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のび太くんと連れ煙草
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「君は煙草を吸うの?」
そう言ったのは大人になった「のび太くん」みたいな人だった。手に持っていたライターを見ると、他に喫煙者がいないから助かったと煙草を出して人の良さそうな顔でにーっと笑った。
「灰皿が無いですもんね」
「そうなんだよ、凄く綺麗な店だしここも全面禁煙かと思ってさ、君は従業員だろ?怒られないの?」
「僕はプロのホストさんとは違うんです」
「へえ、色々あるんだね、まあ楽でいいけどな」
うん、こっちも楽。
のび太が言うには、何でもキャバクラはキラキラした若い女の子が興味も無いだろう話を熱心にフンフン聞いてくれるんだそうだ。それはそれでいいのだが、会話が途切れたら白けるのでは無いかと気を使うらしい。
ましてや「キラキラした若い男」となんか何を話していいかわからないって……そりゃそうだろう思う。例えば、キラキラであろうがオラオラであろうが銀二と2人きりにされたら速攻笑って逃げる。
かなり変な服を着ているとは言え、普通の顔した普通の男が相手なら普通に無視してもいいし、普通に天気の話でもしてりゃいい。
「こんな店もあるんだな」って笑っている所を見ると、どうやら誰かに誘われただけで男に興味があるわけでも無いらしい。勿論だけど男を買えるなんて知りもしない一見さんらしい。
つまりはこの中に1人だけmen'sアナハイムが持つ真の顔を知っている奴がいるって事だ。
ホストを挟んで笑っている4人のメンバーを見回すと……
いた。
正面に座る男がこれ見よがしに百合のカードを胸ポケットに挿している。
線の細い眉の吊り上がった冷たそうな顔。
絶対にS。
ここは抑えとかないといけない気がしてポケットから煙草を出した。
サッと出て来るホストの火は断って、ライターカメラで火を付けながら撮る撮る撮る。
するとまだ遠慮していたのび太も煙草に火を付けた。ニコって笑ってくるからニコって笑い返す。
仲良く2人で煙を吐くと「君は幾つ?」っていかにも何か言いたげに聞くから25って言ってやった。
どうやら4人とも銀行マンの同期で目下のライバルらしい。のび太は「男専門のホストクラブに来たなんてバレたら何を言われるか」って笑ってるけど正に弱みを握るために嵌められてんじゃ無いのかって思う。カモカモしてるもん。
のび太くんを含め、見知らぬ人と話す事なんて何も無いから、同席しているメンバーの会話をただ黙って聞いていると、のび太くんに何でも好きな物を頼んでいいよって言われた。
ありがとう、太っ腹。
何でもいいなら焼肉でも食べたいけど、きっとあんまり無茶を言うと昆布の二の舞になる。
店にある物で物で我慢しようとメニューを眺めた。
おつまみ─単品5000円
大中小………?
ポッキー──2000円
支払いは銀行マンだから値段はいいけどお腹が空いてるんだって。
フルーツはいらない、ナッツもいらない、ピクルスなんてもっといらない。
ろくな物が無いけどせっかくだからマロンって付いてる何かを頼んだらブランデー漬けの栗だった。横長の四角いお皿に整然と3個。
かなりの大粒だけどね。食べてみたら美味しいけど一瞬で消えた。後5皿分くらい頼めたらそれでもいいけどそれは出来ない。
目立ったりしてはいけないのだ。
後々に「栗ばっかり食べて」なんて話題になっては困る。
百合のカードを持ってるSっぽい男は知らん顔を決め込んでるらしい。
だからこっちも知らん顔でいいと思う。
この席での義務も目的も果たした。
一応全員に挨拶をしてからもう一枚のカードを渡して来た客の席に移る事にした。
「え?もう?」って言われたけどホストじゃ無いからね。「葵」に用があるのはS男だけだろう、あくまでも興味無い振りは何だか慣れが見えて腹黒さが引き立つ。
「後でね」って言ってやろうかと思ったけどそこは自主規制した。
そう言ったのは大人になった「のび太くん」みたいな人だった。手に持っていたライターを見ると、他に喫煙者がいないから助かったと煙草を出して人の良さそうな顔でにーっと笑った。
「灰皿が無いですもんね」
「そうなんだよ、凄く綺麗な店だしここも全面禁煙かと思ってさ、君は従業員だろ?怒られないの?」
「僕はプロのホストさんとは違うんです」
「へえ、色々あるんだね、まあ楽でいいけどな」
うん、こっちも楽。
のび太が言うには、何でもキャバクラはキラキラした若い女の子が興味も無いだろう話を熱心にフンフン聞いてくれるんだそうだ。それはそれでいいのだが、会話が途切れたら白けるのでは無いかと気を使うらしい。
ましてや「キラキラした若い男」となんか何を話していいかわからないって……そりゃそうだろう思う。例えば、キラキラであろうがオラオラであろうが銀二と2人きりにされたら速攻笑って逃げる。
かなり変な服を着ているとは言え、普通の顔した普通の男が相手なら普通に無視してもいいし、普通に天気の話でもしてりゃいい。
「こんな店もあるんだな」って笑っている所を見ると、どうやら誰かに誘われただけで男に興味があるわけでも無いらしい。勿論だけど男を買えるなんて知りもしない一見さんらしい。
つまりはこの中に1人だけmen'sアナハイムが持つ真の顔を知っている奴がいるって事だ。
ホストを挟んで笑っている4人のメンバーを見回すと……
いた。
正面に座る男がこれ見よがしに百合のカードを胸ポケットに挿している。
線の細い眉の吊り上がった冷たそうな顔。
絶対にS。
ここは抑えとかないといけない気がしてポケットから煙草を出した。
サッと出て来るホストの火は断って、ライターカメラで火を付けながら撮る撮る撮る。
するとまだ遠慮していたのび太も煙草に火を付けた。ニコって笑ってくるからニコって笑い返す。
仲良く2人で煙を吐くと「君は幾つ?」っていかにも何か言いたげに聞くから25って言ってやった。
どうやら4人とも銀行マンの同期で目下のライバルらしい。のび太は「男専門のホストクラブに来たなんてバレたら何を言われるか」って笑ってるけど正に弱みを握るために嵌められてんじゃ無いのかって思う。カモカモしてるもん。
のび太くんを含め、見知らぬ人と話す事なんて何も無いから、同席しているメンバーの会話をただ黙って聞いていると、のび太くんに何でも好きな物を頼んでいいよって言われた。
ありがとう、太っ腹。
何でもいいなら焼肉でも食べたいけど、きっとあんまり無茶を言うと昆布の二の舞になる。
店にある物で物で我慢しようとメニューを眺めた。
おつまみ─単品5000円
大中小………?
ポッキー──2000円
支払いは銀行マンだから値段はいいけどお腹が空いてるんだって。
フルーツはいらない、ナッツもいらない、ピクルスなんてもっといらない。
ろくな物が無いけどせっかくだからマロンって付いてる何かを頼んだらブランデー漬けの栗だった。横長の四角いお皿に整然と3個。
かなりの大粒だけどね。食べてみたら美味しいけど一瞬で消えた。後5皿分くらい頼めたらそれでもいいけどそれは出来ない。
目立ったりしてはいけないのだ。
後々に「栗ばっかり食べて」なんて話題になっては困る。
百合のカードを持ってるSっぽい男は知らん顔を決め込んでるらしい。
だからこっちも知らん顔でいいと思う。
この席での義務も目的も果たした。
一応全員に挨拶をしてからもう一枚のカードを渡して来た客の席に移る事にした。
「え?もう?」って言われたけどホストじゃ無いからね。「葵」に用があるのはS男だけだろう、あくまでも興味無い振りは何だか慣れが見えて腹黒さが引き立つ。
「後でね」って言ってやろうかと思ったけどそこは自主規制した。
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