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第三章
25.デートのお誘い
しおりを挟む昼休みにみちると一緒に購買へ向かった。
普段お弁当の私は、初めての付き添いに。
みちるに購買に行った事がないと伝えたら、一緒に行こうと言って誘ってくれた。
こんな小さな事ですら憧れるくらい、私は幸せに飢えていたらしい。
うちの高校は、昇降口の所にパン屋さんが販売に来ている。
長テーブルに何種類かのパンが並んでいて、選んだ後にレジまで商品を持って行って会計するというシステム。
各学年の生徒がごった返す中でのパン選びも結構苦戦している。
みちるはパンを3つチョイスして胸に抱えると、結菜に聞いた。
「結菜は何を買う?」
「私はどんなパンが販売してるか見に来ただけだからレジに行ってていいよ」
「了解! じゃあ、行ってくるね」
みちるはレジに行ったので、私は混雑を避ける為に扉の外で待っていると、向こうの校舎からやってきた陽翔くんに声をかけられた。
「早川、パン買いに来たの?」
「ううん、みちるの付き添いだよ。私はお弁当だから」
「そっか。いつもこの場所で見ないから珍しいなと思って」
「実は今日初めて来たんだ。購買のパンを買った事がないから見学にと思って」
二階堂くんとは、友達以上恋人未満という関係で一旦手を打ったけど、まだ実感が湧かないから喋るだけでも恥ずかしい。
すると、彼は頭をかいて赤面しながら言った。
「あの……さ」
「うん?」
「もしよかったら、土曜日俺と一緒に出かけない?」
「へっ?!」
「これでもデートのお誘いしてるんだけど……。ダメかな……」
ダメかな……だなんて、そんな。
私こそ三つ指ついてお願いしたいくらいなのに、そんな下手に出られちゃうと余計どうしたらいいかわからない。
「ダメ……じゃない……です」
どうしよう。
憧れの二階堂くんにデートに誘われるなんて嬉し過ぎて心に余裕ない。
こんな地味な私でいいのかな……。
あっ、いまは新しい自分に生まれ変わったから地味じゃないか。
でも、嬉しいものは嬉しい。
「よかった。じゃあ、後でLINE送るね」
「う、うん……。待ってる」
私はそう言って購買に来ている人混みに紛れていく彼に手を振った。
変わるって凄い。
今日1日で昨日と人生が180度変わった。
新しい友達が出来たり、憧れの人にデートに誘ってもらえたり。
それなのに、私は変わる事を恐れていて殻の中に閉じこもっていた。
いま思えばバカみたい……。
結菜は嬉しさに我慢できずに笑みが溢れていると、レジから戻ってきたみちるはにやけ眼で肩を小突いた。
「何なに~? 二階堂といい雰囲気だったじゃん」
「何でもないよ。ほら、教室戻るよ!」
結菜とみちるが肩を並べて教室に戻っていく中、二階堂との一部始終を2メートル先で人混みに紛れながら見ていた杏は嫉妬をするあまりギロリと睨んでいた。
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