Re.start ～学校一イケメンの元彼が死に物狂いで復縁を迫ってきます～

第一章

3.大人の男性

  高梨先生は、私が二年生の時の担任。
  今はもう三年生だから……、つまり去年。

  先生は年が9歳離れていて、落ち着きがあって理解ある大人の男性。
  背が高くて、キリリと整った端正な顔立ちに、清潔感あふれる短髪。
  軽いジョークを交えながら進行する授業は、生徒達にも好評だ。


  休み時間には女子生徒に囲まれるほどの人気者。
  お陰で校内で捕まえるのも一苦労。
  高梨先生の人気は女子生徒だけじゃない。
  男子生徒から見ても理解ある兄貴的存在だ。



「高梨先生！  ここが分からないんですけど……」



  授業後に廊下を歩く先生を引き止めて、数学のノートを開き指をさして先に書き綴っていた密会の予定を知らせる。
  コソコソするよりも堂々と振舞っていれば他の生徒にも関係がバレないはず。

  本当は、声を大にして『私の彼氏は高梨先生なの～～！』って自慢したいけど……。

  当然、そんな日が訪れる訳が無い。



  先生は確かに人気者なんだけど、私には不満がある。

  9歳年が離れているせいか未だに子供扱い。
  誕生日を過ぎたから、もう18歳。
  先生から見ると子供かもしれないけど、私だってもう立派な成人。

  まぁ、年齢がどうこうというより生徒だから仕方ないんだけどね。



  彼と個人的に関わり始めたのは半年前。
  蓮と別れたその日に私は教室で一人泣いていた。
  ちょうどその時、たまたま付近を通りがかった高梨先生は教室でポツンと一人泣いている私に気付いて傍へやって来た。



「菊池さん。泣いてるみたいだけど、どうしたの？  学校で何かあった？」



  机にうずくまっていると、心配そうに見つめてスーツのポケットからハンカチを取り出して目の前に差し出した。



「ズビッ……何でもないです……」



  勢いよく鼻をすすってそう言ってハンカチを受け取ると、溢れ出す涙を拭った。

  ……でも、その日はそこまで。
  先生は何も話そうとしない様子に気遣い、そっと教室を出て行った。


  そんな状況が度重なり、少しずつ心を開くように。
  いつしか親密になって恋愛感情へと発展。

  家に行く度に身体ばかり求めてくるガキの蓮とは違う。
  主張やワガママを聞いてくれるし、リードもしてくれる。
  会話やデートを楽しむのが先生式の恋愛。
  誰かさんとは天地の差。
  先生はいつだって私の気持ちを優先してくれるから。



  今までは蓮しか知らなかったから、大人の包容力をもつ先生がとても新鮮に感じている。