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第九章
52.譲れないお化け屋敷
しおりを挟む午後の自由時間は、途中から合流したイケメントリオと私達二人の合わせて五人で行動する事になった。
「みんなでどこへ行く?」
「お化け屋敷」
「蓮……。お化け屋敷は譲れないんだね」
「俺は絶対お化け屋敷に行く」
蓮があまりにも一点張りだから、みんなは渋々お化け屋敷に向かった。
お化け屋敷を催している一年生の教室に到着すると、イケメントリオはあっと言う間に周りの女子達に取り囲まれた。
まるでアイドルのよう。
ここでもイケメントリオは大人気なんだね。
「時間が勿体無いから早くしてよ」
学園祭終了時刻まで残り少なくなってイラついている梓が、キャーキャーと騒ぎ立てられているイケメントリオに横から水をさすと、三人は女子達とお別れをしてお化け屋敷の中に入った。
イケメントリオを子分のように扱う私は、今日も女子達からの冷たい目線が背中に突き刺さっている。
扉を開けて真っ暗闇な教室の中に入った。
最初は五人で行動していたはずが、中に突き進んでいくと最初に奏の姿が見当たらなくなった。
梓は蓮のベージュのセーターをグイグイと引っ張る。
「蓮……ねぇ、蓮ってば」
「なんだよ、うるせーな。静かにお化け屋敷に集中しろ」
「さっきまで一緒に居たはずの奏がいなくなっちゃったよ」
「……え! 奏がいなくなった?」
「きっとお化けに連れ去られちゃったんだよ」
「アホか! 周りをよく見ろ」
「えっ?」
「大和と紬もいないだろ? 大和達もお化けに連れ去られちゃったの? みんなは俺らを二人きりにしようと思って気ィ利かせたんだろ?」
「蓮がお化け屋敷に行きたいって駄々をこねたから、うるさくて、しつこくて、ウザく思っていたみんなが愛想を尽かしたから逃げちゃったんじゃなくて?」
「お前……、そんな風に思ってたのかよ」
蓮に言われて辺りを見渡すと、一緒に居たはずの紬と大和も居なくなっていた。
「蓮と二人きりで居るとまたみんなに誤解されちゃう……」
梓が困惑した表情を見せると、不機嫌になった蓮はムスッと口を尖らせる。
「ここで俺がいなくなったら、お前は学園生活最後の学園祭をぼっちで周らなきゃいけなくなるけど、それでもいい? 俺は一人になっても花音が一緒に周ってくれるけどね」
「ううっ……」
意地悪な蓮の鋭い指摘に言葉を詰まらせた。
おっしゃる通り。
ぼっちで学園祭を周ってもつまらない。
先生と周る訳にもいかないし……。
だから渋々意見を飲んだ。
こうして私達は、友人の変な計らいによって三年連続で一緒に学園祭を見回る事になった。
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