37 / 226
第二章
35.告白のタイミング
しおりを挟むーー今日は終業式。
と、同時にクリスマスイブもやってきた。
街にはクリスマスソングが流れていて、大きなクリスマスツリーが駅前を占領している。
色とりどりなイルミネーションが木々や建物に装飾されて街はクリスマスムード一色に。
今年もサンタさんは家に来てくれるかな。
一年の中で好きなイベントは誕生日に次いでクリスマス。
サンタクロースからプレゼントがもらえるし、家族三人揃ってケーキやご馳走を並べてパーティをする。
普段出張ばかりのお父さんは、誕生日とクリスマスの日だけは必ず家に帰って来る。
だから、クリスマスは私にとって特別で最高に幸せな一日だ。
学校から帰宅している最中、ミクの話を何度も思い返していた。
家に到着してから部屋に荷物を置き、ダイニングで母が用意した昼食に手をかける。
ところが、グゥッと鳴るくらいお腹が空いていたのに、何故かご飯が喉元を通らない。
上履きの件が解決して肩の荷が下りたというのに、食欲がない理由はそれだけではなさそう。
ミクが私にヤキモチを妬いて上履きを隠した事や、谷崎くんが私にしか笑いかけないという事。
それに、誰から見ても谷崎くんは私が好き……?
刺激を受けてしまったせいか、以前と同様頭の中がグチャグチャしてきた。
……いや、頭の中は一向に整理がつかないけど、ミクに谷崎くんを奪われてしまうと焦っていたあの時とは明らかに違う。
あの時よりも物事が少しずつ前進しているような気がした。
私が一方的に谷崎くんを想ってるだけじゃなくて、谷崎くんも私を想ってくれている可能性がある。
もしかして、告白のタイミングは今……かなぁ。
愛里紗は気持ちが高揚していくと、再び暴走してしまわぬようにノグとミキを自宅へ呼び寄せた。
ーー20分後、二人は家に到着。
突然ただならぬ意気込みで呼び出された二人は何事かと思い、愛里紗の部屋で互いに顔を合わせた。
愛里紗は体育館前でミクと話し合った事を一つ一つ思い返しながら伝えた。
上履きの件から、大きな決断まで……。
「私、今日谷崎くんに告白する」
一度目に放った爆弾は暴発してしまったけど、二発目ともなるとある程度の覚悟は備わっている。
「そっか。いよいよ心を決めたんだね」
「頑張って! 以前みたいに焦っちゃダメだよ。あーりんらしくね」
二人は愛里紗の強い決意に快くエールを送る。
愛里紗は決意表明をして、後戻りしないように気持ちを奮起させた。
「大丈夫。きっと上手くいく。緊張してもゆっくり深呼吸して伝えたい事だけを伝えるんだよ」
「うん。わかってる」
「頑張れ、頑張れ! 私達は応援してるからね!」
ノグは気持ちを後押しするかのように、ポンポンと肩を叩いた。
前回とは違う緊張感が漂っている。
決して怖くない訳じゃない。
告白する立場ならきっと誰だって一緒だ。
谷崎くんが自分を好きかもしれないと思い始めるようになってから、気持ちが抑えきれなくなった。
このまま何もしないのはイヤ。
今まで通りの関係じゃダメ。
好きだから前に進みたい。
以前みたいに逃げたりしない。
笑顔を独占したい。
味方でいてくれる親友二人と、告白への後押ししてくれたミクのお陰で、気持ちの足並みが揃った。
「私っ、今から谷崎くんの所に行って告白してくる」
「あーりん、頑張れ!」
「しっかりね!」
三人で一緒に家を出ると、愛里紗は二人に温かく見送られながらその足で神社に向かった。
気持ちが彷徨っていた前回とは明らかに足取りが違う。
緊張していても震えていない。
大丈夫。
私には出来る。
例えフラれたとしても気持ちだけはしっかり伝えたい。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
【完結】殿下、自由にさせていただきます。
なか
恋愛
「出て行ってくれリルレット。王宮に君が住む必要はなくなった」
その言葉と同時に私の五年間に及ぶ初恋は終わりを告げた。
アルフレッド殿下の妃候補として選ばれ、心の底から喜んでいた私はもういない。
髪を綺麗だと言ってくれた口からは、私を貶める言葉しか出てこない。
見惚れてしまう程の笑みは、もう見せてもくれない。
私………貴方に嫌われた理由が分からないよ。
初夜を私一人だけにしたあの日から、貴方はどうして変わってしまったの?
恋心は砕かれた私は死さえ考えたが、過去に見知らぬ男性から渡された本をきっかけに騎士を目指す。
しかし、正騎士団は女人禁制。
故に私は男性と性別を偽って生きていく事を決めたのに……。
晴れて騎士となった私を待っていたのは、全てを見抜いて笑う副団長であった。
身分を明かせない私は、全てを知っている彼と秘密の恋をする事になる。
そして、騎士として王宮内で起きた変死事件やアルフレッドの奇行に大きく関わり、やがて王宮に蔓延る謎と対峙する。
これは、私の初恋が終わり。
僕として新たな人生を歩みだした話。
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました
結城芙由奈
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】
私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。
2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます
*「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
※2023年8月 書籍化
さよなら私の愛しい人
ペン子
恋愛
由緒正しき大店の一人娘ミラは、結婚して3年となる夫エドモンに毛嫌いされている。二人は親によって決められた政略結婚だったが、ミラは彼を愛してしまったのだ。邪険に扱われる事に慣れてしまったある日、エドモンの口にした一言によって、崩壊寸前の心はいとも簡単に砕け散った。「お前のような役立たずは、死んでしまえ」そしてミラは、自らの最期に向けて動き出していく。
※5月30日無事完結しました。応援ありがとうございます!
※小説家になろう様にも別名義で掲載してます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる