も道を作った頬から流れ落ちていく

まるで泣いてる事を自覚していないようだった


「…………社……」


声をかけようとしたが言葉を止めた


何故涙を流しているのかはわからない
この屋敷に何があるのかも……




今は何も言ってはいけない



やっぱり立ち合うべきではなかったのだ
渡辺に言われた通り帰れば良かった

見ていてはいけないような……ここにいてはいけないような気がして………
それでも立ち去ることも出来ずに静かに涙を流す雪斗から目を逸らして………ただ待った





どのくらい経ったのだろうか………


震えるような息遣いがこちらを向いている事に気付いて離していた視線を呼び戻すと雪斗がいつの間にか見上げていた

何を想って………どんな背景があるのかはわからない


零れ落ちる涙を拭おうともしない

未だ止まらない涙は頬に出来た筋を丁寧に辿り、それぞれの終点から滴となってポタリ……ポタリと落ちていく



雪斗は誰かを必要としていた


誰でもよかったのかもしれないがここには二人しかいない


何か言いかけた雪斗の口を指で止めた

今何か話をさせるのは残酷に思えた


ただ側にいて肩を抱いていればよかったのかもしれないが……涙の筋が濡らした赤い透明な唇がそうはさせてくれなかった

そこに触れるような真似をしなければ良かった


動いてしまった瞬間と雪斗が目を閉じた瞬間……

どちらが先かはわからなかった





TOWAのように製造過程で必要な商品を取り扱っている業種は午前中の初動が忙しい

発送が遅れると最悪の場合ラインが止まり損失を産む、特に食品を製造している場合は他の材料も無駄になり下手をすると賠償責任を追う事さえある


毎度毎度……もうそろそろ慣れても良さそうなものだが朝起きたらやっぱり雪斗はいなかった

雪斗も雪斗でわかっているなら起きたついでに声をかけるくらいしてくれてもいいのに(4時でも5時でもいい……)当たり前に寝過ごし、会社の前を通り過ぎて電車に飛び乗った

冬の入口は二人で眠ると暖かくて気持ちいい、それだけなら空いた脇の下がスカスカして習慣になった時間に目覚めるが、昨日はもうそろそろちょっとくらい触ってもいいんじゃないかと悶々としたせいで夜が遅かった

遅れたせいで予定と電話攻勢に押され、昼食すら取れていないのに、間の悪い事に近年高騰したカドミウムやコバルトを使う黄色と青の塗料の値上げ値段交渉が一銭一厘からの攻防に発展し、益々予定を押した


「営業会議には間に合わないな……」

……ってかもう始まってる

野島部長は"連絡が出来なかった"という言い訳を嫌う

相手にとって個人的な事情なんか関係ない、営業職の基本だといつも言われていた

「どうする?」

繋がっていない電話に話し掛けても答えてはくれないが、暗い画面を睨んでいると手の中でブルブルと震えだした



「引っ越しが済んだ……」

あまりにも素っ気ない父親からの電話は、仕事が終わったら引越し先に顔を出せ、とだけ言って切れてしまった

まるで社長命令のような父親の口調は会社を離れて尚変わらない



「そうか……あの家……もう無くなるんだな……」

あまりいい思い出は浮かんでこない、何年経っても住み慣れない、15年以上そこで暮らした見た目だけは豪華な古い屋敷には子供の頃の思い出が全部詰まってる

なくなった母も屋敷の中にいる姿しか思い出せなかった

人からの評価をそぐわぬ形にねじ曲げてしまった家だが多分すぐに売り払われ、もしかしたら解体されてしまうかもしれない


どうせ今から会社に帰っても会議は終わってる

もう一度……見るくらいはしておいた方がいいような気がして随分長い間帰ってない実家だった屋敷に向かった


午後から何にも予定が入っていないからいいけど、元実家までは電車で40分もかかった
しかも駅からも少し歩く

見慣れた町並みは何も変わりなく、大きな家が多い住宅地は人通りも少ない

見覚えのある制服を着た学生の自転車に追い抜かれ胸がクッと詰まった


同じように毎日往復した道………その先に大きな楠の木が相変わらず大手を広げ、散ることの無い常葉を繁らせていた


雑草一本生えていない綺麗に手入れされた庭には会社のレクサスが止まっている


誰か……渡辺辺りが早速不動産屋でも連れて見積でも依頼しているのかもしれない

なるべく音を立てずに玄関の扉を開けた



入口には一足だけ男の革靴が残されている

広いリビングには誰の姿も見えないが、昼間ではまるで役にたっていないシャンデリアに明かりが灯っていた

片付いた部屋の中はもう既に他人の顔をしている
ぐるっと見回すと階段の裏側にポッカリ空いた暗い通路が目に入った


「何だあれ…………」

何年もここに住んでいたがそこに何かあるなんて知らなかった、ただの壁だった場所に小さな扉が口を開けている

「これは………」

屈んで中を覗くと扉を潜れば中は普通に歩けるくらいの高さはある



足を踏み入れると奥は明るい


二三歩足を進めると突き当たりの左側から人の気配を感じた






密やかな……しゃくり上げたような息遣いが聞こえる



…………ぅ……………っ……


誰かが泣いている?


進んでいいものかと躊躇した足が止まった

声をかけることは出来ない、してはいけないような気がする、息をする音が聞こえてしまいそうでくっと喉を詰めた



……………ぁ………ハァ………



ふっと耳を掠めた小さな声にドキーンと心臓が跳ねた

衣擦れの音と……これは……

誰かの喘ぎ声?


一人ではない……確かに二つの息遣いが聞こえる


………誰かがこんな所で体を合わせている……

ドッと冷や汗が吹き出た

他人のそんな場面を……意図してないとは言え密かに覗き見している気分になり何故か後ろめたい


何故こんな場所でとは疑問に思う程余裕が持てなかった


気付かれてはいけない………

体を返す事が出来ずにそうっと後退りした


もうすぐこの最悪の空間から開放される……足が扉の境目まで辿り着いた瞬間………


耳についた喉の奥に詰まったような声にビクッと体が跳ねた




今聞こえた吐息に混じった声


よく知ってる……


そんな事がある筈がない……違う………


あ…………ぅ……



体の細胞がザワッと上下したように揺れ、立っている足元がグラリと縺れた

壁がグルグル回って天井と床がどっちがどっちかわからない



倒れてしまわないように壁に手を付き、まだ収まらない足が地についてないような感覚に目を閉じた


……………ぁ…………あ……う……

ハァ……っ……あ……

肌が合わさって擦れる音、無垢の木で出来た床が小さく軋みゆっくり動く気配……

手足が絡まり体が擦り付けられる様子が手に取るようにわかる


ドクン……ドクン……と心臓が大きく音を立て、そのまま飛び出して来そうだった

走って逃げたい……

聞きたくないのに床にピッタリと吸い付いた足は粘った何かに囚われたように動かない



………っ……ハァあっ………ああ!


一際高く上がった声にビクンと肩が跳ねた


間違いない…………

押さえられないこの声は………


……雪斗だ……



息が出来ない
吸っても吸っても肺に入ってこないような気がする
全身が心臓になったように手の先まで脈打っているようだ


………ぅあ………もう…………ハァ……

……ああ!……あ……



こんな所にいたくない、逃げ出しいのに立ち去ることができない、せめて耳を塞げばいいものをギュッと固く目を瞑り全身を耳にしてしまう
噛み締めた唇はそのまま噛みきってしまいそうだった


……う……

……ハァ…っ……

……ああ!…あっ………あぅ……ハァあ………んぁ…

間延びした厭らしい湿った音がヌチャリ……ヌチャリと聞こえ、目の前で挿入の出し入れが見えるようだ

……だって……知っている……



……っ…………社長………


その囁き声に耳を疑った………内臓が床に抜け落ち空っぽになったような気がする…



直ぐ側……そこの突き当たりの先で雪斗を抱いている、あと数歩前に進む事が出来たら見えてしまう、息遣いまで聞こえる距離だ


足元にポトンと水滴が落ちて自分が泣いている事に気が付いた

踏み込んで雪斗を取り返したい
殴り付けて罵声を浴びせ怒鳴り散らして……


雪斗は自分のものだ
誰にも渡せない自分だけのものだ


誰か他の奴だったらただ悲しいだけだったかもしれない……

相手は………



緑川だ………



悔しかった、腹が立った、悲しかった

自分の足を手で持ち上げて床からベリッと剥ぎ取りそっと通路から階段下の出口に出た


戸に掛けた手が震えている

通路を抜け出るとあんなに暗いと思っていた室内が明るく感じた

玄関に残された靴を今見ると確かに見覚えがある
下を向くと床にまたポタリと涙が落ちた


少し足を持ち上げるのも重い
床についた足の先から大事な物が吸いとられていくようだった





抱いている間、雪斗は一度も目を見なかった

追ってくる何かから逃れるように官能を貪り、自分の中に閉じ籠っていた、体を重ね絡み合っていても一人でいるような気がした



雪斗はシャツの中に片腕を残し手足を放り出して動かない

胸を開いたまま仰向けで転がっている

壁に向けられたどこも見ていない目は、今にも消えてなくなってしまいそうな程儚い

裸の胸には所々に赤い染みが無数に見えた

それは緑川がセックスをする時の悪い癖で梨央にはいつも文句を言われる

部屋の隅に置いてあったピンクと水色の二枚の毛布を雪斗の下腹に掛け、頬から首………胸に指を滑らせ脇腹の傷跡で止めた


こんな事を言ったら佐鳥に殴り飛ばされそうだが………白く透明な肌、感度のいい体……男を抱いた気分じゃない

佐鳥が執着するのがわかる

男を知らない佐鳥は雪斗の体にまだ未開発な場所を残していた、どこに触れても動かす手に反応が直に伝わり……愉しんだ


名残惜しいような気がして胸の粒に唇を落とすと

やっと雪斗の目に焦点が戻った



「…………悪かった………」


雪斗はそう言ってまた宙に視線を戻してしまった



「……社長………………」

何の謝罪かわからない、謝るのははむしろこっち………こんな風に抱くべきじゃなかった
雪斗に欲情した訳じゃないが何かに打ちひしがれた雪斗を包む手段を持っていなかっただけだ


「先に………帰っててくれないか?」

雪斗は毛布をたくしあげて頭まで潜り、ゴソゴソと体を丸めた

もう関わるなと言われているようだった

「夕方……また迎えに来ます」



「夜でいい……」

「……はい……」

スーツのジャケットに腕を通しネクタイをきっちり真ん中に定めてから小部屋の通路を戻った

扉を閉めると中から開くのかどうかがわからない、拳ひとつ分開けたまま外に出て後ろを振り返った


隠し扉の向こうからは何も音がしない
胸に溜まった言いようの無い後悔に、心を押し潰されそうになり早足でレクサスに向かって屋敷を出た





緑川が一人で車に乗り、敷地を出ていくのを遠くから俯瞰で見ているような気持ちでただ目に写していた


ここは子供の頃から暮らした家だ

誰にも会いたくない、顔を見たくない
話したくない

子供の頃から縮こまりたい時によく来た屋敷の北側にある外壁の凹みにぼうっと腰かけていた

多分昔の燃料置き場だったのか、雨もかからず風通しがいい……外からも見えにくい


緑川が一人で帰ったということは中にはまだ雪斗が一人で残っていると言う事……



頭は空っぽだったが自然と棒のようになった足が体を持ち上げた


今は忌まわしく思える扉にふらふらと向かった

何も息を潜める必要はない
でも体が自然に音をたてないように動いてしまう

今までは何も考えられないでいたが、体を動かすと急に生々しくさっきの衝撃が甦り吐きそうになった


……………無理矢理だったのかもしれない


雪斗は初めて体を重ねた時もそうだった

ハッキリと抗わない
過呼吸を起こすほど怯えていたにも関わらず最初は同意していると思っていた

緑川の顔が頭に浮かぶと胃がひっくり返ったように苦しくて前屈みに体を折って腕を巻き付けた



少しだけ開いた小さな扉に手を掛けたが引くには勇気がいった、またドクドクと大きく心臓が波打ち、行きたくないが………足が止められない

今はやめた方がいい
………そう言ってる





コツンと固い靴音が耳に入った

緑川が戻ってきたのかと顔を向けるとそこに立っていたのは青い顔をした佐鳥だった

裸の体にシャツを羽織っただけでボタンは止まっていない、肩から毛布を掛け壁に凭れて戸棚の上をぼうっと見ていた


一目見れば何をしていたか……わかってしまうが今はどうでもよかった


「何しに来た………」



「雪斗………」

「出ていけよ」



「ここに……何故……」

「お前こそ何故ここにいる」


佐鳥の顔が苦しそうにグニャリと歪んだ、そんな顔を見たくない、話したくない、一人にして欲しかった




「……や…りだったと………ってくれ」


………無理矢理だったと言ってくれ

絞り出したような声は震えて言葉になっていないが充分伝わった

「帰れよ」

「雪斗!」

「俺は誰とでも寝るんだよ、知ってるだろ……」
「嘘をつくな!」

「嘘じゃない……見たらわかるだろう」



苦しそうに顔を歪めているくせに雪斗の口元が無理矢理笑った

シャツから覗く裸の胸に鎖骨の下と右の小さなピンク色をした粒の横に毒々しい赤い斑点が見える

そこに緑川が口をつけたのかと思うと頭が沸騰した


「嘘だ!」

「出ていけよ!!お前が……お前がここに入るな!」

話を聞きたかっただけだ
嘘でもいいから無理矢理だったと聞きたい

背中を向けようとする雪斗の腕を引くと思いっきり振り払われた


「触るな!………今の俺に触るな!!」

「雪斗!」

振りでも何でも無い正面からの拒否に髪が逆立った、押さえつけたい感情が抑えられず腕を伸ばすと逃げるように立ち上がった雪斗の平手が頬を打った

血が頭に登って視界が狭い、出て行けと押し返す雪斗の体を壁に押し付け、暴れる雪斗の首を動けないように縫い止めた



「離せ!!」


「誰でもいいんだろ?」

「!!」

ギリッと歯を鳴らし壁を蹴った勢いで肩で跳ね除けられ捕まえていた雪斗に離してしまった



「選ぶさ!」

「選んでない…」

雪斗の体に巻き付いていた毛布が暴れた体を見放して落ちていった

シャツ以外何も身に付けていない
キスマークは胸だけじゃなかった、腰……内腿……

頭がまっ白になって激高に興奮した体が疼いて止められなくなった


「あっっ!……」

佐鳥の膝がドシッと足を割った

逃げた背中から回された腕に片足を持ち上げられいきなり後孔にグイっと圧がかかった


「……つぁっ……ああ!!」

自分の体重が容赦なしに無理矢理門をこじ開け思わず悲鳴が口から漏れた


「佐鳥っっ!!……あっ……!」

胸と腰に回された腕から逃れる事が出来ない
耳元に顔を埋めた佐鳥の熱い吐息がかかり密着した背中でドクドク心音が同調している


佐鳥は逆上している

普通ならこんな真似はしないだろう

声をあげても聞こえていない


立ったまま半ば佐鳥の腰に乗せられドンっと突き上げられると足が浮く

「あっっ!…」

内蔵を抉られているように深い

汗が吹き出てきた
すがり付く壁には掴む所が何処にもない

ズン……ズンと佐鳥の腕の中で体が跳ねて歯を食い縛るしかない

体勢が苦しい……立っていられない
こんな真似をされてもまだほんの一時間しか経っていないセックスの名残で、刺激され敏感になっていた性感帯が反応してしまう

痛みは昇り過ぎた絶頂に変わり耐えられない射精感が押し寄せて来た

「あ……ぐっ……」

「ああ!」

喉の奥から漏れた声が揺らされる振動でぶれる

倒れて何もかも放棄したいのに足が床に触れているだけで力が入ってない

どっと前に押し出されるような衝動に目の前が白くなり、ふぅっと現実感が薄れていく……天井を見上げてもぼんやり遠い……



佐鳥の手が前を乱暴に覆った
ギュッと締められて突き上げられる度に扱かれる

自分で立っていないと思っていたが体から力が抜けるとつんのめった

ズルズルと繋がったまま崩れ落ちても腰を突き上げられる



「あ!……」

下半身にしか神経がないのかと思うほど全部を持っていかれ、押し寄せる絶頂に抗うのはもう無理だ

「……っ……んぁ……ああ…あああっっ!!んハァあ!…」


「ぅあ…」

「あ……ハァ…」


無理矢理……体に溜まったどうしようもない塊を吐き出した、内腿に生ぬるい感触が伝い落ちて………もうどっちがどっちなのかわからない

消えてなくなりたい……そう思ったのは人生で二度目だった




乗り上がっていた雪斗の体が震えていた


「雪…………」

顔を覗き込んで言葉に詰まった

雪斗は天井を見つめたまま涙を流していた


あの雪斗が泣いている………




「俺…………」

「俺は物じゃない……」


「違っ…………」

「ヤリたいだけならせめて断ってくれ……」

「……………………」


「………出て…行ってくれ…………頼むから……」

雪斗は両腕で顔を覆い肩を揺らした
堪えきれない嗚咽が漏れてくる


「…俺を……許さなくて……いいから……」

「どっちでもいい……早く……消えろ……」


何も言えなかった
身体に出来た引っ掻き傷、赤く痣になった手首……雪斗の太腿を伝う二人分の精液には血が混じっている

「……ごめん……………」


スーツのジャケットもネクタイもしたままだった
凌辱の後はチャックが下りたズボンだけ

自分の所業にゾッとした




何という事をしてしまったのか……………


小部屋の中は日が落ちて少し薄暗くなってきている
暖房はどこにも見当たらない

雪斗の体に毛布を掛け直して黙って戸口に向かった

通路への口で振り返ると雪斗は顔を隠したまま動かない
ふと部屋の隅に置きっぱなしになっていた細長いソフトプラスチックのボトルが目に入った


雪斗は顔も見たくないと………きっと思ってる
それだけの事をしてしまった

プラスチックのボトルを拾い、足早に屋敷を出た




佐鳥の足音が遠ざかり………やがて何も聞こえなくなった

シンと静まり返った部屋は高い天井から音の無い深淵が降って来るようだった


急に進んだ季節は夕方から日の落ちるスピードを増し時間の感覚が狂わされる

今何時なのかはわからないが窓から差しこむ光がオレンジ色を増していた

日が落ちて暗くなると緑川が迎えに来てしまうかもしれない



もしかしたら届くかもしれないと腕を上げた



「これで………もういいかな…………」

流れ出る涙が止まらない……

佐鳥にも緑川にも悪い事をした
多分二人とも涙の訳を誤解している


「ごめん…………でも………これで許して……」


伸ばした腕を拾い上げてくるものは何もない

いつも一人きりなのだから……それは当然の事だった
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