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第七章

63.堤下の考え

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  ーー日向が学校で授業を受けている午前中。
  堤下は預かっているスペアカードキーを使って日向の家に上がり、先ほど近所のスーパーで購入したばかりの食材をレジ袋から出して冷蔵庫に詰め込んだ。
  作業台に置いていた食材を片付け終えると、目線の先のリビングテーブルに置かれた一枚の絵に目が止まった。
  そのままテーブルに足を運んでクレヨンで塗りたくられている絵を手に取った。
  ……すると。



「こっ、これは……」



  絵を見た途端、驚くあまりに言葉が漏れた。

  テーブルの上には箱から出しっぱなしにした状態の黒色、肌色、緑色、赤色のクレヨン。
  テーブルの状態や絵の完成度から推測すると、昨晩描かれたものだと思われる。

  堤下が何故驚いたかというと、絵の中の女の子2人が笑顔で仲良く手を繋いでいるから。
  しかも、そのうちの1人の大きな女の子は、結菜がこの家で着用しているどデカいカエルの絵が入ったエプロン姿だったから。


  人にほとんど懐かないミカちゃんが早川さんに懐いている。
  最近は2人の距離感を薄々感じていたけど、この絵は彼女の心の中と同じ。
  つまり、彼女たちの接近は少なからず日向の心に影響を与えている。
  そう思ったら、もう時間が残されてないと悟った。


  堤下はスーツの内ポケットからスマホを出して、事務所に電話をかける。

  トゥルルルルル……  トゥルルルルル……  カチャッ



「お待たせいたしました。風波エンターテイメントでございます」

「お疲れ様です。堤下です。所用が済みましたのでこれから会社に戻ります。冴木部長に報告をお願いします」


「お疲れ様です。承知しました」

「それと、先日依頼していた家政婦の求人の件ですが、早急にお願いします」


「かしこまりました。進めておきます」



  堤下は電話を切ると、絵を両手に持って再び眺めた。

  少し甘く見ていた。
  日向の同級生を家政婦として雇うのは反対だったけど、あの時は代理が見つからなかったせいもあってやむを得ずに採用した。
  しかも、彼女なら他の家政婦と同じく仕事と割り切って日向に接してくれると思っていたのに。
  何かがあってからでは遅いから、両者にしっかりと釘を刺しておいたのに……。

  もしかしたら、これは想像以上に急がなければならない案件かもしれない。

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