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第六章

122.亀裂が入った友情

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  ーー咲が谷崎くんの存在を隠していた事をカミングアウトしてから、2週間が経過。
  あの日を境に友情に亀裂が入ったまま、咲とは一度も口を利いていない。


  期末テスト前日に英語のノートを咲に返しそびれてしまった木村は、翌日直接本人に謝ったらしい。

  この話は木村から聞いた。
  代わりにバイト先までノートを届けに行った私にも『ごめん』と。


  でも、木村があの日にノートを返し忘れなければ、私はずっと谷崎くんの居場所を知らないまま。
  この先も咲の心の中だけに真実がしまわれていたはず。


  咲はケンカをした日の翌日から何度も謝ろうとしてきたけど、当然耳を貸せる状態じゃないし、幾度となく背中越しに繰り返される言葉すら聞き入れられない。
  いくら親友とはいえ、今回ばかりは許容範囲を超えた。


  私がこうやって毎回冷たく遇らうから、咲は心が折れてしまったのか次第に自分から話しかけなくなった。




  ーー咲はアルバイト先で愛里紗に交際宣言をしたあの日以来、翔ともすれ違いの日々を送っていた。

  二人で会う以前に、仕事で必要最低限の会話しか交わされず、SNSメッセージを送り続けても返信がない状態に。
  咲が冷たくあしらわれているのは愛里紗だけではなく、翔からも一線を引かれていた。


  一方の翔は、再会を切望していた愛里紗の前で感動に浸る間もなく一方的に彼氏だと紹介されてしまった事に腹を立てていた。
  再会を心待ちにしていた分、気持ちを逆撫でされてしまったから。


  その間、愛里紗は理玖の前では冗談を言ったり、笑い合ってふざけたり、ぶらりと近所デートをしたり。 
  まるで何事もなかったかのような日々を過ごしていた。



  理玖に咲とケンカした事を言わなかった。
  ……と言うより、元カレが関係しているから言える筈がない。

  でも、微々たる変化に気付いてる。
  普段通りに話していても、時たま何かを話そうとする素振りを見せる。

  だけど言わない。
  だから、こっちも何事もないように振る舞っている。
  また、中学生の頃みたいに目が笑ってなかったかな。

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