156 / 184
第二十二章
156.エスカレートする花音の悪口
しおりを挟む✼••┈┈••✼••┈┈••✼••┈┈••✼••┈┈••✼
「あいつ、諦め悪くない? もう別れてるのに、まだしつこく蓮の周りをうろついてるよ。勉強を教えてもらうフリして近づいちゃってさぁ」
「自分がブスだって自覚してねーし。ねぇ、花音が鏡でもプレゼントしてあげれば? ま、あいつが美しくなるまで100年かかりそうだけどぉ」
「あっはっは……、やっだぁ。せっかくプレゼントした鏡がショック過ぎて割れちゃうよ~」
「蓮は優しいから近付けばまたやり直してもらえると勘違いしてんじゃない?」
「人の優しさを悪用するなんて最低」
「ブスの癖に色目使っちゃってさぁ。まぁ、その色目すらキモいんだけど」
「ちょっと~、花音。言い過ぎ~」
花音の人格崩壊が幕開けした。
しかも、ギャル友達を巻き込むから余計迷惑極まりない。
花音はどうやら先日のバレンタインで蓮にフラれてしまったとか。
その話は噂で聞いた。
だから、報復措置はエスカレートしていく。
蓮と付き合い始めてから毎週のように嫌味は言われてきたけど、女子更衣室だけでは気が収まらないようで、所構わず悪口を言うようになっていた。
今日は教室に男子が少ない昼休みを狙い、後方扉の片隅で仲良しメンバーと、私に聞こえるように敢えて大きな声で言っている。
悪口は聞き慣れてるけど、これ以上エスカレートしないように黙って耐え抜くしかなかった。
すると……。
「いつもそんな感じで悪口言ってんの?」
扉からふらりと姿を現した蓮。
扉側の壁に背もたれしている花音達に怖い顔を向けてそう告げた。
人目を憚らずに悪口を言ってた結果、たまたま壁1枚挟んだ先の蓮の耳に届いていた。
一方の花音達は、注意力が散漫してなりふり構わず悪口を話していた結果、災いを招く事に。
花音は蓮と目が合ったと同時に笑顔が消えた。
「『あいつ』って梓の事を指してるよね。俺の周りがどーのこーのって」
「……やっだぁ。蓮、違うってば! 私達は悪口なんて言ってないよ」
「そうそう。私達じゃないよ~」
「蓮の聞き間違いなんじゃない?」
「ふざけんな! しっかりこの耳で聞いたから間違いなんかじゃない。お前らが誤魔化そうとしても、俺にはわかってんだよ!」
蓮の怒号が教室に響き渡った瞬間、それまで賑やかだった教室内がシンと静まり返った。
花音達はバツが悪そうにお互い顔を見合わせた。
「真相はわからないけど、その話が今始まったものとは思えない」
「ごっ、誤解だよ、蓮……」
「あたし達が普段から人の悪口を言う訳ないよ」
「俺はあいにく勘が良くてね。自分の悪口を言われるのは全っ然構わないけど、どうして梓なの? あいつがお前らに何かした? しかも、人前で堂々と悪口を言うその神経どうかしてる」
「……」
厳しく詰め寄る蓮にバッチリ悪口を聞かれた花音達は返す言葉がない。
蓮の反論は、いつも強気で怖いもの知らずの花音達を一瞬で黙らせてしまうほど強烈に効いていた。
梓は黙って様子を見守っていたが、すっかり機嫌を損ねてしまった蓮の冷たい視線は次に自分へと向けられる。
「お前……。ちょっと来い」
「……え、私?」
「いいから早く来い!」
蓮は声を荒げておかんむり状態のまま梓の手首を掴んで、バタバタと足跡を立てながら教室を出て行った。
梓は手を引かれながら蓮の背中に言う。
「蓮……、どうしたの? ねぇ、蓮ってばぁ! どうして私に怒ってるの?」
「……」
蓮は無言のまま廊下に居る人々の間を潜り抜けてひと気の少ない理科室の方へ向かっている。
2年付き合っていた私にはわかる。
蓮の背中から醸し出す悲痛な叫びが……。
0
お気に入りに追加
11
あなたにおすすめの小説
最後の恋って、なに?~Happy wedding?~
氷萌
恋愛
彼との未来を本気で考えていた―――
ブライダルプランナーとして日々仕事に追われていた“棗 瑠歌”は、2年という年月を共に過ごしてきた相手“鷹松 凪”から、ある日突然フラれてしまう。
それは同棲の話が出ていた矢先だった。
凪が傍にいて当たり前の生活になっていた結果、結婚の機を完全に逃してしまい更に彼は、同じ職場の年下と付き合った事を知りショックと動揺が大きくなった。
ヤケ酒に1人酔い潰れていたところ、偶然居合わせた上司で支配人“桐葉李月”に介抱されるのだが。
実は彼、厄介な事に大の女嫌いで――
元彼を忘れたいアラサー女と、女嫌いを克服したい35歳の拗らせ男が織りなす、恋か戦いの物語―――――――
推活♡指南〜秘密持ちVtuberはスパダリ社長の溺愛にほだされる〜
湊未来
恋愛
「同じファンとして、推し活に協力してくれ!」
「はっ?」
突然呼び出された社長室。総務課の地味メガネこと『清瀬穂花(きよせほのか)』は、困惑していた。今朝落とした自分のマスコットを握りしめ、頭を下げる美丈夫『一色颯真(いっしきそうま)』からの突然の申し出に。
しかも、彼は穂花の分身『Vチューバー花音』のコアなファンだった。
モデル顔負けのイケメン社長がヲタクで、自分のファン!?
素性がバレる訳にはいかない。絶対に……
自分の分身であるVチューバーを推すファンに、推し活指南しなければならなくなった地味メガネOLと、並々ならぬ愛を『推し』に注ぐイケメンヲタク社長とのハートフルラブコメディ。
果たして、イケメンヲタク社長は無事に『推し』を手に入れる事が出来るのか。
兄貴がイケメンすぎる件
みららぐ
恋愛
義理の兄貴とワケあって二人暮らしをしている主人公の世奈。
しかしその兄貴がイケメンすぎるせいで、何人彼氏が出来ても兄貴に会わせた直後にその都度彼氏にフラれてしまうという事態を繰り返していた。
しかしそんな時、クラス替えの際に世奈は一人の男子生徒、翔太に一目惚れをされてしまう。
「僕と付き合って!」
そしてこれを皮切りに、ずっと冷たかった幼なじみの健からも告白を受ける。
「俺とアイツ、どっちが好きなの?」
兄貴に会わせばまた離れるかもしれない、だけど人より堂々とした性格を持つ翔太か。
それとも、兄貴のことを唯一知っているけど、なかなか素直になれない健か。
世奈が恋人として選ぶのは……どっち?
隠れオタクの女子社員は若社長に溺愛される
永久保セツナ
恋愛
【最終話まで毎日20時更新】
「少女趣味」ならぬ「少年趣味」(プラモデルやカードゲームなど男性的な趣味)を隠して暮らしていた女子社員・能登原こずえは、ある日勤めている会社のイケメン若社長・藤井スバルに趣味がバレてしまう。
しかしそこから二人は意気投合し、やがて恋愛関係に発展する――?
肝心のターゲット層である女性に理解できるか分からない異色の女性向け恋愛小説!
イケメン御曹司、地味子へのストーカー始めました 〜マイナス余命1日〜
和泉杏咲
恋愛
表紙イラストは「帳カオル」様に描いていただきました……!眼福です(´ω`)
https://twitter.com/tobari_kaoru
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
私は間も無く死ぬ。だから、彼に別れを告げたいのだ。それなのに……
なぜ、私だけがこんな目に遭うのか。
なぜ、私だけにこんなに執着するのか。
私は間も無く死んでしまう。
どうか、私のことは忘れて……。
だから私は、あえて言うの。
バイバイって。
死を覚悟した少女と、彼女を一途(?)に追いかけた少年の追いかけっこの終わりの始まりのお話。
<登場人物>
矢部雪穂:ガリ勉してエリート中学校に入学した努力少女。小説家志望
悠木 清:雪穂のクラスメイト。金持ち&ギフテッドと呼ばれるほどの天才奇人イケメン御曹司
山田:清に仕えるスーパー執事
粗暴で優しい幼馴染彼氏はおっとり系彼女を好きすぎる
春音優月
恋愛
おっとりふわふわ大学生の一色のどかは、中学生の時から付き合っている幼馴染彼氏の黒瀬逸希と同棲中。態度や口は荒っぽい逸希だけど、のどかへの愛は大きすぎるほど。
幸せいっぱいなはずなのに、逸希から一度も「好き」と言われてないことに気がついてしまって……?
幼馴染大学生の糖度高めなショートストーリー。
2024.03.06
イラスト:雪緒さま
契約結婚!一発逆転マニュアル♡
伊吹美香
恋愛
『愛妻家になりたい男』と『今の状況から抜け出したい女』が利害一致の契約結婚⁉
全てを失い現実の中で藻掻く女
緒方 依舞稀(24)
✖
なんとしてでも愛妻家にならねばならない男
桐ケ谷 遥翔(30)
『一発逆転』と『打算』のために
二人の契約結婚生活が始まる……。
幸せの見つけ方〜幼馴染は御曹司〜
葉月 まい
恋愛
近すぎて遠い存在
一緒にいるのに 言えない言葉
すれ違い、通り過ぎる二人の想いは
いつか重なるのだろうか…
心に秘めた想いを
いつか伝えてもいいのだろうか…
遠回りする幼馴染二人の恋の行方は?
幼い頃からいつも一緒にいた
幼馴染の朱里と瑛。
瑛は自分の辛い境遇に巻き込むまいと、
朱里を遠ざけようとする。
そうとは知らず、朱里は寂しさを抱えて…
・*:.。. ♡ 登場人物 ♡.。.:*・
栗田 朱里(21歳)… 大学生
桐生 瑛(21歳)… 大学生
桐生ホールディングス 御曹司
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる