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「佐鳥さん………復活しませんね」
「ああ………そうだな………」
木下と松本は浄水施設のプレゼン資料を報告書と共にファイリングしながら窓際から動かない佐鳥を見て溜息をついた
「大手との競合は最初からわかっていたはずだ、何回同じ目にあっても何の対策も出来ていない事に呆れる」
静かで辛辣な社長の叱責には返事すら出来なかった
佐鳥はチームリーダーを外された上減給、木下と松本は報告書を兼ねた始末書を書けと言われたが、責任の分担を申し出た松本は、"責任を負ってないお前に何が出来る"と社長から一喝され冷や汗をかいた
普段の社長は無口で業務に口出しする事は稀だった、特にまだ入社したばかりの松本は社長との接点がなく、何故みんなが社長を怖がるのかわかっていなかった
「怖い」の意味を取り違えていた
怖いのは社長の持つ権力じゃない、やるべき事をやる、当たり前の事を当り前に要求される怖さに失敗出来ない重圧と焦燥感を初めて感じた
「社長………凄い人ですね……」
「怖かっただろ、どうせならガツンと怒鳴って欲しいよな」
浄水のプロジェクトは一旦集中事業からは外れ、営業全員が今作っている資料を持って回る事になる
木下はファイル留めをポチンと嵌めて窓の外を眺める佐鳥に目を向けた
チームに向けた罰の一環なのかもしれないが社長は具体的な給料の額を口にして減給処分にすると言った
あの社長に限り本気で"社長の息子"手当が付いてると思っていた訳じゃないが気まずくなった関係での発言を思い出すと未熟な自分が恥ずかしくなった
「同じ責任を負いたかったな……」
「俺もそう思います」
処分が偏るという事は序列で負けているという意味を持つ、新入社員の松本と同じ処分なんて手取りが100万違うより屈辱だった
一年前に具体化した繊維部門から膨らんだ海水の淡水化にはずっと関わってきた、リーダーを下ろされ、主導では何も出来ないがそんな事はもうどうでも良かった
処分でも何でもしてくれたらいい
何ならクビにでもしてくれたら楽かもしれない
………雪斗の姿が見えない
斬るような冷たい目をした全く知らない男……多分あれが本当の雪斗
手の中にちょっとくらいは入っていると思っていた
何故追わなかったのか……
いざとなったら手加減しないその冷徹さにびびって近寄れなかった
それでも……連れて帰れば良かった……
俺はどんな顔をして雪斗を見たのだろう
あの時二人の距離が物凄く遠かった、身体が引けて驚きで固まった顔に浮かべてしまった恐れを見破り………見限ったのかもしれない
目の前の男は味方なんかじゃないと……
「だああっっ!!」
「うわあ!何ですか!ビックリした……佐鳥さん…乱心ですか?……」
「松本!営業に出るぞ」
考えても仕方ない、雪斗は敏感に人の感情を汲み取る、肌で感じた違和感を一瞬で読まれてしまったのだ
「え?今?」
「ああ…行くぞ」
「佐鳥さんはどこも担当してないでしょう」
「どこでもいい、新規を山程開拓してやる」
「浄水はどうするんですか?」
リーダーを外されただけでまだ浄水は担当出来る、1番先に契約を取ればいいだけの事
「そんなもん片手間に出来る」
タップリ資料も知識も用意してある、どんな事態になっても対応する自信があるのだ
松本の首に手を回してエレベーターに引きずり込んだ
まず謝ればいい………帰ってきたらちゃんと話して想いを伝える
……………雪斗が必要なんだと……
「俺はまだ担当の営業先との約束がありますが……」
「連れていけよ俺を、どうせ松本はまだお使いだろ?」
「そりゃ……そうなんですけど………」
緑川にも佐鳥を頼むと言われているが実は松本も忙しい
佐鳥の言った通りお使いばかりだが、営業補助とは体のいい使いっ走りで、空きの確認もせず営業達がそれぞれ勝手にあれをしろこれを持っていけと手一杯だった
どうしても間に合わず自腹でタクシーに乗らなければならない事もよくあり佐鳥を付き合わすなんて気が引ける
松本が入社した春、佐鳥は既に浄水施設の専属担当に付いていて仕事っぷりは殆ど知らず、取り敢えず動き出してくれたのなら……と思っていたらとんでもなかった
「佐鳥さん!勝手に入るなんて……」
「約束してないんだから仕方ないだろ」
「それなら約束を取り付けてから………佐鳥さん!!………」
"新規で仕事を取ってやる"ってこういう事……ダイレクトアタックは初めての経験だった
面識も無ければ需要のある無しすらわからない、出入り口にセキュリティがあるビルにも不法浸入と言えるやり方で中に入り込みしれっと約束があった振りまでする
アポ無し飛び込み営業は頭で想像していたよりずっと恐ろしく、度胸と厚顔と知識と社交術をフル装備していなければ挨拶すらままならない
冷や汗が引いては吹き出し、引いては吹き出し、振り回されて佐鳥への同情がすっかり消えてなくなった頃、海岸線に続く馴染みのない路線の電車に揺られていた
「今度はどこ行くんですか?俺はもう神経を削られてヘトヘトです」
佐鳥の足はしっかり目的を持ってどこかに向かっているようだった
「とりあえず開発に顔を出して謝ろう」
「え?!、繊維の研究所に行くんですか?うわぁ後回しにしたいですね……敷居が高い……」
「そうだけど………早めに行っといた方がいいだろ」
「それはそれで怖いです」
営業先の知らない人に睨まれるのも怖いが、開発関係はどこに行っても、何も無くても怖い
TOWAの工場は海沿いの工業地帯にある
会社の規模からすると敷地は結構広いが、周りにあるドーム数個分はある広大な敷地に巨大な工場を構える大企業と比べると小ぢんまりしていると言わざるを得ない
原料倉庫と科学工場2棟、研究所が3棟、食堂や休憩所を兼ねた事務棟、駐車場から全て見渡せる
警備も受付もない入り口にはヘルメットが積まれた箱が電話ボックスのような掘っ建て小屋の前にポツリと置かれているだけだった
敷地には可燃物も多く、過去にタンクの中に清掃に入り一酸化炭素中毒で倒れたり、裸のリフトから転落したり、事故も多い為ヘルメット着用は義務づけられている
敷地内にあるプレハブに毛の生えたような建物が繊維部門の開発拠点兼事務所である
責任者は頭髪が地肌を見放して寒々しいくせに残った髪の毛を伸ばしている博士とでも呼びたい風貌をしている真島という偏屈な課長だ
何をするにもオタク気質で以前カブトムシに凝って事務所が飼育箱で満ぱいにした事がある
「結果が全て」を体現しているような人で仕事は出来るので誰も、社長さえも口出ししない
二人いる筈の助手は休みなのか"また"追い出したのか真島一人しかおらず、閑散とした部屋には今もまだ5ケース程並んでいた
「お久しぶりです、真島課長」
真島はチラリと顔を上げただけで目の前の顕微鏡にまた目を落とした
「この度は、あの……また契約を取れず……すいませんでした」
「俺の仕事は開発だけ、売って金に変えるのは本社の仕事だろう、俺には関係ないよ」
「実績の無いTOWAの名前では大型の投資を引き出すのは難しく大手に……」
「何度も言っただろう、小規模の海水浄化ならうちの製品より他社の方が利便性に長けている、うちが勝ってる価格差のアドバンテージも縮まって見えるだけだ、規模が大きくなければ戦えない」
「それは……わかってます」
研究費を出しているのは会社なのだから詫びる場所を間違ってると真島は一刀両断、言い訳もさせてくれない
「そんなどうでもいいことは置いといて……これを見てみろ」
「何ですか?」
「いいから見ろ」
とても企業の開発にあるとは思えないチープな顕微鏡が写すのは穴が綺麗に並んだ細胞のような物、どうやら繊維らしいが……それを見て何をどう判断評価しろというのかわからない
松本と交代しても反応は同じだった
「えーと……これは……」
「いいだろう?一切の毛羽立ちも無いし導風板みたいに……ってわかってないか……」
「はい……」
結局………電車で一時間、その後徒歩15分かかって工場まで来たのに、今からこれを見に来る客がいるから邪魔だとすぐに事務所から放り出されてしまった
「帰りますか…………」
「一応謝れたしな………ここにいてもしょうがない」
だだっ広い工場の敷地は門まで遠く太陽を遮る物は何もない、似たような工場が集るこの周辺の道にも影を作るような建物は見当たらず駅まで炎天下を歩かなければならない
「干からびます、タクシーを呼びましょう」
「馬鹿、ここにタクシーが着くまで待つくらいなら歩いた方が早い、贅沢言うな」
「佐鳥さんは昨日飲みに来てないからいいけど俺は二日酔いなんです、俺が払いますからいいでしょう」
「お前に払わすなんて出来る訳ないだろ、歩くぞ」
減給されて貧乏なくせに、とブツブツムカつく事を言いながら、スマホを開いてタクシーを呼ぼうと構える松本を置いて、工場の出口に足を向けると、舗装されていない駐車場に砂煙を立てて車が入って来た
空色をしたボロい旧型のビートルはもっと建物の近くまで行けばいいのに、広い駐車場の真ん中に止まり………ドアの中から出てきた男は立ち上がるとニュっと車体の屋根を追い越した
髪の毛をピッシリ後ろで束ねスーツにはちょっと黒すぎる肌に整った顔
まさかの木嶋だった
「あいつ………何でこんな所にいるんだ………」
ここは間違いなくTOWAの私有地で偶然はない、全長12メートルはある大型トラックがグルリとUターン出来る敷地は午前中に搬入と搬出を終え今は従業員の車やバイクがポツポツあるだけで隠れる場所は無い
顔を合わしたくない
唯一の遮蔽物………つまり松本の背中に顔を鞄で隠して小さくなった
「………………何をしてるんですか……」
「しぃっ!」
黙れと言われても……
これで佐鳥が隠れているつもりなら、恥ずかしくて笑えもしない
車から降りてきた男は雰囲気や服装がTOWAの関係する仕事先と関係があるとは思えな別人種だった
どいつもこいつもデカくて隣に並びたくない
真島が待っていた客に違いないが佐鳥も知っているらしい、知らないでこんな事をしているなら縁を切る
「何してるの?佐鳥君」
……………当然バレてる……バレるわ…
ただでもデカいし丸見えなんだから…………
名前を呼ばれて観念したのかスッと立ち上がった佐鳥は何事も無かったように咳払いで仕切り直し、今気付いたような振りをする間抜けっぷりは面白すぎてもうどう突っ込んでいいかもわからない
「偶然ですね木嶋さん………こんな所でお会いするとは思ってませんでした」
「俺はそのうち会うと思ってたよ、書類に書いてあった勤め先が真島さんと同じだったからね」
「真島課長と知り合いなんですか?」
「ちょっとね…………ふうん……」
エグゼクティブな匂いのする背の高いイケメンは、感心したように佐鳥をマジマジ見つめてにやっと笑った
「佐鳥くんは俺の事を知ってるんだね」
「……雪斗があの日のうちに調べて……教えてくれました」
「…………雪斗くんが?……」
一瞬真顔になった木嶋はふっと頬を緩めて真っ直ぐに伸びた綺麗な眉を下げて笑った
「あの子は本当に怖いね、いつ気付いたんだろう、俺何か言った?」
「さあね、木嶋さんこそどうしてあの時黙ってたんですか?」
「遊びに来ているお客様に仕事を持ち込むなんて無粋な真似しないよ」
この辺鄙な工場地帯までわざわざ出向いて来た真島の客は間違いなく仕事関係の筈なのに佐鳥は睨んでるし腕を組んでるし……おまけにチッと舌打ちをしてソッポを向いた
「あの……、失礼ですがどちら様でしょうか」
「失礼しました、申し遅れましたがH.W.Dの代表をしている木嶋と申します」
木嶋は銀色の名刺を差し出したが佐鳥は手も出さない、慌てて名刺を取り出して2枚とも受け取った
「ハイパーウィンドの社長?……ですか……あなたが?」
「はい、もしかしたらTOWAさんにお世話になるかもしれないのでその時はよろしくお願いいたします」
「は?……うちと?」
名刺交換をしたのだから既に個人を越えて会社同士の話になっている、やさぐれた態度を変えようとしない佐鳥と木嶋の間に割って入った
「佐鳥さん!どうしたんです、そんな……」
「いいんだよ、松本さん、俺と佐鳥くんは友達なんだ、ね?」
「とっとと海に帰ったらどうです」
「ハハハ、そうしたいけどね…………悪いけど真島さんとの約束があるんだよ、話は今度ゆっくり……」
「あ……すいません、引き留めてしまって」
ついでに佐鳥の態度も誤りたかったが時計を確かめた木嶋は小走りで事務所の方に行ってしまった
「ハイパーの代表って……あんなに若い人なんですね、それにしてもヒヤヒヤさせないでください、何ですか今の態度、世話になるかもしれないって言ってるのに」
「それだよ……」
「何がですか?」
グッと眉間に皺を寄せ険しい表情をした佐鳥は、手にしているだけで被っていなかったヘルメットを椅子代わりにして座り込んでしまった
「あいつが出てくるのを待つぞ」
「待つ?ここで?どうしてですか?」
ムスッと口を閉じた今の佐鳥は、呆れた珍行動を取るマヌケバージョンかキビキビ営業をこなすスマートバージョンかわからない
どれくらい時間がかかるかもわからないのに炎天下に座り込む辺り、間抜けバージョンの可能性もあるがフワついた雰囲気が消えてなくなってる
営業職は奥が深い、「必要ない」と言われてあっさり引き下がっていては仕事は取れない
取引先を回って言われたことをただこなすだけの営業もいるが出来るなら緑川のように打って出たい
緑川について行った時はあまりに流れがスムーズすぎて分かりにくかった
緑川が極上だとすると佐鳥は上なのだろう、断られた後も会話を切らずに、雑談の糸口からもう一度訪れる理由を作ってしまう佐鳥の図々しさは一日一緒に回って勉強になった
何か考えがあるなら従うしかなかった
鞄で佐鳥の頭に影を作り小一時間程熱い中待っていると木嶋が繊維の研究室から出て来ると驚いたように走り寄ってきた
「何だよ………まだいたのか」
「聞きたいことがありましてね」
「いいけど俺は次の約束があるから車で走りながらでいいか?」
チョンと指で触れば漫画のようにバラバラ崩れてしまいそうなカブトムシ型の古い車を指さした
つまり一緒に乗って帰れと誘われてる
「ちょっと話を聞くだけですよ、時間は取りません」
「じゃあ無理、本当に時間が無くてね、こいつスピード出ないから間に合わなくなる」
ニコニコしながらビートルのドアを開けてどうぞと手招きされ、嫌がると思った佐鳥は一枚しかない扉から長い体を折って狭い後部座席に収まった
「真島と何の話をしてたんですか?」
「品評会で知り合ってね……カブトムシの話で盛り上がったんだよ」
ビートルの立てるバタバタうるさいエンジン音と震動で普通の会話は無理だった、殆ど怒鳴るくらいのボリュームになる
全く機能していないサスペンションは地面の凹凸を直接体に伝え、古い車の乗り心地は最悪で狭い車内は足がつかえて拷問に近い
「何でこんな車に乗ってるんですか」
「男の浪漫だろ、この美しいフォルム最高じゃないか」
「ダイビングショップで乗るならいいですけど仕事の時はどうかと思いますよ」
「佐鳥くんはわかってないな…………」
木嶋は延々とビートル自慢を始めたが誤魔化しに付き合う暇はない
真島はまだ本社も知らない開発途中の何かを木嶋に見せると言っていた、研究者に直接接触するなんてルール違反を通り越して犯罪に近い、シレッと技術を盗まれてしまいそうで見逃す事は出来なかった
「車の話はもういいです、開発に入り込んで研究者に取り入るのはやめて下さい、用事があるなら営業通してもらわないと困ります、産業スパイとして訴えますよ」
「え?……」
松本は狭い後部座席で二人の話を聞いていたが佐鳥が懸念していた事には全く思い至ってなかった
「そんなんじゃないよ、うちには素材から作れるような施設と技術はない、今日はただ欲しい素材の話をしたら真島さんに呼ばれただけ、営業を通せって言われても……」
「それなら俺が担当になります!もしその話が実現したらうちにもメリットが大きいですよ、佐鳥さんそれならいいでしょう?」
「おお、有り難いね、佐鳥くんもそれでいい?」
「………改めて連絡します、取り敢えず勝手に研究所に行くのはこれで最後にしてください」
前から目を離しても全く問題がないくらいのスピードで進む車を上機嫌に運転しながら木嶋が笑った
今走るスピードが全力なのか、意外にも木嶋がのんびりしているのか、窓から見える大型トラックのタイヤが真横で唸りイライラと追い抜いていく
盛り上がったビートル独特のデザインはまともに風を受け吹き飛びそうだ
延々と途切れたビートル自慢聞かされながらの高速道路は恐怖しかなかった
ナビも案内も無しにTOWAの所在地に続く道を走っていくという事は真島と趣味の話で盛り上がっただけだなんてやっぱり口からの出まかせ………ちゃっかり本社を見据え調査されている
偶然とは言え木嶋の動向を掴めたのはいいが上手いこと操られたようで釈然としない
身を縮めて狭い運転席に収まる木嶋が目に入らないよう外のつまらないビル群を眺めていた
「停めて!!木嶋さん!!」
「へ?」
バッと突然振り返って身を乗り出した佐鳥が大声で叫んだ、止まれと言われても車の流れもあるし道の真ん中には止まれない
「早く!!」
「待て待て無理言うな」
ノロノロと路肩に停まるまで200メートルは進んだ
「先に帰ってて下さい、木嶋さん!また連絡します!!」
止まるか止まらないかのタイミングで佐鳥が車から走り出て今来た道をダッシュで戻って行った
「速えぇな…………あいつ」
「佐鳥さんは自称ですが10秒台前半のタイム持っているらしいです」
「いきなり何だよ」
「さあ……佐鳥さんは時たま不思議ちゃんなんで……」
「わかるわ……それ…」
それにしても佐鳥は思ったよりも純真、天真爛漫ではなかった、真島に会いに行った先でバッティングしたのは偶然だが、まだ何も進んでいないものの佐鳥の杞憂は半分当たっている
もう少し動いておきたかったが仕方がない、こちら主導ではなくなっただけだがかなりの枷になるかもしれない
松本の顔をチラッとミラーで見て本当に担当がこいつになりますように……と願いながら車を発進させた
流れる景色の中チラッと見えたのは確かに雪斗だった
いつものラフな格好で黒塗りの車の前でスーツの男二人に囲まれ何か話をしていた
「まさか拘束されたんじゃないだろうな……」
あの夜やらかした事は間違いなく傷害だ、被害届が出されていれば警察が関わって来ることも有り得る
全速力で走って戻ったが雪斗の姿はもうどこにも無かった
車を降りてまだ3分も経ってない、周りはオフィスビルが建ち並びどこかに入っとは考え難くつまりはあの黒塗りの車に乗ってどこかへ行ってしまったのか………
ここは会社前の広場まで2キロくらいしか離れてない
「帰って来るつもりだった?……」
オレンジ色の夕日が陰を長くしていた
案外明日の朝には何事もなかったようにしれっとベンチに座っているんじゃないか?
変な心配は思い過ごしだったと笑い話になる
きっと……
「ああ………そうだな………」
木下と松本は浄水施設のプレゼン資料を報告書と共にファイリングしながら窓際から動かない佐鳥を見て溜息をついた
「大手との競合は最初からわかっていたはずだ、何回同じ目にあっても何の対策も出来ていない事に呆れる」
静かで辛辣な社長の叱責には返事すら出来なかった
佐鳥はチームリーダーを外された上減給、木下と松本は報告書を兼ねた始末書を書けと言われたが、責任の分担を申し出た松本は、"責任を負ってないお前に何が出来る"と社長から一喝され冷や汗をかいた
普段の社長は無口で業務に口出しする事は稀だった、特にまだ入社したばかりの松本は社長との接点がなく、何故みんなが社長を怖がるのかわかっていなかった
「怖い」の意味を取り違えていた
怖いのは社長の持つ権力じゃない、やるべき事をやる、当たり前の事を当り前に要求される怖さに失敗出来ない重圧と焦燥感を初めて感じた
「社長………凄い人ですね……」
「怖かっただろ、どうせならガツンと怒鳴って欲しいよな」
浄水のプロジェクトは一旦集中事業からは外れ、営業全員が今作っている資料を持って回る事になる
木下はファイル留めをポチンと嵌めて窓の外を眺める佐鳥に目を向けた
チームに向けた罰の一環なのかもしれないが社長は具体的な給料の額を口にして減給処分にすると言った
あの社長に限り本気で"社長の息子"手当が付いてると思っていた訳じゃないが気まずくなった関係での発言を思い出すと未熟な自分が恥ずかしくなった
「同じ責任を負いたかったな……」
「俺もそう思います」
処分が偏るという事は序列で負けているという意味を持つ、新入社員の松本と同じ処分なんて手取りが100万違うより屈辱だった
一年前に具体化した繊維部門から膨らんだ海水の淡水化にはずっと関わってきた、リーダーを下ろされ、主導では何も出来ないがそんな事はもうどうでも良かった
処分でも何でもしてくれたらいい
何ならクビにでもしてくれたら楽かもしれない
………雪斗の姿が見えない
斬るような冷たい目をした全く知らない男……多分あれが本当の雪斗
手の中にちょっとくらいは入っていると思っていた
何故追わなかったのか……
いざとなったら手加減しないその冷徹さにびびって近寄れなかった
それでも……連れて帰れば良かった……
俺はどんな顔をして雪斗を見たのだろう
あの時二人の距離が物凄く遠かった、身体が引けて驚きで固まった顔に浮かべてしまった恐れを見破り………見限ったのかもしれない
目の前の男は味方なんかじゃないと……
「だああっっ!!」
「うわあ!何ですか!ビックリした……佐鳥さん…乱心ですか?……」
「松本!営業に出るぞ」
考えても仕方ない、雪斗は敏感に人の感情を汲み取る、肌で感じた違和感を一瞬で読まれてしまったのだ
「え?今?」
「ああ…行くぞ」
「佐鳥さんはどこも担当してないでしょう」
「どこでもいい、新規を山程開拓してやる」
「浄水はどうするんですか?」
リーダーを外されただけでまだ浄水は担当出来る、1番先に契約を取ればいいだけの事
「そんなもん片手間に出来る」
タップリ資料も知識も用意してある、どんな事態になっても対応する自信があるのだ
松本の首に手を回してエレベーターに引きずり込んだ
まず謝ればいい………帰ってきたらちゃんと話して想いを伝える
……………雪斗が必要なんだと……
「俺はまだ担当の営業先との約束がありますが……」
「連れていけよ俺を、どうせ松本はまだお使いだろ?」
「そりゃ……そうなんですけど………」
緑川にも佐鳥を頼むと言われているが実は松本も忙しい
佐鳥の言った通りお使いばかりだが、営業補助とは体のいい使いっ走りで、空きの確認もせず営業達がそれぞれ勝手にあれをしろこれを持っていけと手一杯だった
どうしても間に合わず自腹でタクシーに乗らなければならない事もよくあり佐鳥を付き合わすなんて気が引ける
松本が入社した春、佐鳥は既に浄水施設の専属担当に付いていて仕事っぷりは殆ど知らず、取り敢えず動き出してくれたのなら……と思っていたらとんでもなかった
「佐鳥さん!勝手に入るなんて……」
「約束してないんだから仕方ないだろ」
「それなら約束を取り付けてから………佐鳥さん!!………」
"新規で仕事を取ってやる"ってこういう事……ダイレクトアタックは初めての経験だった
面識も無ければ需要のある無しすらわからない、出入り口にセキュリティがあるビルにも不法浸入と言えるやり方で中に入り込みしれっと約束があった振りまでする
アポ無し飛び込み営業は頭で想像していたよりずっと恐ろしく、度胸と厚顔と知識と社交術をフル装備していなければ挨拶すらままならない
冷や汗が引いては吹き出し、引いては吹き出し、振り回されて佐鳥への同情がすっかり消えてなくなった頃、海岸線に続く馴染みのない路線の電車に揺られていた
「今度はどこ行くんですか?俺はもう神経を削られてヘトヘトです」
佐鳥の足はしっかり目的を持ってどこかに向かっているようだった
「とりあえず開発に顔を出して謝ろう」
「え?!、繊維の研究所に行くんですか?うわぁ後回しにしたいですね……敷居が高い……」
「そうだけど………早めに行っといた方がいいだろ」
「それはそれで怖いです」
営業先の知らない人に睨まれるのも怖いが、開発関係はどこに行っても、何も無くても怖い
TOWAの工場は海沿いの工業地帯にある
会社の規模からすると敷地は結構広いが、周りにあるドーム数個分はある広大な敷地に巨大な工場を構える大企業と比べると小ぢんまりしていると言わざるを得ない
原料倉庫と科学工場2棟、研究所が3棟、食堂や休憩所を兼ねた事務棟、駐車場から全て見渡せる
警備も受付もない入り口にはヘルメットが積まれた箱が電話ボックスのような掘っ建て小屋の前にポツリと置かれているだけだった
敷地には可燃物も多く、過去にタンクの中に清掃に入り一酸化炭素中毒で倒れたり、裸のリフトから転落したり、事故も多い為ヘルメット着用は義務づけられている
敷地内にあるプレハブに毛の生えたような建物が繊維部門の開発拠点兼事務所である
責任者は頭髪が地肌を見放して寒々しいくせに残った髪の毛を伸ばしている博士とでも呼びたい風貌をしている真島という偏屈な課長だ
何をするにもオタク気質で以前カブトムシに凝って事務所が飼育箱で満ぱいにした事がある
「結果が全て」を体現しているような人で仕事は出来るので誰も、社長さえも口出ししない
二人いる筈の助手は休みなのか"また"追い出したのか真島一人しかおらず、閑散とした部屋には今もまだ5ケース程並んでいた
「お久しぶりです、真島課長」
真島はチラリと顔を上げただけで目の前の顕微鏡にまた目を落とした
「この度は、あの……また契約を取れず……すいませんでした」
「俺の仕事は開発だけ、売って金に変えるのは本社の仕事だろう、俺には関係ないよ」
「実績の無いTOWAの名前では大型の投資を引き出すのは難しく大手に……」
「何度も言っただろう、小規模の海水浄化ならうちの製品より他社の方が利便性に長けている、うちが勝ってる価格差のアドバンテージも縮まって見えるだけだ、規模が大きくなければ戦えない」
「それは……わかってます」
研究費を出しているのは会社なのだから詫びる場所を間違ってると真島は一刀両断、言い訳もさせてくれない
「そんなどうでもいいことは置いといて……これを見てみろ」
「何ですか?」
「いいから見ろ」
とても企業の開発にあるとは思えないチープな顕微鏡が写すのは穴が綺麗に並んだ細胞のような物、どうやら繊維らしいが……それを見て何をどう判断評価しろというのかわからない
松本と交代しても反応は同じだった
「えーと……これは……」
「いいだろう?一切の毛羽立ちも無いし導風板みたいに……ってわかってないか……」
「はい……」
結局………電車で一時間、その後徒歩15分かかって工場まで来たのに、今からこれを見に来る客がいるから邪魔だとすぐに事務所から放り出されてしまった
「帰りますか…………」
「一応謝れたしな………ここにいてもしょうがない」
だだっ広い工場の敷地は門まで遠く太陽を遮る物は何もない、似たような工場が集るこの周辺の道にも影を作るような建物は見当たらず駅まで炎天下を歩かなければならない
「干からびます、タクシーを呼びましょう」
「馬鹿、ここにタクシーが着くまで待つくらいなら歩いた方が早い、贅沢言うな」
「佐鳥さんは昨日飲みに来てないからいいけど俺は二日酔いなんです、俺が払いますからいいでしょう」
「お前に払わすなんて出来る訳ないだろ、歩くぞ」
減給されて貧乏なくせに、とブツブツムカつく事を言いながら、スマホを開いてタクシーを呼ぼうと構える松本を置いて、工場の出口に足を向けると、舗装されていない駐車場に砂煙を立てて車が入って来た
空色をしたボロい旧型のビートルはもっと建物の近くまで行けばいいのに、広い駐車場の真ん中に止まり………ドアの中から出てきた男は立ち上がるとニュっと車体の屋根を追い越した
髪の毛をピッシリ後ろで束ねスーツにはちょっと黒すぎる肌に整った顔
まさかの木嶋だった
「あいつ………何でこんな所にいるんだ………」
ここは間違いなくTOWAの私有地で偶然はない、全長12メートルはある大型トラックがグルリとUターン出来る敷地は午前中に搬入と搬出を終え今は従業員の車やバイクがポツポツあるだけで隠れる場所は無い
顔を合わしたくない
唯一の遮蔽物………つまり松本の背中に顔を鞄で隠して小さくなった
「………………何をしてるんですか……」
「しぃっ!」
黙れと言われても……
これで佐鳥が隠れているつもりなら、恥ずかしくて笑えもしない
車から降りてきた男は雰囲気や服装がTOWAの関係する仕事先と関係があるとは思えな別人種だった
どいつもこいつもデカくて隣に並びたくない
真島が待っていた客に違いないが佐鳥も知っているらしい、知らないでこんな事をしているなら縁を切る
「何してるの?佐鳥君」
……………当然バレてる……バレるわ…
ただでもデカいし丸見えなんだから…………
名前を呼ばれて観念したのかスッと立ち上がった佐鳥は何事も無かったように咳払いで仕切り直し、今気付いたような振りをする間抜けっぷりは面白すぎてもうどう突っ込んでいいかもわからない
「偶然ですね木嶋さん………こんな所でお会いするとは思ってませんでした」
「俺はそのうち会うと思ってたよ、書類に書いてあった勤め先が真島さんと同じだったからね」
「真島課長と知り合いなんですか?」
「ちょっとね…………ふうん……」
エグゼクティブな匂いのする背の高いイケメンは、感心したように佐鳥をマジマジ見つめてにやっと笑った
「佐鳥くんは俺の事を知ってるんだね」
「……雪斗があの日のうちに調べて……教えてくれました」
「…………雪斗くんが?……」
一瞬真顔になった木嶋はふっと頬を緩めて真っ直ぐに伸びた綺麗な眉を下げて笑った
「あの子は本当に怖いね、いつ気付いたんだろう、俺何か言った?」
「さあね、木嶋さんこそどうしてあの時黙ってたんですか?」
「遊びに来ているお客様に仕事を持ち込むなんて無粋な真似しないよ」
この辺鄙な工場地帯までわざわざ出向いて来た真島の客は間違いなく仕事関係の筈なのに佐鳥は睨んでるし腕を組んでるし……おまけにチッと舌打ちをしてソッポを向いた
「あの……、失礼ですがどちら様でしょうか」
「失礼しました、申し遅れましたがH.W.Dの代表をしている木嶋と申します」
木嶋は銀色の名刺を差し出したが佐鳥は手も出さない、慌てて名刺を取り出して2枚とも受け取った
「ハイパーウィンドの社長?……ですか……あなたが?」
「はい、もしかしたらTOWAさんにお世話になるかもしれないのでその時はよろしくお願いいたします」
「は?……うちと?」
名刺交換をしたのだから既に個人を越えて会社同士の話になっている、やさぐれた態度を変えようとしない佐鳥と木嶋の間に割って入った
「佐鳥さん!どうしたんです、そんな……」
「いいんだよ、松本さん、俺と佐鳥くんは友達なんだ、ね?」
「とっとと海に帰ったらどうです」
「ハハハ、そうしたいけどね…………悪いけど真島さんとの約束があるんだよ、話は今度ゆっくり……」
「あ……すいません、引き留めてしまって」
ついでに佐鳥の態度も誤りたかったが時計を確かめた木嶋は小走りで事務所の方に行ってしまった
「ハイパーの代表って……あんなに若い人なんですね、それにしてもヒヤヒヤさせないでください、何ですか今の態度、世話になるかもしれないって言ってるのに」
「それだよ……」
「何がですか?」
グッと眉間に皺を寄せ険しい表情をした佐鳥は、手にしているだけで被っていなかったヘルメットを椅子代わりにして座り込んでしまった
「あいつが出てくるのを待つぞ」
「待つ?ここで?どうしてですか?」
ムスッと口を閉じた今の佐鳥は、呆れた珍行動を取るマヌケバージョンかキビキビ営業をこなすスマートバージョンかわからない
どれくらい時間がかかるかもわからないのに炎天下に座り込む辺り、間抜けバージョンの可能性もあるがフワついた雰囲気が消えてなくなってる
営業職は奥が深い、「必要ない」と言われてあっさり引き下がっていては仕事は取れない
取引先を回って言われたことをただこなすだけの営業もいるが出来るなら緑川のように打って出たい
緑川について行った時はあまりに流れがスムーズすぎて分かりにくかった
緑川が極上だとすると佐鳥は上なのだろう、断られた後も会話を切らずに、雑談の糸口からもう一度訪れる理由を作ってしまう佐鳥の図々しさは一日一緒に回って勉強になった
何か考えがあるなら従うしかなかった
鞄で佐鳥の頭に影を作り小一時間程熱い中待っていると木嶋が繊維の研究室から出て来ると驚いたように走り寄ってきた
「何だよ………まだいたのか」
「聞きたいことがありましてね」
「いいけど俺は次の約束があるから車で走りながらでいいか?」
チョンと指で触れば漫画のようにバラバラ崩れてしまいそうなカブトムシ型の古い車を指さした
つまり一緒に乗って帰れと誘われてる
「ちょっと話を聞くだけですよ、時間は取りません」
「じゃあ無理、本当に時間が無くてね、こいつスピード出ないから間に合わなくなる」
ニコニコしながらビートルのドアを開けてどうぞと手招きされ、嫌がると思った佐鳥は一枚しかない扉から長い体を折って狭い後部座席に収まった
「真島と何の話をしてたんですか?」
「品評会で知り合ってね……カブトムシの話で盛り上がったんだよ」
ビートルの立てるバタバタうるさいエンジン音と震動で普通の会話は無理だった、殆ど怒鳴るくらいのボリュームになる
全く機能していないサスペンションは地面の凹凸を直接体に伝え、古い車の乗り心地は最悪で狭い車内は足がつかえて拷問に近い
「何でこんな車に乗ってるんですか」
「男の浪漫だろ、この美しいフォルム最高じゃないか」
「ダイビングショップで乗るならいいですけど仕事の時はどうかと思いますよ」
「佐鳥くんはわかってないな…………」
木嶋は延々とビートル自慢を始めたが誤魔化しに付き合う暇はない
真島はまだ本社も知らない開発途中の何かを木嶋に見せると言っていた、研究者に直接接触するなんてルール違反を通り越して犯罪に近い、シレッと技術を盗まれてしまいそうで見逃す事は出来なかった
「車の話はもういいです、開発に入り込んで研究者に取り入るのはやめて下さい、用事があるなら営業通してもらわないと困ります、産業スパイとして訴えますよ」
「え?……」
松本は狭い後部座席で二人の話を聞いていたが佐鳥が懸念していた事には全く思い至ってなかった
「そんなんじゃないよ、うちには素材から作れるような施設と技術はない、今日はただ欲しい素材の話をしたら真島さんに呼ばれただけ、営業を通せって言われても……」
「それなら俺が担当になります!もしその話が実現したらうちにもメリットが大きいですよ、佐鳥さんそれならいいでしょう?」
「おお、有り難いね、佐鳥くんもそれでいい?」
「………改めて連絡します、取り敢えず勝手に研究所に行くのはこれで最後にしてください」
前から目を離しても全く問題がないくらいのスピードで進む車を上機嫌に運転しながら木嶋が笑った
今走るスピードが全力なのか、意外にも木嶋がのんびりしているのか、窓から見える大型トラックのタイヤが真横で唸りイライラと追い抜いていく
盛り上がったビートル独特のデザインはまともに風を受け吹き飛びそうだ
延々と途切れたビートル自慢聞かされながらの高速道路は恐怖しかなかった
ナビも案内も無しにTOWAの所在地に続く道を走っていくという事は真島と趣味の話で盛り上がっただけだなんてやっぱり口からの出まかせ………ちゃっかり本社を見据え調査されている
偶然とは言え木嶋の動向を掴めたのはいいが上手いこと操られたようで釈然としない
身を縮めて狭い運転席に収まる木嶋が目に入らないよう外のつまらないビル群を眺めていた
「停めて!!木嶋さん!!」
「へ?」
バッと突然振り返って身を乗り出した佐鳥が大声で叫んだ、止まれと言われても車の流れもあるし道の真ん中には止まれない
「早く!!」
「待て待て無理言うな」
ノロノロと路肩に停まるまで200メートルは進んだ
「先に帰ってて下さい、木嶋さん!また連絡します!!」
止まるか止まらないかのタイミングで佐鳥が車から走り出て今来た道をダッシュで戻って行った
「速えぇな…………あいつ」
「佐鳥さんは自称ですが10秒台前半のタイム持っているらしいです」
「いきなり何だよ」
「さあ……佐鳥さんは時たま不思議ちゃんなんで……」
「わかるわ……それ…」
それにしても佐鳥は思ったよりも純真、天真爛漫ではなかった、真島に会いに行った先でバッティングしたのは偶然だが、まだ何も進んでいないものの佐鳥の杞憂は半分当たっている
もう少し動いておきたかったが仕方がない、こちら主導ではなくなっただけだがかなりの枷になるかもしれない
松本の顔をチラッとミラーで見て本当に担当がこいつになりますように……と願いながら車を発進させた
流れる景色の中チラッと見えたのは確かに雪斗だった
いつものラフな格好で黒塗りの車の前でスーツの男二人に囲まれ何か話をしていた
「まさか拘束されたんじゃないだろうな……」
あの夜やらかした事は間違いなく傷害だ、被害届が出されていれば警察が関わって来ることも有り得る
全速力で走って戻ったが雪斗の姿はもうどこにも無かった
車を降りてまだ3分も経ってない、周りはオフィスビルが建ち並びどこかに入っとは考え難くつまりはあの黒塗りの車に乗ってどこかへ行ってしまったのか………
ここは会社前の広場まで2キロくらいしか離れてない
「帰って来るつもりだった?……」
オレンジ色の夕日が陰を長くしていた
案外明日の朝には何事もなかったようにしれっとベンチに座っているんじゃないか?
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きっと……
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