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第二十章
138.怪しい梓
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「あれ? 今日はバレンタインなのにチョコの数が少ないな……」
朝、学校に登校した俺は、靴を履き替えようとして下駄箱の扉を開けた。
毎年、下駄箱には上履きが見えないくらいバレンタインチョコで敷き詰められているのに……。
1、2、3……。
下駄箱の中を覗き込んでざっと目で数えてみても、中に入っているバレンタインチョコは3つしか見当たらない。
今年度は後夜祭のステージ上で梓に告白をしたから、チョコの数が激減したのかな?
下駄箱に居る時はチョコが減った原因をその程度しか考えていなかった。
ところが、教室に入ってから左斜め前の席に座っている梓に挨拶をすると……。
「梓、おはよ!」
「えっ! (ギクッ)あっ、蓮。おはよ……」
今日の梓はいつになく背筋がピンと伸びて、ひきつり笑顔を向けてきた。
しかも、歯切れが悪く挙動不審気味に目線を左右させる。
不信感を募らせながら自分の席に座って手探りで机の中を漁ると……。
……ない!
ない! ない! ない!
最低でも1つくらいは机の中に入ってるだろうと思われるチョコが、今日は1つも入っていない。
毎年、隙間なく埋め尽くされていたあのチョコが1つも入ってないなんて……。
まぁ別にいいやと思って、何気なく梓の方に目線を移した。
ところが、梓の机の横にかけられている鞄に異変を感じた。
梓の鞄は原型を留めていないほどパンパンに膨れ上がっている。
普通、学生鞄と言ったら丸みを帯びているもの。
しかし、今日に限って何故か所々角ばっている。
俺は梓の鞄が何故歪な形をしているかがとても気になった。
「あのさぁ……。お前の鞄、今日はやけに角ばってない?」
「えっ! ……そう? いつも通りだよ(ギクッ!)」
蓮の下駄箱。
そして、机の中。
各場所にギッシリと詰まっていたバレンタインチョコを、本人の手中に渡る前に全て回収して鞄に詰め込んだ。
だから、内心チョコを盗んだ事がバレてしまったのではないかと思ってビビった。
蓮が机の中を覗き込んだ後に前方座席の私を見てきたから、カムフラージュで教科書を開いて勉強するフリをしてたけど、実際は口から心臓が飛び出しそうだった。
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