そらに光る星~誇り高きぼっちの青春譚~

もやしのひげ根

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50.浴衣効果

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「ソラっちはやく~!」
「そんなに急いでどうすんだよ」
「早くしないといい場所なくなっちゃうでしょ!」
「はいはい。まったく、なんで俺まで......」
「文句言わないの!こんな美少女4人だけで行ったらナンパされまくって花火どころじゃないでしょ?」
「普通自分で言うか?」
 
 両腕を如月と竹田に掴まれて連行されて仕方なく歩く。なんかデジャヴなんだが。しかし前回の祭りの時とは違って、今日は女子4人ともが浴衣だ。
 如月、三井、竹田の3人は元々持っていたらしいので、あかりの分は購入した。レンタルでも良かったのだが、こいつらと仲いいならまた着る機会もあるだろうし、あいつからお金は振り込まれているので問題はない。あかりに選ばせたら永遠に迷っていたのだが、俺が水色なんかいいんじゃね?と言ったら即決していた。迷っていた時間はなんだったんだ......。
 着付けは母親から仕込まれたらしい三井がやってくれたので自然と我が家に集合し、ついでに俺まで連れ出されてしまった。
 
「まったく、浴衣姿の美少女と花火大会行けるなんてもっと喜べばいいのに~」
 
 そうはいうものの嫌な予感しかしないんだよな。たしかに浴衣姿というだけで4人とも普段より大人っぽく見える。化粧してるってのもあるかもしれないが。ただ、それを4人も連れて歩いているともなれば当然目立つだろう。
 せめて他にも男子がいればマシかもしれないが。クソッ、こんなことなら兵動と静浦の連絡先聞いておくんだった。他人の連絡先を知りたいと思ったことなど初めてだ。 
 とりあえず両腕引っ張るのやめてもらえないかな。余計目立つんだが。浴衣効果で中身も大人っぽくならないかな。
 
「センパイと一緒に花火デート出来るなんて夢みたいですぅ!」
  
 ならないですよね。知ってた。ホント、夢ならばどれほど良かったでしょうってな。会場に向かって通りを歩いていくと、だんだんと人が増えていく。
 
「人増えてきたしそろそろ離れろよ」
「えー!嫌ですぅ!センパイの隣は私のものなんですぅ!」
「もうちょっとだけいいでしょ?」
「歩きづらいんだよ」
 
 勝手に隣のスペースを自分のものにされても困るんだが。結局文句言っても離してくれないんだよなぁ。一緒に来た時点で詰んでる気がする。まぁ竹田は背も小さく顔も幼いから妹がじゃれついてるように見えないこともないかもしれない。本当の義妹いもうとは後ろを歩いてるんだけど。
 こんなことなら帽子でも被ってくればよかった。あ、そもそも外出ないから帽子持ってないわ。今度帽子か伊達眼鏡でも買っておくべきだろうか......なんてまた一緒に出掛けること前提で考えている自分がいて苦笑してしまう。こんなこと、ゴールデンウィークまでの自分なら想像も出来なかっただろう。
 花火大会といっても、花火が始まるまでは屋台で買い食いして遊ぶだけなので祭りの時とそう変わらない。しかし場所が変われば屋台も変わるもので、祭りの時には無かった輪投げなどもあったが、メインが花火なので遊ぶものというよりは食べ物飲み物の屋台が多いように感じた。女子といえども高校生。あれもこれもと買ってはシェアしつつ胃袋に収めていった。
 
「で、空いてそうな場所に心当たりはあるのか?」
「うーん、いつもは歩きながら見てることが多いからなぁ。河川敷はもう人がいっぱいだろうし……」
 
 おい、何のために早く来たんだよ。まぁ俺は特に花火見たいとかは無いからこのままブラブラして帰るでもいいんだけど。

「よし、こうなったら手分けしていい場所探そ!愛衣ちんはソラっちとね!ちぃちゃんは私たちと。これでいいバランスだね。じゃ、ソラっち、愛衣ちんのことよろしく!」
 
 そう言い残して、俺の腕から竹田をひっぺがして行ってしまった。この状況で手分けしてまで探す必要があるのだろうか。むしろ合流するのが大変な気がするんだが……。
 
「それじゃ、行こっか。亜美ちゃんたちより先にいい場所見つけないとね!
「あ、おい」
 
 如月は俺の腕に自分の腕を絡めて引っ張っていく。たしかに早めに移動しないと邪魔になるし見物場所も無くなってしまうが強引だ。
 人混みを縫うようにして歩いていくが、どこも人で溢れている。打ち上げ場所に近づくほど人多いから無理じゃね?と思ったが、如月は突如進行方向を変えた。そして歩いて階段を登ってまた歩いていくと、開けた場所に出た。
 そこは少し高い場所にある駐車場だった。しかし止まっている車はまばらだ。今夜は車は規制されているしな。 端まで歩いていって落下防止用の柵から下を眺めると、先程まで歩いていた通りが見える。ハッハッ!見ろ、人がゴミの......1人でやってもむなしいだけだな。
 なるほど、ちょうど向こうが打ち上げ場所か。よくこんな絶好のポイントが空いていたな。 
 柵に背中を預けて三井に連絡しようとスマホを取り出すと、如月が慌てて俺の手を押さえつけた。
 

 「あ、あのね……そら君に話があるの」

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