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第二十一章

148.茶化す男達

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「……ねぇ、どうして扉の鍵をかけるの?」



  男子三人にそれぞれ目線を向けて怯えた声で問い尋ねた。
  すると、中央の男がゆっくりとした足取りで目の前に来て足を止める。



「俺ら昨日のバレンタインで女にフラれてね。……その理由がさ、蓮に告白するからだってさ。自分の男をあっさり捨てたくなってしまうくらい、柊が魅力的なんだとよ」

「……だから何?」


「菊池は柊の女を長く続けてたって事は、よーっぽどいい女なんだろうな。なら、俺らにも少し分けてくんない?  そうすれば、さすがのあいつも身の程を知るだろうな」

「何言ってるの?  蓮とはもうとっくに別れたの!  腹いせに私を襲っても蓮は何とも思わないんだから!」


「そんなの知ったこっちゃねーよ」



  唾を撒き散らしながら怒鳴り散らした男は足元の白いマットをドカっと蹴り飛ばした。
  その瞬間、梓はビクッと震え上がる。



  すぐにでも逃げ出したいけど、足が震えて動けない。
  まるで、蛇に睨まれた蛙のように……。

  右隣まで接近してきた男は、スマートフォンを向けて動画撮影を始める。
  左隣の男は、扉前にサッと移動して出口を塞ぐ。
  正面の男は、人差し指で首元のネクタイを緩めながら、後ずさりしている私に迫り寄って来た。



「やめてよ!  触んないで!」

「おーっと。そんなに睨まないで。嫌がると尚更燃えちゃう~」

「『やめてよ!  触んないで!』だってさ~。かっわいぃ~」



  梓は迫り寄る男の右手を振り払う。
  だが、男達は嫌がる梓を茶化して笑う。



  どうしよう……。
  このままだと、彼等の思い通りにされてしまう。

  彼等は自分がフラれた原因は蓮と思い込んでるみたいだけど、蓮自身は何も知らないし、怒りのやり場を向ける相手が間違っている事に気付いていない。

  勿論、私の話を聞き入れるつもりなんてない。
  私を傷付ければ蓮も傷付くと思ってる。

  でも、そんなの間違ってる。
  腹いせで人を傷付けても、自分達には何のメリットもないのに……。


  蓮、怖いよ……。
  助けて、お願い…………。



  恐怖で目をギュッと瞑って心で強く願っていても、当然蓮の耳までは届かない。
  正面の男にドンっと肩を押されて突き倒されて恐怖のあまり動けなくなると、制服のリボンをいとも簡単に剥ぎ取られた。

  ーーだが、正面の男がシャツの第二ボタンに手をかけた瞬間。

  ジリリリリリ……

  突然、耳を塞ぎたくなるほどの大音量の非常ベルが体育館中に鳴り響いた。

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