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第八章
69.父兄参観
しおりを挟むーー父兄参観当日の土曜日。
晴天の中、私服姿で黒髪マスク姿に変装している日向は、幼稚園の制服を着ているミカと一緒にマンションを出ると、ミカはエントランス付近に立ってる結菜に気付いて日向の手を離してから駆け寄った。
「結菜お姉ちゃ~ん。おはよー」
「ミカちゃん、おはよう」
「あれ、今日は仕事の日じゃないけど……」
「うん……。実は私もミカちゃんの父兄参観に参加しようと思って」
「えっ」
「冷蔵庫に幼稚園のお知らせの紙が貼ってあったから、私も一緒に行こうかなと思って。……もしかして、でしゃばり過ぎちゃったかな」
「ううん、ありがとう。助かるよ」
「結菜お姉ちゃんも幼稚園に来てくれるの?」
「うん! ミカちゃんがどれくらい楽しく幼稚園に通っているか見に行きたいな~と思って」
ミカは来てくれた事が嬉しくて両手をいっぱい広げて結菜に抱きつくと、日向は申し訳なさそうに言った。
「……実は、お願いがあって」
「うん、何?」
「急に父兄参観に行く事が決まったから、事務所には無理を言って出番を後ろ倒しにしてもらってて……」
「撮影は何時からなの?」
「10時の予定だったんだけど、事務所に幼稚園の行事があると伝えたら先方にかけ合ってくれて11時半までOKが下りたんだ。移動時間もあるから11時頃に林さんと交代するつもりだったけど……」
「ううん、交代しなくていいよ。私が最後まで面倒見るから。今日は何時くらいに帰れそう?」
「他に雑誌の撮影とインタビューが入ってるから大体いつも通りの時間」
「わかった。幼稚園が終わったらそのまま家に向かうね」
「ありがとう……。お前いてくれて本当に助かる」
彼に笑顔でそう言うと、私の頭にポンっと手が触れた。
なんか、頼られたような気がして照れ臭い。
彼は心の中に入られる事を嫌がっていたから、来るなと突き返される可能性もあった。
でも、割と素直に受け入れてくれたから認めてもらえたような気がして嬉しかった。
私は彼から家のカードキーを受け取って、3人で一緒に反対車線で待機しているタクシーに乗車して幼稚園に向かった。
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