上 下
66 / 115
第七章

65.独り占めしたい

しおりを挟む


「はあああぁっ~♡  雷人ったらカッコイイ~。『あいつより俺を選んで。絶対大切にするから』だってぇ~~!  一度でいいからあんな素敵な人にそう言われてみたいなぁ」

「はぁ~。カッコイイのは雷人じゃなくて、俺だろ。ふっ……、相変わらず目ぇ悪いな。普段はBランク以下の男ばかり見てるから見る目がなくなってるんだろうな」


「うっわあ~っ。見て見て!  フォークに苺を挿して来海に『あーんして』だってぇ!  私もあーんしちゃおうかな~。あーん」

「……っ!  お前の口にハバネロでもぶち込んでやろうか……(ドラマに夢中で俺の話が耳に入ってないし)」


「やだやだぁ~。甘~い瞳がたまんない!  キュン死、キュン死。キュンキュンし過ぎて人類滅亡しちゃう~っ」



  結菜はドラマに夢中で隣のダイニングから水を指してくる日向の声が耳に入らない。
  当然、プライドが高い日向は面白くなくなると、ダイニングイスからサッと立ち上がった。

  目を輝かせながら両指を組んでうっとりしている結菜に対して、ズカズカとソファ前へ進められる足。
  ピタリと止まった瞬間、結菜の両肩をソファーの背面に押しつけて、甘い眼差しと優しい声を降り注がせた。



「どうしたら俺を好きになってくれる?」

「えっ……??」


「お前を独り占めしたい。今から他の男に目が行かなくなるくらい俺色に染めていい?」



  結菜は直前までドラマに見入っていたせいで一瞬何が起きたかわからなかったが、ソファーへ突き抜けそうなほど真っ直ぐに見つめている瞳を見た瞬間、顔面から火が吹き出しそうになった。

  バックン……  バックン……

  急スタートを切った心臓は胸から飛び出しそうなほど激しく暴れている。

  ちょっと待って!
  頭の中が真っ白で何も考えられなくなった。
  いきなり独り占めしたいとか言われても、心の準備が……。
  それに、日向の事を好きとか一度も考えた事ないのに。
  


「えっ……えええっ!!  いっ、いきなりそんな事を言われても。こっ、こここ……心の準備が……」



  お互いの顔の距離はおよそ20センチ。
  あいつとこんなに顔を接近させたのは今日が初めて。

  彼の言葉以外入らなくなっている耳。
  麗しい眼差しで見つめられ続けている目。
  生温かい息が届けられている唇。
  そして、触れてもないのに間接的に感じる気配。

  変な緊張と妙な雰囲気に巻き込まれてしまったせいか、理性が追いついていけない。
  しかし、結菜の身体が石像のように固まったまま赤面状態で目を左右させていると……。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。

スタジオ.T
青春
 幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。  そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。    ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。

勝負に勝ったので委員長におっぱいを見せてもらった

矢木羽研
青春
優等生の委員長と「勝ったほうが言うことを聞く」という賭けをしたので、「おっぱい見せて」と頼んでみたら……青春寸止めストーリー。

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

通り道のお仕置き

おしり丸
青春
お尻真っ赤

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

坊主女子:スポーツ女子短編集[短編集]

S.H.L
青春
野球部以外の部活の女の子が坊主にする話をまとめました

処理中です...