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第一章

1.一冊の卒業アルバム

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「コレ見てもいい?」



  同じ高校に通う親友 さきがピンッと指をさした先は、昨日から机に開きっぱなしにしている小学校の卒業アルバム。

  今日は下校後に泊まりに来ていて、ベッドに腰を下ろした際にたまたま目についた様子。



「見てもいいけど……。ちょっと恥ずかしい」

「大丈夫、大丈夫!  ……で、愛里紗は何組だったの?」


「もー、他人事だと思って。二組だよ。六年二組」



  咲はアルバムを中央テーブルに置いてから座ってページをパラパラとめくる。



「あったあった!  江東 愛里紗えとう ありさ。これだっ!  うわー、愛里紗は昔から全っ然変わってないね。そのまんま」

「おかしいなぁ~。その頃から比べるとセクシーになってるはず」


「待って~!  どの辺がセクシーになったのぉ~?  私に言ってごらん」

「あはは、やめてよぉ」



  私達はアルバムを見ながらキャーキャーとじゃれ合って、たわいもない話を続けた。


  ーーしかし、この瞬間から運命の歯車が狂い始めていた。

  いや、正しくは自分の知らないずっと昔から……。



  咲は高校一年生から二年間同じクラス。
  少し癖っ毛で鎖骨までの栗色の髪。
  前髪は短くて斜めに流している。
  まつ毛が長くて色白。
  ほんのりピンクなほっぺはまるでお人形さんのよう。

  甘えん坊な性格は、男子からは好意があると度々勘違いされてしまうほど。
  私自身も優しくて可愛らしくてお人形さんのような咲が大好きだ。



  ーーそう、今でも忘れられない。
  あの日が来るまでは何も疑わずに過ごしていた。


  彼女が裏切りさえしなければ。
  誤魔化し通し続けていてくれれば。
  急に素直にならないでいてくれれば……。

  静かに眠り過ごしていた心は呼び覚まされなかったかもしれない。

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