上 下
32 / 226
第二章

30.仲直りしたい!

しおりを挟む

✼••┈┈••✼••┈┈••✼••┈┈••✼••┈┈••✼



「ミク……、谷崎にフラれたみたい」



  ノグからミクの告白結果を聞いたのは、谷崎くんとケンカをしてから一週間後の事。


  ーー場所はノグの家。
  傷心している私とミキを自宅に招待してくれた。

  学校でミクの仲良い友達が告白話について語っているところをたまたま聞いて、途中から割り込んで確認した様子。


  二人が付き合ってないと知ってホッとした。
  心に少し余裕が生まれたお陰か、先日谷崎くんに告白しようとした件を伝えた。

  すると二人は何の相談もなしに思い切った行動に移した私に酷く驚いている。
  あの時の事を思い巡らせながら、泣かないようにキュッと唇を噛み締めたけど、二人の優しさに負けて涙をポロポロと溢れさせた。



「あーりん、あんた焦り過ぎたんだよ」

「えっ……」


「ミクの告白を知って谷崎を取られたくないって思ったんでしょ」

「うん。二人が付き合ったら嫌だから」


「谷崎の気持ちを考えてごらんよ。あんたと噂になったり、ミクに告白されたり。短期間で恋沙汰に巻き込まれて気持ちに余裕が残されてるなんて思えない」

「……う、うん」


「その上、あんたはミクを褒めたり勧めるような言い方して」

「私はっ、ミクを勧めるような言い方なんて……」
「してる。無意識かもしれないけど」


「………」

「少なくとも谷崎はそう思ってるだろうね。だから誤解したんじゃないかな。それに、告白の件を直接本人に聞くなんてどうかしてる」



  愛里紗は否定されると暗い顔を俯かせた。
  すると、黙って聞いていたミキが横から口を挟んだ。



「ねぇ、あーりんはどうしたかったの?」



  ミキは愛里紗の顔をヒョイと覗き込んで、母親のように優しく尋ねた。



  悪い所をキッパリ叱ってくれるノグは、父親のような役割で、優しく援護してくれるミキは母親のよう。



  愛里紗は涙をゴシゴシと手の甲で涙を拭い、顔を上げた。



「……谷崎くんに想いを伝えたかった」



  掛け時計の秒針が聞こえるほどボソッと小さく呟く愛里紗に対し、ノグは呆れ半分でため息をつく。



「谷崎自身があんたの言動で混乱してるのに、そのタイミングで告白?  間違ってるでしょ」

「そうだね……。ミクが先に告白したからつい焦っちゃって」



  ノグの言う通り。
  ミクを悪く言いたくないという思いと、遠回しな言動が誤解を生む要因に。

  友達に気付かせてもらって知った間違いだらけの自分。
  反省点は山ほど。
  そして、それを克服するのは自分自身。

  人の言葉に左右されないように、信念を持たなければならない。



「私、谷崎くんに謝りたい。早く仲直りしたい」

「うん、そうしな」

「谷崎くんも愛里紗と同じように仲直りしたいと思ってるよ」



  ノグの家に来た時は、私が余計な事を言ったから谷崎くんとは縁が切れちゃったかなと思っていたけど……。
  二人に相談したら気持ちが少し楽になった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

【完結】失いかけた君にもう一度

暮田呉子
恋愛
偶然、振り払った手が婚約者の頬に当たってしまった。 叩くつもりはなかった。 しかし、謝ろうとした矢先、彼女は全てを捨てていなくなってしまった──。

社長室の蜜月

ゆる
恋愛
内容紹介: 若き社長・西園寺蓮の秘書に抜擢された相沢結衣は、突然の異動に戸惑いながらも、彼の完璧主義に応えるため懸命に働く日々を送る。冷徹で近寄りがたい蓮のもとで奮闘する中、結衣は彼の意外な一面や、秘められた孤独を知り、次第に特別な絆を築いていく。 一方で、同期の嫉妬や社内の噂、さらには会社を揺るがす陰謀に巻き込まれる結衣。それでも、蓮との信頼関係を深めながら、二人は困難を乗り越えようとする。 仕事のパートナーから始まる二人の関係は、やがて揺るぎない愛情へと発展していく――。オフィスラブならではの緊張感と温かさ、そして心揺さぶるロマンティックな展開が詰まった、大人の純愛ストーリー。

彼女にも愛する人がいた

まるまる⭐️
恋愛
既に冷たくなった王妃を見つけたのは、彼女に食事を運んで来た侍女だった。 「宮廷医の見立てでは、王妃様の死因は餓死。然も彼が言うには、王妃様は亡くなってから既に2、3日は経過しているだろうとの事でした」 そう宰相から報告を受けた俺は、自分の耳を疑った。 餓死だと? この王宮で?  彼女は俺の従兄妹で隣国ジルハイムの王女だ。 俺の背中を嫌な汗が流れた。 では、亡くなってから今日まで、彼女がいない事に誰も気付きもしなかったと言うのか…? そんな馬鹿な…。信じられなかった。 だがそんな俺を他所に宰相は更に告げる。 「亡くなった王妃様は陛下の子を懐妊されておりました」と…。 彼女がこの国へ嫁いで来て2年。漸く子が出来た事をこんな形で知るなんて…。 俺はその報告に愕然とした。

カーテン越しの君

風音
恋愛
普通科に在籍する紗南は保健室のカーテン越しに出会ったセイが気になっていた。ふとした拍子でセイが芸能科の生徒と知る。ある日、紗南は喉の調子が悪いというセイに星型の飴を渡すと、セイはカーテン越しの相手が同じ声楽教室に通っていた幼なじみだと知る。声楽教室の講師が作詞作曲した歌を知ってるとヒントを出すが、紗南は気付かない。セイはお別れをした六年前の大雪の日の約束を守る為に再会の準備を進める一方、紗南はセイと会えない日々に寂しさを覚える。

すれ違ってしまった恋

秋風 爽籟
恋愛
別れてから何年も経って大切だと気が付いた… それでも、いつか戻れると思っていた… でも現実は厳しく、すれ違ってばかり…

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

忙しい男

菅井群青
恋愛
付き合っていた彼氏に別れを告げた。忙しいという彼を信じていたけれど、私から別れを告げる前に……きっと私は半分捨てられていたんだ。 「私のことなんてもうなんとも思ってないくせに」 「お前は一体俺の何を見て言ってる──お前は、俺を知らな過ぎる」 すれ違う想いはどうしてこうも上手くいかないのか。いつだって思うことはただ一つ、愛おしいという気持ちだ。 ※ハッピーエンドです かなりやきもきさせてしまうと思います。 どうか温かい目でみてやってくださいね。 ※本編完結しました(2019/07/15) スピンオフ &番外編 【泣く背中】 菊田夫妻のストーリーを追加しました(2019/08/19) 改稿 (2020/01/01) 本編のみカクヨムさんでも公開しました。

処理中です...