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上弦の月が夜の空に浮かんでいる空の下で、ここフルール王国の王城ではパーティが行われていた。

その中でも一際目立っていたのは、もうじきこの国の第2王子と結婚する事になっている、リナリアだ。彼女の容姿は正に妖精そのもののようただった。歩くたびに優雅に揺れる美しい金髪に透き通るような透明感をもつ白い肌。淡く赤い瞳が更に彼女の美しさをひきたてている。

しかし、そんな彼女は一人憂鬱な気分でこのパーティに参加していた。絶世の美女と言われて当然の美貌を持つ彼女がなぜ?そう言われるのか。答えは簡単だ。彼女の出身は平民であり、消して貴族ではない。そんな彼女が貴族や王族の集まるパーティに参加するなど前代未聞なのだ。

「平民のくせに…。どうしてここに?」

「穢らわしい…」

「第2王子様も容姿だけで選ぶなんて…何を考えているのかしら」


着慣れないドレスに、履き慣れないヒールの高い靴。私は目の色と同じ赤い、裾が広がっているドレスの裾を掴みヒラヒラと揺らす。やがて、ため息が出てくる。水ですら喉を通らない。本当どうしてこんなことになってしまったんだろう。

そっと、広間から出てリナリアは夜風に当たるためにバルコニーへ出た。広間からは菅弦楽器の美しい音色が聞こえてくる。しかし、それは彼女の気分をただただ虚しくしているだけであった。

「こんなところでお嬢さんは何してるんだい?」

ふと、横から声がかけられた。声をかけてきたのは、茶髪の誠実そうな印象の男性だった。

「息苦しくて抜けてきたんです」

こんな私に話しかけてくる大抵の人は鼻の下を伸ばして明らかに私の容姿しか見ていない、貴族ばかりだったから、こんなステキな人も話しかけてくれるんだなと少しだけ驚いた。

「あー、わかります。あの息苦しい感じ」
「ところで、あんまり見ない顔ですが外国からいらした方なんですか?」

「その…」
口ごもってしまった。私が平民出身だと言ったらこの人は気分を悪くするだろうか。そんな不安が頭をよぎった。

「その、私は平民出身なんです…」

「ああ!貴方が第2王子の婚約者なんですね、平民出身だと聞いていたのでどんな方かと思っていましたけれど、こんなに美しい方だったとは…」

彼は一瞬目を丸くさせた。

「慣れない環境だと大変でしょう、飲み物を取ってきますので少し待っててください」
彼は微笑みながらそういうと、広間の方へ言ってしまった。

待ってる時間、ボケーっと空を眺めていると近くで足音が聞こえた。彼が戻ってきたのかな、と思い後ろを振り向くとそこにはさっきの彼ではなく黒髮のこのパーティーには相応しくない真っ黒な衣装を纏った男性が立っていた。彼の真っ赤な目から手が離せないでいた。

「お嬢さん、おまたせ、飲み物持ってきたよ」

気付くとさっきの彼がもう戻っていた。両手にワインを持って。

「ありがとうございます」

彼から差し出されたグラスを貰い私は一口、その赤いワインを口にした。

「そういえばお名前なんて言うんですか?」

「俺はオルタンシア。オルタって呼んでほしいな」

「オルタ…さんね…あれ、」
視界がぐるぐると回っている、おかしい。視点がちゃんと合わない。このまま体のバランスを崩してしまいそうだ。

「ん?大丈夫?お嬢さん」
オルタさんが大丈夫か?と私の体を支えて顔を除きこんできた。

その時の顔は、焦っている顔ではなく。

ただただ悪に満ち溢れている微笑みを浮かべていた。



┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
どうも、作者です。

すっごく、銀髪赤目吸血鬼の女の子がタイプで、そういう主人公で物語を書きたい!!と思い、執筆してみました´ω`*

冒険あり、きゅんきゅんの恋愛あり、の物語にしていきたいと思います!

よろしくお願いします(o_ _)o
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