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第十二章
112.恋する女の子
しおりを挟むーーそれから2分後。
ピンポーン……
次は穏やかな音のインターフォンが鳴ると、日向は玄関に行って扉を開いた。
しかし、そこにはカエルの被り物を装着したままの結菜の姿が。
思わず目が点になる。
「あの……さ、その状態でエレベーター上ってきたの? もう被り物を外していいんじゃない?」
「っ……はぁ。……っはぁ……どうしても被り物を外せなくて……」
「息、切れてるけど……?」
「まぁね。マスコミに追われるって結構大変なのね。逃げても逃げてもついてくるの。少し甘く見てた」
「と……とりあえず家に上がって。家政婦には上がってもらったし、ミカはもう寝てるから静かにね」
「うん」
およそ2ヶ月ぶりの彼の家。
カエルの口の部分からしか様子が伺えないけど、この家が凄く懐かしくて涙が出てくる。
2人はリビングのソファに腰を落ち着かせると、日向はカエルの顔に聞いた。
「あのさ、会いに来てくれたのは物凄く嬉しいんだけど、どうしてカエルの被り物を?」
「あっ、コレ? 以前携帯ショップでバイトしてた時に使ってたものを借りて来たの。いまは使ってないって言ってたし、変装するにはちょうどいいかなぁ~と思って」
「(逆に変装しない方がバレなかったのでは?)そうじゃなくて。マスコミに顔バレしたくなくて被ったのはわかったけど、どうして家の中でも被ったままなの?」
「そっ、それは……。私、自分に自信がないから……」
「えっ、どーゆー事?」
結菜はカエルの顔をシュンと俯かせると、身体と声を震わせながら言った。
「私、あんたに会うまで自分に自信がなかった。人の顔色を伺って、気持ちを抑え込んで、楽しい事を犠牲にしてる事に気づかないくらい自分を大切にしてなかった。
でも、あんたに出会ってから毎日が楽しくて、今まで地味に過ごしてきた時間が勿体無いと思うくらい幸せになってた。あんたに恋しちゃいけないとわかってても、傍にいるだけでドキドキしてた。小さな冗談でも間に受けたくなるくらい心の矢印があんたに向いていたから」
結菜が膝に置いてる拳をプルプルさせていると、日向はそれに気づく。
「ねぇ、拳震えてるけど……。いまどんな顔して言ってんの?」
「……」
「しばらく会ってないから顔が見たいんだけど、被り物を外していい?」
「ダメ……。自信ない。恥ずかしくて顔なんか見せれないよ……」
「無理。俺様の言う事は絶対に……」
日向は返事を待たずに被り物を外すと、結菜は顔を真っ赤にさせ目をギュッと閉じて唇を噛み締めたまま震えていた。
それは以前と同様、恋する女の子の顔を覗かせている。
日向はその顔を見た瞬間、ハートを射抜かれたかのように声を詰まらせた。
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