Re.start ～学校一イケメンの元彼が死に物狂いで復縁を迫ってきます～

第二十二章

161.奏

  卒業式の予行練習の束の間の休憩時間にトイレから出てくると、体育館の出入口付近で奏と遭遇した。
  奏は一人でいる私に気付くと一緒にいる女の子とバイバイしてから声をかけてきた。



「よっ！  おつかれさん。明日で卒業だね」

「うん、なんか早いね。みんなと会えなくなると寂しくて……。ねぇ、いま少し話せる？  大事な話をしたいんだけど……」


「俺に話？  うん、いいよ」



  奏とも明日でお別れ。
  今は蓮と付き合ってないから、卒業を機に会えなくなってしまうかもしれない。
  明日は卒業式だから、ゆっくり話せるのは今日が最後かもしれないと思って引き止めた。


  イケメントリオの一員で美形で王子様系の奏。

  3股4股が当たり前だったせいか、奏の目の前での女同士のケンカは日常茶飯事だった。
  奏は止めもせずにいつもオロオロしてるだけ。
  どちらかの肩を持ったら余計憤慨するから仲裁しないと言ってた事を思い出した。
  女ったらしで本当にどうしようもない性格だけど、いつも私を気にかけてくれた。

  蓮との仲を心配してくれたり、蓮の情報を教えてくれたり、大和と一緒になって身を守ってくれたり。
  時には中立的な立場で一喝してくれたお陰で過ちに気付かされた事もあった。

  だから、どうしても最後のお礼を言いたかった。



  梓は奏を体育館の昇降口の先の渡り廊下に連れ出して、腰高の壁に両手をかけて二人で校庭を眺めながら話し始めた。



「奏……、今まで仲良くしてくれてありがとう。蓮の事でいっぱい迷惑かけちゃったね。奏がアドバイスをくれたから前向きになれたよ」

「何、最後の言葉？」


「まぁ……、そんな感じ」

「お前も色々大変だったな。嫌がらせを受けたり、蓮と付き合ったり別れたり。忙し過ぎて3年間あっという間だっただろ」


「あはは、そうかもね。蓮と付き合い始めてから良い刺激と悪い刺激を両方受けながら過ごしてたから、どちらかと言うと忙しかった方なのかもしれないね」

「蓮とはどう？  上手くいきそう？」


「実は先週の金曜日にケンカしちゃって……。次の登校日には謝ろうと思ってたんだけど、蓮は暫く学校に来なかったし」

「卒業間近にケンカなんかするなよ」


「わかってるよ。でもね、お互い受験のストレスを抱えていたから心のズレが生じてたみたい」

「……で、これからどうするつもりなの？」



  奏はクルリと校庭に背を向けると、背中を壁にもたれかかせた。
  奏は体育館に戻っていく生徒達の姿を瞳に映す。