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楽しいセックス

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「葵、顔を出せよ」

「……」

薄い毛布なんか巡ってくれればいいのに健二は優しいから待ってくれる。
それいらない。今いらない。

出来れば無理矢理を演じたい。恥ずかしいからね。狡いって言いたければ言え。

ここの所ずっと。
簡単に健二を操れた筈の「ねえねえ」が全く通じなかった。
わざと体を寄せても何なら乗り上がってもまるでお父さんに戯れ付く子供みたいになってた。

「暑……」

乗り上がった健二の体温が毛布から伝わって体が熱い、汗をかいた額を拭おうとすると……

ズルんと毛布が剥けてしまった。

「あ……出て来た」…ってわかってたけど、思いの外健二の顔が近かった。
鼻先が触れ合う距離に満面の笑顔がある。

もうこうなったら一か八かしか無い。
あーんと口を開けるとクスクス笑う健二が鼻を擦り付けて来た。

そうじゃ無いよ健二さん。
キスしろって言ってんだよ!!

「健二さん……意地が悪いです」
「ん?夜は長いよ?俺の話を聞いてくれる?」
「……チューしてくれたら……聞く…」

クソ恥ずかしい。
決死だったのに……

落ちて来たのは瞼へのキスだ。

「は……話って?」
「俺は葵が好きだよ、同僚としても、友達としても、家族としても好きだ」

ズシーンと心が重くなる「好き」の羅列だ。
それじゃ嫌なのだ。

「俺は……」
「そう……そして恋人として好きだ」

「……本当に?じゃあ……何で…」
「葵、そんな顔をしないで笑おう?葵はまだセックスをある種の道具だと思ってるだろう?違うんだよ、セックスは楽しくて、暖かくて……そして片一方だけが求めるものじゃ無い、気持ち良くなっても恥ずかしく事じゃない、わかる?」

「だって……」

恥ずかしいよ。
普通に男と女ならそれでいいかもしれないけど、男のくせに組み敷かれた下で喘ぐなんて浅ましいとしか言いようが無い。

やりたいなんて……葵は淫乱だと思う。

「なあ葵……俺は初心者なんだ、そして葵も俺とのセックスは初心者だ、だからさ、どこが気持ちいいのか、どうされたら気持ちいいのか……」

教えて……と唇にキスが落ちて来た。

本当に健二は普通にしてたらモテ男だと思う。
欲しい言葉をくれる。欲しいキスをくれる。

あくまで「普通」にしてたらだけどね。

健二の愛撫は大きい、それは手が大きいからだと思うけど、ある意味雑だとも言える。
キスだってこちょこちょと擽るように舌を使う奴も多いのにグルンと舌を巻き取り持って行く。
服の中に入って来た脇腹を弄る手は体を包まれているようなのだ。

「なあ葵…」っていいとこなのに健二が顔を上げた。

「や………やめるの?」
「違うよ、せっかく葵がOKをくれたんだ、今日はやめない、それよりさ、面倒だから服を脱いじゃわないか?一回素っ裸になってそこから始めよ?」

「いいですけど」

いいと言ったけど心の中では「え~」って思ってる。勢いで突っ走りたいのに、落ち着くと恥ずかしさが倍増する。

しかしニコニコしている健二は着ていた長Tをスポーンと脱いで捨て、スエットズボンを引き下げスポーンと捨てた。それならやる。
脱ぐ。

ベッドに座ってシャツをスポーン。
健二とお揃いのスエットズボンとパンツを一緒にスポーン。

すると何だろう。あんなに恥ずかしかったのに笑えて来た。

「健二さん……勃ってる」
「葵は……七分目…葵ってさ…前から思ってたけど顔と背の割にチンコデカいよな、ま、俺の方がデカイけどな」
「顔と背は関係ないでしょう、それにほら、俺はまだ全力じゃ無いから」

ほらほらって高さを比べる為に足を交互に組んで腰を擦り合わす。そしてチンコの高さ比べだ。

「ほらやっぱり俺の方が背が高い」
「俺はこれからです」

ほらほらの応酬は変な図式になっている。
お互いにエレクトした下半身を擦り合わせて足を高さとか太さとかを足を開いて覗き込んでいるのだ。健二の言う通り淫欲に塗れるだけのセックスとは違う様相だけど、だからと言って萎えたりしないし、笑いに邪魔されたりもしてない。

本当に健二のキラキラって凄いと思う。
どっちがどっちをヤルって雰囲気はもう無いのだ。いつの間にかお互いが相手のチンコを触り合い、どっちが保つかのゲームになってる。

勿論勝ちたいから健二を方を攻めると攻め返される。声を出したらマイナスポイントなんて健二が言い出すから、二人共笑い声で誤魔化して「んぁ……ハハハ」とか「うぁ…へへへ」とか……。

本当に変な2人だ。

しかし、追い込まれて来ると無口になって来るのは仕方がない。

「ふ…ああ…」

「葵……超色っぽい」

健二の手が後頭部を掬い取り唇が重なった。
手の位置が首に近くて怖いけど、コンニャクよりはマシだ。

そう、コンニャクで訓練はしつこく健二に迫られたから一回だけやったのだ。
一回だけだよ?コンニャクが首に触った途端逃げたからね。慣れないよ。慣れるわけない。

「健二さん……首は嫌だよ?」
「下と……同時なら大丈夫だよ」

健二に舌を吸われるのは好きだ。
でももう息が早くて堪能出来ないのだ。
擦り合わせる速度も上がってる。
滲み出ているお互いの愛液が混ざってグチュグチュと音を立て滑りがよくなっていた。

「あっ……あ…健二さん…」

キューっと鋭い戰慄が背骨を駆け上る。
もう駄目だと思ったけど、健二は片手、こっちは両手だ、グッと根元を締めて親指を蓋をすると健二が先に低い唸り声を上げた。

俺?健二の後にすぐさま解放したよ。
全然恥ずかしくない。
それよりも楽しい。

「あ……ハァ……やった……俺の勝ちだ」

ズルだ、とか、ルール違反だ、とか抜け駆けだ、とか文句を言うかと思ったら、健二は「そうだな」って笑って額を合わせた。

気が付けば健二の手は首にあった。

「健二さん…首……やだ」
「キスなら大丈夫だっただろ?」

「うん、でもやっぱり手は嫌」
「じゃあ触らない、でもさ、今の今まで葵は気付いてなかっただろ?」

「徐々に慣れていこう」って、それはつまり徐々に触る気か?
チンコに触ってるのに首は駄目なんて自分でもおかしいと思うけど首に手があるってのが嫌なのだ。

健二は「首に触るな」と言うと、その行為そのものが俺の傷だと思い込んでいる。
でも……抱きしめてくれるついでならいいかもしれない。そんな訓練ならいいよ。

少し気を使ったらしい。首ギリギリの後頭部が健二の大きな手に包まれる。優しく押し出されて濃厚なキスを交わす。
チャプっと水音がして絡まる舌先が口の中を混ぜる。

そして背中の手が降りて来る。
ツルリと尻の割れ目に指が入り込んでクッと押された。

「ん……」

膝に力が入って、つい…腰を浮かせて逃げてしまった。

「葵……大丈夫だから…俺は急いだりしない」

唇を付けたまま健二が囁いた。
そしてキスが深く激しくなる。
実はキスってあんまりした事が無いのだ。
足の先から身体中を、それこそ暗部も厭わずしつこいくらい舐め回す癖にキスをして来る奴はあんまりいない。

長いキスは頭がクラクラする。
でも気持ちいい。
好きって気持ちはまだよくわからないけど、ああ、健二が好きだなって思える。


「葵……どこが気持ちいいのか教えて」

健二の指は体の奥深くに入って来ている。
そして、教えなくても健二は知ってるんだと思う、性器の付け根に当たるそこを内から押す。

「ん……んん…」
「え?違う?」

「んん!ん」
「どっちだよ」
「んんん!ん…んん…あっ!」

ビクビクビクっと体が揺れて「ハハッ」と健二が笑った。
伸び上がってしまったせいで倒れそうになり、健二の頭にしがみ付いた。

「横になる?」

「んんん…ん」

首を振ったけど健二には見えてないよね。
でも、どっちでもいいのだ。
健二がしたいようにしてくれたらいいのだけれど、今は何だか対等になれる気がするから座ったまま向かい合って抱き合ってる方がいい。

唇は離れてしまったけど、今健二とキスをしているのは裸の胸だ。
チュクチュクと胸の粒が吸われて舌の先でコロコロと弄ばれる。

「噛んで」

「いいの?」

「セックスの時は…」
「不思議と痛くない?」

「うん、でも痛かったら怒る……あ…あ…」

「葵……腰が動いてる」

「え?!」

カァーっと顔が熱くなった。
健二に見えてないのは本当によかった。
知らない間に体の中で蠢く指に合わせて上下に動いていた。

「……いや?」

こんな俺は……。

そう聞いたのに健二は「もっとやって」と笑った。

健二は誰にでも降り注ぐ太陽の光なのだ。

はっきり言えば、楓ちゃんは初めてデートした時からあんまり好きになれなかった。
ネットの書き込みから受けた心象は置いといて、話しても普通だし楽しくもあったけど、どう対応していいか馴染めない印象が拭えなかった。

それは多分銀二も同じで、だから本当に悪印象なんか無い筈なのに、独りよがりで独善的と結論を出した。
それなのに健二はあの書き込みを見ても楓ちゃんを疎んじたりはしなかった。
ブロックされたから「直接言いに行く?」と楓ちゃんの行く先を心から心配していた。

健二相手に遠慮する必要は無いのだ。
欲しい物を欲しいと言っていい。
それは楽。
それは楽しい。


「あ……あ…」

乳首を噛まれる快感に襲われる。
キューっと下腹に蓄積していく熱が溜まらなくなってくる。

「健二さん…健二さん」

「うわあ中が動いて指が締まる……入れた時に併用しよ」
「それよりも……前触って」

イキたい、イキたい

「イキたい」

ああ、口に出しちゃった。
そしたら健二は「よっしゃ任せろ」って。
何をするのかと思ったら、ヒョイと腰を持ち上げられてベッドの上に立ってしまった。

「あっ!健二さん!」
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