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第八章

162.愛里紗に聞きたい事

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  ーー神社に足を運んだ日から2週間が経過。
  俺は二つの結果に行き着き、再び頭を悩ませる日々が続いていた。


  一つ目は、彼氏と幸せにしているか。
  二つ目は、まだ少しでも俺に気持ちが残っているかどうか。

  もし愛里紗の気持ちが後者だったら、俺は誰にも遠慮なんてしない。



  答えを出すにはやっぱり本人と話し合った方がいいと思って、創立記念日で休校日の今日を狙って彼女の最寄り駅の改札で帰りを待つ事に。

  休校日を選んだ理由は、彼女の下校に間に合わせる為。
  連絡先を知らないから、確実に会うにはこうする他なかった。

  自宅に出向く手段もあったが、お別れ際に愛里紗の母親に迷惑をかけてしまった事もあって気が引けていた。



  改札の奥から流れ来る人混みの中の一人一人に目を向けて愛里紗を探した。
  寄り道する可能性もあるが、長時間待つ覚悟は出来ている。

  すると、おおよそ予想していた通りの時間に改札の奥の方から愛里紗の姿が。
  父親からプレゼントしてもらった腕時計に目をやると、現在時刻は16時45分。
  日はだいぶ傾いているが、話し合う時間はたっぷりある。


  しかし、遠目から愛里紗を呼び止めようとした瞬間、隣の誰かを見て笑っている事に気付いた。
  その誰かを知る為にじっと見つめていると、彼氏と思われる男と手をつなぎながら歩いてくる。
  一人で帰宅していると思っていた分、予想外の展開に気持ちが追いつかない。

  自分が来ている事を知られたら愛里紗に迷惑がかかってしまうと思い、柱の裏に身を隠した。


  彼氏の出現に予定は大幅に狂ってしまったが、あれこれ思いを巡らせているうちにピンチはチャンスという結果に結びついた。
  咲ちゃんと別れてから情報が滞っていたが、まさに渦中の人物が今そこに……。



  翔は柱の裏からヒョイと顔を覗かせて、二人の様子を見る事にした。



  ここ数日間、良い方にも悪い方にも頭を悩ませていたけど、実際仲良さそうにしてる姿を目の当たりにしたら、そんな悩みを一掃されてしまうほどショックを受けた。

  彼は無造作にスタイリングされた明るめの茶髪にピアスをしていてチャラそうに見えるが、あっさりと整った顔立ちのなかなかのイケメン。


  でも、人を見た目で判断してはいけない。
  きっとあの男には愛里紗の心を射止める特別な魅力があるはずだと思って、しばらく観察する事に。

  二人が改札を通り抜けた頃、ようやく会話が聞こえてきたので静かに聞き耳をたてた。



「俺さぁ、最近UFO見たんだ」

「……えっ。いきなり何?」


「先日学校帰りに駅前からたまたま空を見上げたら、白い円盤みたいな機体を二機見かけたよ」

「やだぁ、UFOなんて怖いね。目的は何かなぁ」



  改札を出て来た二人の足は翔が隠れている右柱の方に向かって来たので、翔は二人に見つからぬように時計回りの方向に身体を移動させた。



  すげぇ話題。
  二人は普段からこんな話をしてるのかな。



  翔は首を傾げながら二人からはぐれないように、探偵のようにコートの襟を立てて顔を隠しながら、ある一定の間隔を保って後を追った。
  だが、手を繋いでる姿を後ろから目で追っても、正直面白くないし恨めしくもある。


  翔はヤキモチを妬いてムスッとしながらも、理玖の魅力を探る為に引き続き黙って後を追った。
  しかし、ふてくされている自分とは対照的に、不思議な会話は更にエスカレートしていく。

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