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第二十章
142.蓮の人気度
しおりを挟む「あ……あはは。ちゃんと持ってきたはずだけどなくなっちゃった。ひょっとしたら、チョコを盗んだ罰として誰かに盗まれちゃったのかも」
「おいおい、よく考えてみろ。お前以外にチョコを盗む奴はいねぇだろ。あと30秒以内に出さないと受け取らないからね。30、29、28……」
「もーっ、イジワル! ……あ、もしかして、今朝鞄からチョコが散らばった時に他のチョコと一緒に紛れ込んじゃったかも。ちょっと蓮のリュックの中を見てくれる?」
「どれどれ」
蓮は身体を前屈みにして足元に置いてあるリュックのファスナーを開けた。
梓は隣からリュックの中を一緒に覗き込む。
すると、蓮のリュックの中は下駄箱や机から盗んだ数以上に、箱やラッピング袋が増えていた。
きっと、休み時間の度に呼び出されて受け取った分のチョコも含まれているはず。
「お前のはどれ?」
「こんなに大量にあったらすぐ見つからないよ。……ほら、リュックを貸してごらん」
梓は蓮のリュックを膝に乗せて、手でササっと中身を漁るが、同じようなラッピングのものが多過ぎて、自分のチョコが見当たらない。
リュックの中にぎっしりと詰まっているチョコの数が蓮に想いを寄せるライバルの数。
もしかしたら、勇気がなくて中にはチョコを渡せなかった人がいたかもしれない。
梓は膝にリュックの重みを感じると、改めて蓮の人気度を痛感した。
かき混ぜるようにガサゴソと漁ってるうちに、多数のチョコの中に紛れた自分のチョコが入った箱を発見。
嬉しくて思わず笑みが溢れた。
「あっ、あった! 蓮、私のチョコ見つかったよ」
「おぉ! 早くちょーだい」
だが、取り出したばかりの箱は、他の箱に押し潰されてしまっていたせいかところどころ凹んでいる。
紬とあれこれ相談しながら選んだ箱。
蓮がこの箱を開けてくれるのを何度イメージした事だろうか……。
梓は右隣に座る蓮に、笑顔を消失させたままヒョイとチョコを渡した。
「はい……」
「ちょっと待て。プリントを後ろの人に配るような感覚で素っ気なくチョコを渡すなよ。バレンタインなんだから、ちょっとは恥じらうとか、気持ちを込めながら渡したりするのが普通だろ」
「だって、箱が……。悩みながら紬と一緒に選んでもらったのに、ここんとこ潰れちゃったよ」
「そんなちっぽけな事気にすんなって。大事なのは中身だろ。人間と一緒!」
「うん……」
「でもさぁ……。俺、知らない間にお前からチョコを受け取ってたんだな。きっと今年もお前からチョコを受け取る運命だったんだなって」
蓮はそう言ってクッと笑い、受け取ったばかりの箱からリボンを解いて膝の上で中を開いた。
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