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第四章

84.仲良くなった二人

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  私達は必死にテスト勉強をしてるけど、理玖は帰ろうとしないし、学校は中間テストがないのかなぁ……なんて思いながら、ノートに英単語を繰り返しながら書き綴った。

  一方の理玖は、ベッドに背中をもたれかからせてスマホゲームで遊び始めた。

  すると、シンと静まり返っている室内に玄関扉が開く音が。


  ガチャ……

  物音とレジ袋がカサカサと擦れる音が一旦止むと、気配と共に足音が徐々に近づく。
  部屋の扉が開くと帰宅したばかりの母は言った。



母親「ただいま、愛里紗。いらっしゃい、咲ちゃん。ごめんね、理玖くん」

愛里紗「ちょっとぉ、お母さん!  理玖に留守番頼まないでよ」

咲「おばさん、お邪魔してます!」

理玖「全然イイっすよ。めっちゃ楽しいから」



愛里紗「理玖ったら、全然帰ろうとしないんだもん。もういい加減帰りなって」



  愛里紗は冷めた目つきのまま手でシッシッと追い払う。



理玖「追い出そうとするなって。友達だろ」

母親「愛里紗!  理玖くんにひどい事言わないの。愛里紗の為にお留守番していてくれたのよ」

愛里紗「だって、さっきから邪魔しかしないんだもん」



理玖「……っだから、反省して今は大人しくしてんじゃん」

愛里紗「じゃあさっきの寒いギャグをお母さんにも聞かせてあげれば?  笑ってくれるかもね。何だっけ?  今井くんいま……」
理玖「あぁ、もーいちいち蒸し返すなって。そんなちっぽけな事を根に持つなよ」


愛里紗「ちっぽけなのはどっちよ」



  愛里紗達の小競り合いに困り顔の母と咲は、お互い顔を見合わせてクスッと笑う。



  ーー勉強に戻ってから10分後。
  一度リビングに戻った母は、ケーキと紅茶を三人分持って勉強道具を下げたテーブルに手際良く並べた。



母親「三人で仲良く食べてね。愛里紗、理玖くんと喧嘩はダメよ」

愛里紗「あんなの喧嘩じゃないけどね」

理玖「あざーっす。うわっ、旨そ……。俺、チョコのやつー」

咲「おばさん、ありがとうございます。いただきます!」



母親「じゃあ、ごゆっくり」



  母はお盆を下げて部屋を後にする。

  理玖はケーキを一口パクリと食べると、先程と同じく軽い口調で、紅茶をフーッと冷ましている咲に言った。



理玖「さっきの話に戻るけど、咲ちゃんの彼氏の名前は何って言うの~?」

咲「えっ!(その話題は終わったと思ったのに……)」

愛里紗「まだその話?  シツコイからもうやめなよ。いい加減嫌われるよ」



咲「……あはは」



  理玖はいっぱい話しかけて咲と仲良くする作戦なのかな。
  面白ネタを探そうとしているのか分からないけど、さっきとまた同じ話題を振っちゃって。
  咲だって返事をするのに困ってるでしょ。



  ケーキのお皿が空になってもマシンガントークは止まらない。
  お陰でこっちまですっかり寛ぎモード。
  咲も楽しそうに喋るから、なかなか勉強に戻れないし。



理玖「咲ちゃんはどこに住んでるの?」

咲「三鷹大平町だよ。知ってる?」



理玖「あー、知ってる知ってる!  魚の街だろ?  すげぇ田舎だけど駅前は結構拓けてるよね」

咲「魚の街?  何それーっ!」

愛里紗「漁港があるからって魚の街はないでしょ。それに、案外都会だよ」



  最初は口達者な理玖のトークに咲は押され気味だったけど、時間と共に慣れて来た様子。
  表情を七変化させながら賑やかに会話を進める二人は、まるで古い友人のように打ち解けている。



  学校や地元の話。
  それに、髪型一つだって褒め上げる。
  惹きつけられるトークに咲の関心が寄せられていき、二人ともすっかり仲良くなった。

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