上 下
9 / 14

9話

しおりを挟む

レヴィアと別れて、自分の家に帰るとみんなが口を揃えて「あれは本当にリリィ様?」と影でコソコソ話をし始めた。

「リリィ帰ってくるのが早かったじゃないか!さては…」
話ている途中で私の顔をみたお兄様は、口をぽかんと開けて、間抜けな顔をしている。
「ただいま戻りました。今日はもう休みます。おやすみなさい」
「お、おい!まてよ」
「お兄様、腕から手を話してください。何か用でもあるんですか?」
「その顔はどうしたんだよ」
「ちょっとしたイメチェンなのでお気になさらないで下さい」
「ふーん」
お兄様は舐めまわすように私の体を下から上へと見た。
気持ち悪い。
「もう行っても宜しいでしょうか?」
「ああ。さっさと行け」
リリィは一礼してから、暗い屋根部屋に戻って、着ていたドレスを綺麗に片付けて部屋着に着替えると硬いベッドの上に倒れ込んだ。




体が重い。重りが乗っているみたいだ。リリィはその息苦しさを感じて、眠りから目覚めた。
薄く目を開けると、そこにはお兄様が私の横に横たわり抱き締めている。
「お兄様!ここで何を…!」
「兄妹が一緒に寝るのは普通のことだろ?何をそんなに慌ててるんだ?リリィ」

今まで1度も妹として扱ってくれたことなんて無いのに、今更態度をかえるかなんて。吐き気がする。本当に名前を呼ばないで欲しい。 

「私ももうすぐ成人する身なのでこういうことは控えて頂きたいです」
リリィは湧き上がる思いを抑えて言ったつもりだが、お兄様の機嫌を損ねてしまったらしい。 

「は?俺達がお前をここに住まわせてやってるんだぞ?なんだその口の利き方は。お前は黙って俺の言うことを聞いておけばいいんだよ!」
「来い!」と腕を引っ張られ、リリィはお継母様いる所に連れていかれた。

「リリィ昨日のパーティでの出来事は聞いたわ。あなた宛に沢山の招待状が届いているわ。私、前にも言ったわよね?顔を晒せばこの家にはもう置いておかないと」

「すみません。どうか、学校を卒業する来月まではここに居させてください。お願いします…」

「どうして私がお前みたいな女をここに置いておかなきゃいけないのかしら。同じ屋根の下に居るって思うだけでも虫唾が走るのに。まぁでも、貴方を成人前に追い出したら私が責められるから、いいわ。卒業したその日に出ていきなさい。この家の名を名乗る事も私が許しません。本当、あなたのその顔を見るだけであの女の顔がチラついてイライラしてくるわ。こいつを地下の牢獄に入れておきなさい」

継母は執事にそう命令すると、彼らは私を捕らえて屋敷の地下に連れていこうとした。必死に抵抗するものも意味をなさない。

牢屋になげすてられ、鉄格子の鍵を閉められた。

「待って!」
「ここから出してください!!」
必死に叫んだが、その声は彼らにはとどかず、リリィは暗くて冷たい無音の世界に1人取り残されてしまった。 

しかし、リリィは落ち込んでなどいなかった。むしろ継母が発した「あの女」という言葉が引っかかって、早くここから出て真相を確かめたいと思っていた。
あの人が言っていたのは、私の母に違いない。私が母に似てるからこんな仕打ちをしているんだわ。母の死に、継母が絡んでいるかもしれない。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

偉物騎士様の裏の顔~告白を断ったらムカつく程に執着されたので、徹底的に拒絶した結果~

甘寧
恋愛
「結婚を前提にお付き合いを─」 「全力でお断りします」 主人公であるティナは、園遊会と言う公の場で色気と魅了が服を着ていると言われるユリウスに告白される。 だが、それは罰ゲームで言わされていると言うことを知っているティナは即答で断りを入れた。 …それがよくなかった。プライドを傷けられたユリウスはティナに執着するようになる。そうティナは解釈していたが、ユリウスの本心は違う様で… 一方、ユリウスに関心を持たれたティナの事を面白くないと思う令嬢がいるのも必然。 令嬢達からの嫌がらせと、ユリウスの病的までの執着から逃げる日々だったが……

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

絶対に間違えないから

mahiro
恋愛
あれは事故だった。 けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。 だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。 何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。 どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。 私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。

【完結】彼の瞳に映るのは  

たろ
恋愛
 今夜も彼はわたしをエスコートして夜会へと参加する。  優しく見つめる彼の瞳にはわたしが映っているのに、何故かわたしの心は何も感じない。  そしてファーストダンスを踊ると彼はそっとわたしのそばからいなくなる。  わたしはまた一人で佇む。彼は守るべき存在の元へと行ってしまう。 ★ 短編から長編へ変更しました。

骸骨と呼ばれ、生贄になった王妃のカタの付け方

ウサギテイマーTK
恋愛
骸骨娘と揶揄され、家で酷い扱いを受けていたマリーヌは、国王の正妃として嫁いだ。だが結婚後、国王に愛されることなく、ここでも幽閉に近い扱いを受ける。側妃はマリーヌの義姉で、公式行事も側妃が請け負っている。マリーヌに与えられた最後の役割は、海の神への生贄だった。 注意:地震や津波の描写があります。ご注意を。やや残酷な描写もあります。

あの子を好きな旦那様

はるきりょう
恋愛
「クレアが好きなんだ」  目の前の男がそう言うのをただ、黙って聞いていた。目の奥に、熱い何かがあるようで、真剣な想いであることはすぐにわかった。きっと、嬉しかったはずだ。その名前が、自分の名前だったら。そう思いながらローラ・グレイは小さく頷く。 ※小説家になろうサイト様に掲載してあります。

処理中です...