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第十八章

125.悪知恵

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  蓮の自宅には深夜に到着。
  既に両親は寝ているようで、私達の帰宅を知らない。

  暗闇に包まれている蓮の自宅。
  玄関に上がると、泥棒のような足取りで二階に進んだ。
  どんなに部屋が暗くても、蓮の部屋までは目をつぶったままでも辿り着ける自信がある。


  勢い余ってお泊まりする事を決めてしまっただけに、明日の両親の反応が気になるところだ。
  家に潜入したからには一刻でも早く復縁を迫りたい所だが、酔っ払ってるフリをしているから話はまともに取り合ってはもらえないだろう。


  蓮は部屋に着くと、扉を開けて照明のスイッチをオン。
  次いで部屋に入り、部屋の掛け時計で現在の時刻を確認。
  すると、時計の針は24時半をさしていた。


  もうこんな時間かぁ……。
  明日こそは思いを伝えたいけど、1分でもチャンスを無駄にしたくない。
  寝るまでの時間に少しでも蓮の感情を動かせればなぁ。
 
  ……あっ、そうだ!
  いい事思いついた。



  梓は蓮の部屋に足を踏み入れた途端、一直線にタンスに向かって引き出しを開けた。
  すると、先程まで背負っていたリュックを床に置いている蓮は、タンスを開く音に気付いて振り返った。



「何でタンスを勝手に開けてるんだ」



  蓮は冷ややかな目つきでタンスの中をあさる梓に言う。



「去年お揃いで買ったグレーのパーカーがあるでしょ。もうおばさんは寝ててパジャマを借りれないから、パーカーをパジャマ代わりにしようかと思って。いま着てる服じゃ窮屈で寝れないよ」

「バッ、バカ!  そんなの別れた時に捨てたから……。やめろっ!  探すな……」



  別れた時に捨てた?
  やめろ?
  探すな?

  あれ~、おかしいな。
  先日机の引き出しを開けて見た時は、私との2年間の思い出を捨てもせずに綺麗に保管してあったのに。

  しかも、そんなに早口で引き止めるなんて余計怪しい。
  目ぇ泳いでるし。

  もしかして、嘘をついてる?
  他の思い出は捨てないで、お揃いだったパーカーだけを捨てる訳がない。



  蓮は焦った様子で止めにかかったが、タンスの中を10秒と探さぬ間にパーカーはひょっこりと顔を出した。



「コレは何かな~?  捨てたんじゃなかったの~?」

「……っ!」


「どうしてイチイチ小さなウソをつくのよ。パーカー借りるからね」

「……」



  嘘をついて目を合わせられない蓮。
  目の色を変えて嘘をついても、真実はそこに待っている。

  素直にあるって言えばいいのに、男ってどうしてこんなに小さなプライドを守ろうとするのかしら。


  卒業式まで残り約1ヶ月。
  出来れば卒業までには復縁したい。
  半ば強引に家に侵入したからには、この1泊2日内で境界線の領域まで足を踏み入れたいところだ。

  急遽、話をせざるを得なくなった蓮。
  親が寝静まっている静かな環境と、彼の部屋ならではの密室空間により、私の悪知恵は更にエスカレートへ。

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