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第十二章
83.花音への仕返し②
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「本っっ当にあいつさぁ、蓮の彼女だからっていい気になってるんじゃないの? 月とスッポンのクセに鏡見て気付けよってカンジ」
「確かに。あの二人は似合ってないよね~。蓮は花音と付き合えばバランス良いのに」
「あいつはイケジョコンテストに選出すらされてないのに、蓮の彼女だからっていい気になってるよねぇ」
今日も女子更衣室で繰り広げられる、花音達の悪口トーク。
ここまで来るとほぼ名指し。
何故ここまで酷くなったかと言うと、先日のカラオケドタキャンの件がバレてしまったらしくて、今日は一段とご立腹な様子。
花音は諦めが悪い上にしつこい。
自分が他の男と交際していても、蓮の事は忘れない。
ある意味、一途。
だから余計面倒くさい。
だけど、延々と悪口を言われるのは正直胸くそ悪い。
ーーそんなある日の体育の授業中。
ズサーッ……
「あーっ、いたた……」
クラス全員がグラウンドを走ってる最中、蓮は目の前で転んだ花音に気付いて足を止めて近寄った。
「大丈夫?」
「転んで膝をすりむいちゃった。痛くて一人では立てないから手を貸してくれない?」
「いいよ。保健室まで一緒に行こうか?」
「ごめーん。お願ぁい」
私は二人のそんなやりとりを10メートル後ろから見ていた。
花音は本当に構ってちゃん。
怪我をしてまで蓮にしがみつくなんて、実に演技派女優以上。
あっさりと騙された蓮は、これが演技だとも知らずに肩を貸している。
「痛っ。足がつっちゃった……」
「梓っ、大丈夫?」
保健室に向かおうとしている蓮達を見ながら走っている最中、突然足が攣った。
多分、運動不足が原因。
隣で走っていた紬はすかさず足を止めて、足元を押さえてる私に寄り添った。
だが、遠くで私の微かな叫び声にいち早く気付いた蓮は、支えていた花音の腕を解いて私の方へ駆け寄ってきた。
「大丈夫? 足がどうしたの。救急車を呼ぶ?」
「あはは……。そこまで重症じゃないから大丈夫だよ」
確かに本当に大した事は無い。
吊った痛みは一時的なものだから、時間を置けば大丈夫なんだけど……。
蓮は突然私の身体をすくい上げてお姫様抱っこをした。
「ひやっ……」
「誰かーっ、救急車呼んでー! 梓が骨折したかもしれないから」
「ねぇ、蓮ってばぁ! そこまで重症じゃないって」
私はこの様子が先生に見られたらまずいと思って足をジタバタさせるけど、蓮は心配で焦り狂っている。
一方、蓮に怪我をした事さえ忘れ去られてしまった花音は、遠くから私達のやりとりを見て悔しそうに睨みつけていた。
突き刺さる視線は痛くも感じるが、花音に仕返しをするのなら心理作戦が最も効果覿面だと思った。
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