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第十二章
87.交錯する想い
しおりを挟む私達はこの場で話を続ける事は危険と判断した。
落ち着いた場所で話をするという約束を交わして一度教室に戻った。
大和は耳にイヤホンをつけて音楽を聴きながら机に寝そべる蓮を起こして一緒に教室を出て行き、私と紬は学校を出てから駅前のファーストフード店へ移動する。
レジカウンターで注文したドリンクを持って、一階の二人席に向かい合わせに座った。
紬は大和のお陰で話を聞いてくれる気になったけど、真実を隠していたのが許せないのか、目を合わせられないほど気まずい空気が流れていた。
「高梨先生とはいつから付き合ってるの?」
「……7月下旬。夏休みに入る前日から」
「そっか。私はその頃から二人が付き合ってる事を知らなかったんだよね。私達、親友なのに……」
「ごめん。学校にバレるのが怖くて言えなかった。油断して先生の話を挙げてしまったらマズイと思って……」
紬は自分勝手な私にガッカリしている。
しかし、親友とはいえ先生との関係がバレてしまった以上、ありのまま話さなければならないと思った。
蓮と別れた直後に高梨先生と個人的に関わりだした時から、先日のデート中に蓮に呼び出されて先生とのデートをすっぽかして蓮の家に向かった話まで、紬に隠していた話の全てを伝えた。
紬は何度も頷きながら、無表情のまま黙って話を聞いていた。
「私は真実を知らずに蓮くんとの幸せを願ってたよ。だけど、先生との関係を聞いた今でも蓮くんとの復縁を願ってる」
「……でも、私には先生がいるから」
「先生とは少しぎこちないんでしょ? じゃあ、早く別れて蓮くんとやり直せばいいのに。それじゃあダメなの?」
「うん……、ダメ。気持ちが不透明になっているのはいっときのものだと思うし、先生は関係改善を図るために努力してくれているから……」
「よく思い出して。校長室の件だって蓮くんが助けてくれたんでしょ?」
「うん……」
「それに、梓が嫌がらせを受けた時だって、一番に力になってくれたのは蓮くんじゃないの? 付き合ってた時も先日のお弁当の件の時も。蓮くんは梓だけを一途に思ってるよ」
「……でも、蓮とはもうとっくに終わったから」
「梓……」
私は頑なに首を横に振るだけ。
私達を間近で見ていた紬にとっては、到底納得がいかないだろう。
紬はどんなに説得しても一筋縄ではいかない私に瞳を潤ませた。
「もう……。梓はバカなんだから」
口を固く結んで肩を震わせている紬の左目からは、ポロリと涙が一粒こぼれ落ちた。
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