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第十一章

101.一番の親友

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  結菜が傘をさしたまま左手で涙を拭っていると、日向はその左手をすくいとって握りしめた。
  結菜は突然の事態に思わずびっくりした目を向ける。



「ありがとう。連絡するかどうか悩んでたけど、やっぱりお前に連絡して良かったわ」

「日向……」


「そうだよな。ミカが一番に心を開いてたのはお前だった。それに、今の俺に必要なのもお前。ミカと友達なら会話の中でヒントになりそうなものを得てるんじゃないかな。少し記憶を遡れる?」

「さっきからず~っと考えてるんだけど、なかなか……あっ……ああぁぁっ!!」



  彼に指摘された瞬間、一つの記憶が脳裏を過ぎった。
  そこにいるという確信はないけど、私が彼女の立場だったら行く可能性がある。



「えっ!  何か思い出した?」

「もしかしたら一つだけ当てがあるかもしれない。私が会いたい人に会いに行くとしたら……」



  ーー現在、23時02分。
  空は傘が不要なくらいの小さな雨粒に変身した。
  しきりに彼の心を直撃していた雷は、東の空へ流れ行く雨雲と同時に姿を消していった。

  私たちは手を繋いだままとある場所へ向かった。

  そこは、6月までアルバイトをしていたショッピングセンター。
  ここは彼の家の最寄り駅で、迷子になっていたミカちゃんと初対面した場所だ。
 
  家政婦初日に自分がカエルの着ぐるみを着ていた人だと明かしたけど、彼女がもしその会話を覚えていたら、私に会う為にここへ来るかもしれないと思った。


  ところが、ショッピングセンター内の照明は落とされていて、既に営業終了している。
  建物内は非常灯に照らされてるだけで人影はない。
  それでも可能性はゼロではないと思って駐車場付近からくまなく探した。

  すると……。
 ショッピングセンターの正面エントランスの自動ドア前に1人の子どもが立っていた。
  それは、見覚えのあるピンクの花柄のワンピース姿。

  ーーそう。
  彼女は紛れもなくミカちゃん。
  屋根がある場所で小さな傘を手にぶら下げたまま自動ドアのガラスに手を当てて、非常灯が灯されている店内を覗き込んでいる。



「ミカ!」



  彼が気づいてから大きな声で呼んで駐車場側から駆け寄ると、ミカちゃんは名前を呼ばれたと同時に振り向いて、持っていた傘を手放してから走り向かってきた。
  彼はしゃがんで両手いっぱいに手を広げて待つが、彼女は彼の横を通過。
  三歩奥に佇んでいる私に両手を広げて飛ぶように抱きついてきた。

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