ポンコツヴァンパイアが貧血男子を好きになってもいいですか?

風音

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第四章

27.買い出し

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  ーー今日はレク係の4人で、校外学習のレクレーションの備品の買い出しに来た。
  場所は、総合ディスカウントストアのパーティーグッズコーナー。
  4人が不揃いに歩いて商品を眺めていると、怜くん私の肩を叩いた。



「ねねねっ、美那っち!  こんなのどう?」

「えっ、何?」



  呼ばれて振り返ると、彼は目玉が飛び出すヒゲ付きメガネを装着していてボーンと目だまが飛び出してきた。



「う……ぎゃあぁぁぁ。何それ~!  目ん玉飛び出てるぅぅ!  怖いよ~」

「怖い時は守ってやるぜ。俺に任せな」と、目ん玉が飛び出したまま紳士ちっくに言うと……。

「説得力ないっつーの」紗彩が後ろから赤いメガホンで怜の頭をポンっと叩いた。


「いでっ!」

「ゆっくり見てる暇なんてないんだから真剣に考えて!」



  私は河合さんに叱られてる怜くんを見てプッと吹き出すと……。



「美那。コスプレコーナーはこっちだから」


  
  滝原くんは怜くんから引き離すように私の腕を引いて先へ進んだ。
  私は想定外の事態に目が丸くなった。

  えっ、えええっっ!
  滝原くんが私だけ連れて行こうとしている事にびっくりだけど、いま『美那』って呼び捨てに?
  さっきまで『佐川さん』って呼んでたのに……。

  怜くんは、私の腕を掴んでいる滝原くんの手首をすかさず握りしめて甘え口調で言った。



「夏都ぅ~。せっかく来たんだからもうちょっと楽しもうよ~」

「触るな。さっさと決めて打ち合わせするから」



  滝原くんは不機嫌に手を振り払うと、1人でスタスタと先へ進んで行く。
  一方、取り残された怜くんは切ない眼差しで滝原くんの背中を見ていた。

  コスプレコーナーに到着すると、大量に陳列されているコスプレを見て思わず声が漏れた。



美那「うっわぁ!  コスプレってこんなに沢山種類があるの?」

怜「本当だ、すげぇ沢山ある。ナースにメイドに自衛隊に囚人に全身タイツまで……」

紗彩「あれ……?  ヴァンパイアのコスプレもある」


美那「うそぉ、見たい!」



  私は河合さんの隣へ行って一緒にヴァンパイアの衣装を眺めた。
  実際に着ていたヴァンパイア界の私服よりも全然可愛い衣装に思わず目は釘付けに。



紗彩「ミニスカートもあるんだ。網タイツとの相性はいいね」

美那「マントが黒レースになってるやつもある。……あ、こっちはロングスカートに長いスリットが入ってセクシー」

怜「美那っちは絶対ミニスカートの方が合ってる!  この衣装を着て俺に吸血して欲しい~」


美那「……あは……あは……あはは……(怜くんがターゲットだったらドリンクバーのように好きな分だけ吸血させてくれそうだね)」

紗彩「その前に私が身体中の水分がなくなるくらいたっぷり吸血してあげる」


美那「……(正直笑えない)」

怜「いや、俺の血は美那っちしか吸わせないっ!」

紗彩「あっそ」

夏都「ハロウィンじゃないんだからヴァンパイアの衣装は無し。白い衣装の幽霊にするよ」



  背後から現れた滝原くんは、見本で飾ってあった白い着物とボサボサのロングヘアーのかつらを被って私達に見せた。



紗彩「やだぁ。その衣装全然かわいくない」

美那「それは誰が着るの?」

夏都「怜」

怜「は?  俺?!  無理無理。警察官なら着てもいいけど」


夏都「山林から警察官が出て来たら何事かって思うだろ?  肝試しはリアリティが重要だから」

怜「俺は無理だって~。夏都がやれよ~」


夏都「俺は似合わないから無理だけど、お前ならイケる」

美那「ぷぷっ!」



  なんか、こーゆーの初めてだけど楽しい。
  目標を持って友達と相談したり協力したりして、一つのものを作り上げていく。
  ここへ来る前は人間界は地獄だと聞いてたけど、全然そんな事ない。
  こんな楽しい事が待ち受けていたなんて、全然知らなかったよ。

  会計係の私がレジを終えると、滝原くんは購入したばかりのレジ袋を私の手からヒョイと取り上げた。



「荷物重いから持つよ」

「えっ、いいよ。これくらい」と、荷物を取り返そうとして手を差し伸ばすと……。


「美那の手が忙しいのが嫌なだけ」

「へっ?!(それってどういう意味?)」


「あはは、嘘。俺の方が力あるから」

「ありがとう……」



  夏都は冗談まじりでそう言うと、美那は照れくさそうに微笑む。
  しかし、その様子を後ろから見ていた怜は口をへの字にしてぶっすりしていると、紗彩は肩をポンっと叩いた。



「あんたの負け~」

「……なんか、変だ。俺の心ん中」


「えっ?」

「俺、生まれ変わるから」



  怜は夏都と美那の笑ってる顔を瞳に映したまま、グラグラと煮え立つ感情にブレーキをかけていた。

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