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第十一章
74.蓮vs高梨
しおりを挟むーー梓の偽恋人としてスタートしてから、2週間経ったある日の放課後。
俺は奏と一緒に帰ろうと思って廊下に一人で歩いていると……。
すれ違いざまに高梨に話があると呼び止められて、そのまま校舎裏に連れ出された。
「この間の件は礼を言う。悪かったな。柊のお陰で助かったよ」
「勘違いすんな。別に先生を助けた訳じゃない。俺は梓が退学にでもなったら困るだけ」
梓と交際している高梨。
そして、梓の偽恋人の俺。
ライバル関係にある俺達は険悪ムードに。
高梨は礼を伝えてきたが、話はそれだけではない。
「柊……。僕達の仲を知ってるのに、どうして彼女ばかりに執着するんだ」
「あいつに惚れてるからに決まってるだろ」
「お前はこれから高校を卒業して、進学をして、まだまだ多くの人と出会いがあるのに、元カノばかりに執着する必要はないと思う」
「人の人生勝手に決めつけんなよ。世界中何処を探してもあいつは一人しかいないよ。それに、先生は校長室であいつを守りきれなかっただろ?」
「最善策を練っている間にお前が校長室に入って来ただけだ。大人には気持ち一つだけで動けない複雑な事情がある」
「そんなの俺にはわかんないし、知りたくもない。先生がどんな切り札を出してきても、俺は負けない。1パーセントでも可能性が残されてる限り戦い続ける。卒業までには絶対梓を返してもらうからな」
男同士の一対一の真っ向勝負。
お互い1歩も譲らず睨み合いは続く。
普段は冷静沈着な高梨がカッと熱くなっている様子からすると、梓への気持ちは嘘偽りない。
だから、勝負に出るなら今しかないと思った。
「何を言ってるんだ。昔は柊の恋人だったかもしれないけど、今は違う」
「じゃあ、先生はあいつの悩みを知ってる? 今あいつの身に何が起こってるか」
「……それは、何の話だ」
高梨はそう言ってハッと目を見開いた。
もしやと思ってカマをかけてみたけど、やっぱり梓の現況に気付いていない。
「センセーは誰にも認めてもらえないような関係を続けているから、見えるものが見えなくなってるの。梓は素直だけど、いつも肝心な事を口にしないから、こっちが先に気付いてあげないと守ってあげれないよ」
「見えなくなってるもの? 肝心な事? わかるように説明しなさい」
「それがわかんないなら、この勝負は更に燃えるな。まぁ、あいつの問題は一番近くにいる俺しかわかんないと思うけどね」
蓮は勝気な態度でそう言い残すと、背中を向けて高梨に手を振って立ち去った。
高梨は梓の身に起きている事にまだ気付いていない。
梓の事だから、きっと心配させないように胸の中に留めているのだろう。
高梨の気持ちが梓の深部に行き届いていないのなら、梓を守れるのは高梨じゃなくて俺しかいない。
泣いてる時も笑っている時も、梓の隣で青春時代を共に過ごしたかけがえのない時間。
2年間交際を続けた俺にしかわからない、梓の心情。
コツコツと積み重ねてきた愛情だけが、俺の心を奮起していた。
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